領主の坑道と岩盤
中断していたマクシミリアン家のクエストを再開することにした。
領主の屋敷へ行くと、最初の街にある屋敷より更に大きな屋敷になっていた。
門番に紋章入りのハンカチを見せて中へと通されると馬車が待っている。その馬車に揺られること5分、ようやく屋敷の玄関にたどり着く。
御者を務めていた人が玄関を開けると、初老の執事が待っていた。
「ようこそいらっしゃいました。領主様がお待ちです、こちらへお願いします」
通された場所は執務室だった。奥の机に座っているのが、領主であろう。
「よく参られた。楽にしてください」
執事に促されて、手前にあるソファへと腰掛ける。そこへ領主もやってきて、対面に座った。
四十半ばくらいの領主は、なかなかの美形で、リリーナやサイラスとどこか似た雰囲気を感じる。
「頼みたいということはだな……」
令嬢の方から聞いていたのとほぼ変わらない内容だった。鉱山で固い岩盤に当たってしまい、採掘作業が滞っているらしい。
「熟練の鉱夫達でもうまくいかないらしいのでな、一つ頼まれてくれるだろうか」
「はい、やってみます」
現場監督という筋骨隆々の男性に案内されて現場へと赴く。
ボックと比べるとかなり整然とした様子で、鉱夫達にそれぞれ班長がついて指示を出しながら作業が進んでいた。
「今は岩盤を避けて、他の場所を開発しているが、芳しくない。鉱脈を見ると、やはり岩盤の先が優良な採掘場所になっていそうなんだ」
鉱脈というのは、地層として堆積する際に、比重によってふるい分けられた特定の鉱物が集まった層だ。
それらが地震などで隆起して、地表付近に現れるのが採掘ポイントになる。
ただそうした鉱物のある層は、固い地層の上に堆積することも多く、岩盤の下に隠れている事がある。
現代ならダイヤモンドで加工した重機で掘り進めたりするが、ゲームの中は魔法があるものの文化水準は中世を再現されている。ツルハシでは突破できないのだろう。
現場は岩で出来た扉によって、進行が阻まれた状態だった。
3人が並んでも作業できるほどの広さの坑道を、平らな板のような岩盤が塞いでいる。
周辺を多少掘ってあるが、岩盤が続いているのを確認したところで止めている。
「まあ、錬金術師のクエストだから、火薬代わりのフレアストーン系で壊せばいいんだろうけど……」
ひとまずフレアストーンから抽出したフレアコアを、3つ重ねて加工したトライコアで試してみる。
岩盤の前に設置して、離れてから炎魔法で起爆。
ドガン!
「うわっぷっ」
筒状に掘られた坑道は、爆発で生じた風が、一気に吹き抜けてくる。思わぬ突風に尻もちを付きかけるが、セイラが抱きとめてくれた。
「ありがとう」
そのセイラはその辺に落ちていたツルハシを手に、岩盤へと向かっていった。
ぱっと見た感じ傷一つついていない岩盤に、力任せの一撃。前衛職として、STR(筋力)が高いセイラの一撃に、さしもの岩盤も……無傷だと!?
三度ほど叩いたところで、ツルハシの柄が折れてしまう。
「ダメみたい」
「やっぱりフレアコアで砕くクエストなんだろうな。もう一段高いコアを作ってみるよ」
携帯用の簡易錬金釜で、トライコア2つを使って合成。過去の経験から、コアが増えるほど不安定になるので、魔力調整で加える魔力を減らしつつ……フレアヘキサコアが完成。
「あとはこれを仕掛けるんだけど」
テレビが何かで発破を行う映像を見た時に、穴を開けてダイナマイトを入れてたなと思い出す。
しかし、ツルハシでも傷つかない岩盤に穴を開けれるか?
取り出したのは硫酸。
鉱物を溶かせるこの液体なら、固い岩盤でもある程度は溶かせるはず。岩盤全体を溶かそうとすると、100本以上用意しても足りないかもしれないが。
ヘキサコアが入る大きさの穴を溶かして作り、そこへコアを設置。
少し距離を取ったところで、風の上位精霊を召喚して風の壁を作ってもらいつつ、炎魔法で点火した。
ズゴーン!
腹に響く音がして、もうもうと土煙が舞い上がる。次第にそれが晴れてくると、岩盤が破砕されていた。
「よし、成功!」
「おお、ありがてぇ。すげーな、アンタ」
現場監督が興奮した様子で感謝してくれた。
「ケイ……そんなあっさりとクリアしちゃうのね」
「まあ、令嬢に話を聞いてたから、下調べはしてたしね」
とにかくクエストを達成したので、領主の屋敷に戻る事にした。




