俺の選んだ答えと結末
俺は何を求めているのか。
ゲーム世界を一緒に楽しめる仲間か。
それならシゲムネもいるし、ソニアさん達チェリーブロッサムの面々。マーカス達とも仲良くやれるだろう。
見ず知らずの俺にアドバイスしてくれたルカ。街中を歩いていると声を掛けてくれる男達。
ゲームを楽しむだけなら、いくらでも人はいる。
セイラの為を思うなら、友達として付き合っていくのがいいのか。ゲームを楽しむのに、それ以上は必要ない。
何を悩む必要があるのか。
彼女の負担を和らげて、今までのように他愛もない付き合いを続ければいい。
もしかしたら、あの子とも仲良くなれるのかも知れない。
セイラ一人を選ぶ必要はない。
俺は心を決めた。
翌日の大学、紹司は講義が違うので会うことはなく、石井さんとは重なる講義もあった。
俺は教室で一人、本を開いている石井さんの元へと近づいていった。
「石井さん、ちょっといいかな?」
「えっ、あっ、な、鍋島くん」
よほど本に没頭していたのか、声を掛けると驚いた様子でこちらを向いた。
「俺、あの子が現れて、かなり動揺して、色々とゴメン」
いざ話そうとすると、とりとめのない言い方になってしまう。喉は乾くし、頭は真っ白だし、膝は震える。
それでも石井さんは俺の言葉を待ってくれていた。
「お、俺、その、ええっと、好きです、付き合って……いや、違う。い、いや、違わないけど、そうじゃなくて……ええっと」
言いたいことが頭の中でぐちゃぐちゃになって、ドンドンと暴走していってしまう。
そんな俺の様子に、石井さんはクスリと笑って、席を立った。
「場所を変えましょ。ちょっとは落ち着くでしょ?」
俺は石井さんに手を引かれて、校舎内の休憩スペースへとやってきた。自販機で飲み物を買って、渡してくれる。
「ゴメン、何かホント、自分が情けない……」
石井さんは丸テーブルの正面に座り、何も言わずにこちらを見詰めていた。
「俺、あの子が現れて、セイラの事を好きなのは自分だけじゃないって気付かされて、セイラに自分がどう思われているか、確認するのが怖くなって……」
買ってもらったオレンジジュースを一口飲んで続ける。
「逃げてしまった。そんな俺にこんな事、言える資格はないと思うけど、ちゃんと言わないのもダメだと思って……俺、石井さんとセイラといると楽しくて、ずっと一緒にいたいんだ。俺と付き合ってく」
「よろしくお願いします」
食い気味に石井さんは答えていた。
「へっ?」
あっさりとした返答に、俺の方が呆気に取られてしまう。
「何でそんな間抜けな顔をするんです?」
「いや、だって、その……」
「私が断ると思ってたんですか?」
「まだ出会って一ヶ月くらいだし、あの子の事もあったし」
「ノブちゃんとはもう何でもないですよ。あの日、ちゃんと断りました。なのにケイは逃げてそのままだし……」
「それは、その」
怒ったような素振りを見せるが、嬉しさのようなものはにじみ出ている。
「でもノブちゃんのおかげで、鍋島さんが決断してくれたんなら、感謝しなくちゃですね」
「決断って、それこそセイラがどっちを選ぶかの決断が……」
「ソニアから聞いたわよ。なんで私が貴方とノブちゃんで迷うと思うかなぁ。ちょっと心外です」
う、え……。
言葉も出ないとはこの事か。元々混乱してたのに、予想の斜め上の回答に、頭が全然回らない。
「ふふっ、でもこれでおあいこですね。私も変な空回りしてたし」
クスクスと笑う石井さん。
ええっと、俺は……。
「授業、始まってますね。潜り込みますか」
石井さんはここに来た時と同じように、俺の手を取って先導してくれた。
「あの子と何でもないなら、何で帰って来なかったの?」
ALFにログインして、セイラに聞いてみた。
「久し振りで話すこともあったし、ソニアからケイが暴走してるって聞いたしね」
聞いたなら助けてくれとは思うのだけど。
「私、結構頑張ってアピールしてたのに、ケイは何か冷めた感じだったし……本当のところはどうなのか知りたかったのよ」
「それは……ごめんなさい」
結局は俺が臆病だったということなんだろう。
「改めてよろしくお願いします」
「私もケイが大好きです。これからもよろしくね」
突然にぎゅっと抱きしめられてワタワタしかけるが、ぐっと思いとどまって、こちらからも抱き返した。
「じゃ、クエストやっちゃおうか」
セイラはぱっと離れると、慌てたように家を出ていった。あれは照れてるのかな。俺はまだドキドキしつつも彼女を追った。




