表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/87

メイフィの成長

「暴力表現を野放しにしている事は政府の怠慢です。凶悪犯罪を助長している!」

 若手……といって、四十歳くらいだが……の議員が、テレビで声高にしゃべっていた。

 気にしてみると、意外とこの手の論争は多いみたいだ。

 特に犯罪者の家から、暴力的なゲームやアニメが見つかると報道される。でも見つからなかった場合は何も言わない。

 実際に犯罪者の中で暴力的なゲームに傾倒する者の割合が、一割未満だったとしても、その部分が報道されれば、暴力的なゲームをやる=犯罪予備軍というイメージが付くのだ。

 その手のゲームは何万、何十万と売れていて、仮にその中から犯罪者が出たとして、それが一般的な比率より多いのか、少ないのかは論議されない。

 ただ犯人の特徴として、その手のゲームを持っていたと報道される。

 印象操作という洗脳(マインドコントロール)はどこにでも潜んでいた。



 ALFに入ると事件のゴタゴタで後回しになっていた、カナエちゃんへの子犬作成を行う事にした。

 といって犬の素材は見つからなかったので、狼の毛皮、犬歯、爪をベースに、生肉と小動物の核。おまけで氷結石というのを混ぜてみた。

 北極圏に近いエリアで生息するシベリアンハスキーのイメージだがどうだろうか。難易度的には問題ないはずなので、魔力調整を使って限界まで魔力を注ぐ。

 メイフィの時を思わせる派手なエフェクトが集まり、合成されたのは白い犬? 狼?

「シベリアンなツートンにはならなかったかぁ」

 子犬としては、なかなかに可愛いと思う。一応パーティに入れてステータスを確認。

「子フェンリル……だと?」

 なかなか仰々しい子犬になっていた。確かフェンリルは北欧神話に出てくる狼で、神様も飲み込むような魔物だった気が……子供なら大丈夫か。

 カナエちゃんは週末しかログインできないので、シゲムネに預けておくことにした。

 

「そういえば乗り物もいるんだっけ……」

 アクイナス屋敷に行く時に、シゲムネのドレイクに同乗して酔ったのを思い出した。

『マスター、乗るです?』

 足元にやってきたメイフィが小首を傾げて見上げてきた。ラブリー。

「さすがにメイフィには乗れないでしょ?」

『おっきくなるです』

 そう言ったかと思うと、見る間に姿が大きくなり、俺の腰ほどの大きさの狐になっていた。

「お、おおお」

『乗る、です』

 メイフィに促されるまま、その背に跨ってみる。掴みどころがないので、不安定な感じだが落ちそうにもならない。メイフィがバランスをとってくれているみたいだ。

「お、おおっおおおっ」

 俺が背中に乗って、落ちないのを確認したメイフィが、庭を歩いてくれる。

 シゲムネのドレイクに比べると、上下の揺れが少なく乗りやすい。

 その動きに慣れてくると、メイフィはスピードを上げていく。上体を起こしていられなくなって、メイフィの首にしがみつくような格好になる。

「は、はやいっ」

 自転車に比べて視線が低く、よりスピード感のある疾駆は、恐怖心を呼び起こす。

 家を飛び出し、スラムの中を駆け回ってアピールしてくるが、腐った木箱やら寝転がる人やらの合間を駆け抜けられて、ドキドキさせられた。


 スラムを一周して家まで戻ってくると、体が硬直したままメイフィから転げ落ちた。

『だ、ダメだった、です?』

「いや、スピードは申し分ないし、進路もちゃんと決めてくれるし、慣れたら大丈夫な気もする……でも、鞍は欲しいかな」

『マスター、運ぶ、です』

 子狐モードに戻ったメイフィは、硬直した俺の腹の上に乗ると丸くなる。

「うん、新たな乗り物作るより、メイフィと一緒がいいな」

 頭をなでてやると、指に額をこすりつけてきた。ラブリー。



 大人サイズのメイフィを連れて、鞍を作ってもらう為にショップ街を訪れていた。

 例の事件でハラスメント申請を行った相手には、顔を覚えられている可能性があるので、黒髪のストレートロングから、銀髪のボブカットに変えている。

「お嬢さん、かわうぃ〜ね〜。一人? どこ行くのぉ?」

 最近はセイラやシゲムネと行動していて、一人になることが少なかったから忘れてた。

 女の子キャラは基本的に放っては置かれないのだ。

「そ、その、この子に合う鞍がないかなって」

 少し戸惑ったようにしつつも、しっかりと要件を伝える。やや上目遣いに見ることも大事だ。

 これで大抵の男プレイヤーは、親身に協力してくれる。

「おっけー、任せてよ。いい店知ってっから」

 ノリの軽いチャラ男だが、その能力は俺よりも上だろう。ただ街中で強引な事はできないし、ハラスメント判定がでるような行動を取れば、一発退場。現実世界よりも、ゲーム内の方が女の子に優しい。

 実際にこの男もすぐ側までは来るが、触れない距離を保って案内してくれた。

 セイラやソニアさんから色々と指導された賜物である。

「この店、革製品の店、サイズ調整もお手の物、俺がいれば割引おーけー、店長ほーけー」

 妙なラップ調で紹介してくれた。

「ありがとうございます」

 軽く会釈して店内に入ると、至るところに毛皮が吊るされていて、中々ハードな店だ。

 コート類やジャケットが並んでいるが、ビョウが打たれたりしていて、ハードロックな雰囲気だ。

「何のようだ?」

 グラサンにドレッドヘアーというブラザー系の店員が話しかけてきた。

「あ、あの、鞍が欲しいんですけど……」

 メイフィの背中を撫でると、店員も分かってくれたのか、店の奥を顎で示した。

 これ以上、中へと入るのは怖いんだが。

『マスターは、私が守る、です』

「ありがと」

 メイフィの額をコリコリと掻いてやりながら、店の奥に進むと確かに鞍が並んでいた。

「う、うう〜ん」

 何だろう、このコレジャナイ感。三角錐のトゲがたくさん飛び出た鞍や馬具、更には革製のムチなどが並んでいるが、明らかに趣味が悪い。どこのSMクラブだ……入ったことはないけど。

「このムチ最高、調教最強」

 チャラ男はピシパシと自らの手のひらをムチで叩いて音を立てる。

「あ、あの、そういうのは要らないんです。単に座って落ちなければ……」

「ダイジョブ、ダイジョブ。ここに取っ手、ここに枷。鍵をかければ、落ちっこない」

 鞍に手枷、足枷が付いていて、鞍に四つん這いになるように固定できるようだ……って、明らかに騎乗用の鞍じゃないだろ、それ。

「もういいです。私の趣味じゃないんで」

「え、ちょ、ちょっと、まってよ。調教ステータスアップの優れもんなんだぜ!」

「そういうのいらないんでっ」

 俺はメイフィと店を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ