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VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
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精霊の力

 俺は鍋島直紀、大学二年の19歳。明確な目的もなく入った大学、校舎で授業を受け、仲の良い友達とたわいない会話をしてから、家へと帰る。特にサークルに所属する事もなく、交友範囲も広くはない。

 どちらかというとネット上でのやりとりが多いが、その密度も低かった。

 その分、ALFという新たな遊びには多くの時間を割ける。授業中も簡単に行える化学変化がないか、それで錬金術を育てられないか、検索を続けていた。


 錬金術の初期レシピだと、蒸留水の作成とか、金属を錆びさせる酸化剤の作成とかがある。ただ自動作成では成功率は低く、実際に作成するには器具が必要になってくる。

 貝殻と蟻酸による一酸化炭素の生成は、素材の手に入りやすさを考えればラッキーだった。

 一酸化炭素を使えば、酸化したものの還元も行えるはずだ。取り扱いを間違うと、死ぬ恐れはあるがデスペナルティは一定時間のステータス低下くらいなので、今は気にならない。

「しばらくは一酸化炭素を作って、それを利用する方向かな」


 ALFにログインした俺は、まず錬金術師の元へ。錬金釜を使おうとすると、一回10Gと言われた。そうだ、所持金が無かった。ひとまずガラス瓶に三つほど一酸化炭素を作った。これで残りは70G。

 金策の為に何かクエストをこなすべきだろう。

 確か冒険者ギルドで、繰り返し行える討伐クエストなんかが受けられたはずだ。

 スラムを出て街をうろつくと、誰かが話しかけてくれる。道案内には困らない。

 冒険者ギルドには、依頼ボードがあって、その時の討伐依頼が張られている。初心者用の依頼をいくつか受けて、森へと向かう。案内してくれた男が協力を申し出たがそれは断る。あまりしつこく無かったので助かった。


 森に着くと討伐対象を探す。まずはブルーブルという青い毛をしたイノシシだ。街からほど近いところにちらほら見かける。

 一酸化炭素の瓶を取り出し、精霊を呼び出す。あの恥ずかしい呪文は、ショートカットを使うことで省く。アイコンを選択すると空中に模様が浮かび、それを指でなぞると魔法が発動する。それなりに複雑なので、戦闘中は慣れないと失敗しそうだ。

 今回はゆっくりと発動させて召喚。

「ステイ」

 近づかれると死にかねない精霊に、待機命令を出し距離を確認。

「ゴー」

 ブルーブルへと、攻撃命令を出す。精霊はブレを見せながら、フワフワと移動し、一定距離まで近づくと風の魔法で攻撃を開始。

「へ?」

 プレイヤーより攻撃力が劣るはずの精霊の一撃で、ブルーブルはコテンと倒れて撃破された。一仕事終えて帰ってこようとする精霊。

「しゅ、しゅてい!」

 慌てて止めようとして少し噛んでしまったが、命令は聞いてもらえた。

 しかし、一撃とは。クリティカルヒットとかか?

 近くのブルーブルへともう一度攻撃命令を出す。するとやはり一撃……昨日のアイアントでのレベリングで上がりすぎたのか。いや、よく考えたら呼び出した同じレベルのプレイヤーすら近づいただけで殺したのだ。攻撃魔法として放った一撃は、それ以上なのかもしれない。

 辺りのモンスターへと攻撃命令を出していくと、次々と殺してしまう。何コレ、凄い。相手が街周辺の初期モンスターというのもあるが、明らかにオーバースペックを発揮している。これなら、ソロでもかなりやれそうだ……。

「かっ……はっ」


 視界が暗転し、街で蘇生した。精霊が攻撃を終えて戻って来たのに気づいてなかった……一瞬の油断で、自分も死ぬのはかなりリスキーだな。

 パーティーはもちろん、他のプレイヤーも殺しかねない。そうなるとPKプレイヤーキル判定を受けて、色々と厄介なペナルティーが付くはずだ。無闇には使えないか……。

 デスペナルティの間にブルーブルの討伐報告を行い、多少の報酬をもらった。



 俺は錬金術師の元へと戻り、新たな実験に取りかかる。ガラス瓶を用意して口を開けた状態で、テーブルの上に置く。そこへ重力操作魔法を掛けてみた。

 紫を基調にした渦を描くエフェクトが瓶に発生。ある程度時間がたったところで蓋をする。

 重力操作魔法が切れたところで、精霊召喚を行うと現れたのはエメラルドが濃くなった精霊だった。しかも体型がぽっちゃりにもなっていた。

 重力を増やして圧力を高めた精霊の召喚、見た目からしてヘビー級。瓶の中から這いだした精霊がテーブルへと立つ。

「あれ? もしかして飛べない?」

 背中に半透明の羽根はあるが、パタパタしても浮かぶ様子はない。重力操作が何Gなのか分からないが、普通の空気よりは重くなっているのだろう。

 ステータスを見てみると、HPはかなり増えている。

「後は攻撃力が気になるところだな」


 俺は再び森へ行き、先ほど途中だった討伐クエストの続きを行う。飛べない精霊だが、移動速度は変わらずについてきていた。辺りに人がいないのを確認しつつ、フォレストウルフという狼型のモンスターに攻撃させる。

 風の精霊は風圧を利用した打撃と、真空によるカマイタチが合わさった攻撃魔法を使う。フォレストウルフは、その弾に当たると毛を撒きながらノックバックさせられ、近づいてくる事無く四度目の攻撃で撃破された。

「昨日のアンアントではノックバックしなかったけど、威力が上がってるのか、敵次第なのかわからないな……」

 検証になってない事に気づく。でもクエスト対象なので、一定数を撃破した。フォレストウルフは近接攻撃しかないので、一方的に撃破できて、被害はなかった。

 後はアンアントの所に行って、試してみると昨日は見られなかったノックバックを確認。やはり精霊の魔法の威力が上がっているようだった。

 蟻酸を補充して、適当なところで切り上げた。

 風の召喚魔法は、精霊で撃破したモンスターから経験値が得られるらしく、かなりスキルが成長した。


 重精霊のノックバックによる撃破で、他の討伐クエストモンスターも撃破していって、クエストを達成。多少は錬金術の回数を確保できた。



 次は一酸化炭素を使った還元を試したいところだが、何を還元するか。一般的なのは錆落としだろう。

 敵のドロップ品に、錆びた武器があるらしいので、それを集めるのがいいか。

「ゴブリンか」

 モンスターの代名詞とも言える種族。といって、強さが色々とあるので気をつける必要はある。

 街から最も近いダンジョンで出てくるようだ。今から倒しに行くのは面倒だな。

 今日は作れるだけの一酸化炭素を作って終了とした。何気にあそこのガラス瓶は無限に提供してもらえるんだな。

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