表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
マーカスの冒険
46/87

再挑戦、煉獄祭壇

 煉獄祭壇の隠された要素を探る。それ自体を進める事は大事だが、一応社会人。新作のデザインに取り掛かっている。

 戦隊系魔法少女モノのモデル化だ。色ごとに属性の特徴があり、赤だと燃えるようなフリル、緑は風をイメージした薄めの布を巻きつけるトーガ風、青は水滴をイメージした膨れたスカートといった感じだ。

 敵側も幹部は女の子で、イメージカラーは黒。千年を生きるロリっ娘で、魔力を大量にゲットすると大人のナイスバディになる。着ている服は、黒のレザースーツでツルペタな体にフィットして、背徳的な艶めかしさを醸し出していた。

「ルカのイメージとは違うなぁ。やっぱりケイちゃんが似合いそうだ。作ったらシゲムネ氏に交渉を頼んでみよう」

 資料として用意されているアニメ映像から、女幹部の話をチョイス。流し見しながら作業を進めていると、悪魔召喚を行う話のようだった。

 街の人間を洗脳し、怪しげなフォークダンスを踊らせていると、キャンプファイヤーの中からぬるっとした全身タイツにコウモリの翼を生やした悪魔が呼び出されていた。


「ん?」

 人間が呼び出す。

 煉獄祭壇では他のダンジョンに無い要素として、死者の行列がある。

 ディフェンス型ダンジョンとしては、城門を護ったり、宝物室に先にたどり着いてその部屋で防衛するなどがあるが、死者とはいえ護る人がいるのは煉獄祭壇だけだ。

「あの死者を使って何かするのか?」

 何かきっかけが掴めたような、そうでもないような。

 仕事の合間にルカにメッセージを送っておいた。



 トーマスはフリーターで、コンビニ店員をやってるらしい。残業とかは無く、決まった時間にログインしてくる。

 ルカは学生らしいので、自由な時間は調節してくれた。僕はALFにいることが、半分仕事なので都合はつけやすい。ただマドカちゃんは、色々と用事もあるらしく毎日ログインという感じじゃないらしい。

「あと一人、どうしようか?」

「ランダムだと探索は難しいかもしれないしな」

 基本IDをランダムパーティで回す人は、経験値目当てのプレイヤーだ。早く攻略を終わらせたい人が多い。

 また、探索に協力してもらうと外部に秘密が漏れる事にもつながる。もし誰かに先を越され、シリカたんを失うのは怖い。

「誰かフレンドがいればいいけど……」

 僕のフレンドはほとんどが顧客で、ライトなレイヤーが多い。煉獄祭壇に来れそうな人は、長くオフラインになってる友達や、逆に忙しく攻略を繰り返すヘビープレイヤーになる。

「じゃあ、俺の知り合いにあたってみるよ」

「あまりクエの秘密はばらさないでくれよ」

「分かってるって……あ、ソニアさん? ちょっとIDのメンツが足りなくて……」

 トーマスの知り合いには女性プレイヤーが多い。同じオタク系なのに、何でこうなったのか……?


「何か面白い事してるって? ヨロシクね」

 現れた女性は二十歳前後の格闘家で、気さくな印象だ。白のシャツに皮のジャケット、ホットパンツに黒タイツと軽快そうな装い。金髪のショートヘアは、かなり短めでボーイッシュ。

「よ、ヨロシクだぉ」

 右手を差し出すと、指先だけをつまむ感じの握手をされた。こちらとの距離をしっかり測るタイプのようだ。オタク系の言動をしておくと、初対面の反応である程度の性格判断ができる。

 あからさまな嫌悪感を見せる人は付き合えないし、逆に砕け過ぎる場合も他人を気にしない傾向がある。

 その点でソニアという人は、相手を見てから判断できるようだ。リアルでもコミニケーションが高い人だろう。


「で、昼間にメッセージをくれた件だが、他者への精神錯乱はできるが、洗脳して操るのは無理だな」

 ルカの返答に思案する。アニメを見て、その再現を狙いたいわけだが、人を操って儀式を行わせるのは無理らしい。

「闇魔法を受けて、何か変化するか……試してみるしかないんだぉ」

「私が思いついたのは、悪魔にプレイヤーを攫わせるって方法。人を攫うところに割って入って地獄に行けるかどうか……」

 それはそれで面白そうだが、召喚になるのか。アクイナスはちゃんと屋敷に戻ってホムンクルスを作った訳だし、地獄に落ちたわけじゃない……と、思いたい。

「とりあえず、試してみんべ」

 頭を使うのは苦手とするトーマスは、考える事に時間を割くくらいなら、試して失敗を糧にするタイプ。そのアグレッシブさが、女友達の数に繋がっているのかもしれない。


 ダンジョンが開始されると、ルカが死者に精神を錯乱させる『悪魔憑き』を掛けていく。

 その間に寄ってくる悪魔を撃退していくのだが、ソニアのアグレッシブさに目を見張る。

 敵の集団に飛び込んだかと思うと、周囲からの攻撃をいなしながらカウンターを当てていく。

「リアルでも格闘家なのか……?」

 ソニアがアタッカーなので、ヒールの準備をしていたが脅威の回避でノーダメージで敵を倒していく。

 僕も遅れをとってはと思って、悪魔と対したがやはりダメだった。かなりのダメージを受けて、トーマスのサポートに回る事になっていた。


 ルカの魔法が掛かると、死者はそれぞれに奇行を始めた。その場で泣き始めたり、奇声を発したり、走り回ったり……。

 その中の一部が奇妙な踊りを開始すると、徐々にその輪が広がっていく。

「何か昔の映像で見た気がするな」

 一度地面に伏した死者が、むくりと立ち上がると、ルカの前に集まりだす。そして整列したかと思うと、両腕を体の前に差し出し、右へ左へと歩いたり、肩を揺らしたり……一糸乱れぬ動きで繰り返されるのは、中々に壮観だ。

「うべっ」

 あまりに余所見をしていたら、悪魔から殴られてしまうが。

 ルカの元に集まった死者が20人になった辺りで動きが変わった。

 一列に並びルカを取り囲むように円を描きながら回り始める。大丈夫か?


 何周かルカを回った後、死者の列は地面に座り、土下座するように両手を伸ばして地面に叩く。

 ダンダンダダダン、ダンダンダダダン!

 まさに儀式だ。

 中央でその打音を受けるルカは、最初は戸惑っていたが、徐々に笑みを浮かべて踊り始める。

 神楽の一種か、体を回転させなが周囲の死者達から何かを巻き取るように動き、時に跳ね、集めた何かを掲げるように両手を上げたかと思うと、地面へと振り下ろす。

 ソコには赤い光で複雑な紋様が描かれた円陣が浮かび上がる。

 その中心から手が生えた。円陣の淵に手を掛けるようにして、体を引っ張り上げる。

 その姿はシリカたんとよく似た少女のものだった。青白い肌に銀色の髪、ボディペイントのように体にフィットした光沢のあるレザーのような衣装。

「我を呼び出せし者よ、何を望む?」

 幾重かに響く少女の声。

 悪魔の召喚に成功していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ