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VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
37/87

IDハラスメントへの対抗

 気づくとそこは、現実の自分の部屋。極度のストレスから、セーフティが働き強制的にログアウトしたようだ。

 慌てて再ログインしようとしたが思い止まる。早く復帰しすぎると、あのIDの中で復帰する。それはあの妙な状態で、男達の元へ戻ることになる。

 IDで通信が切断されると、30秒ほどでキャラも消えるはずた。ケイには悪いがその間は我慢してもらおう。

 そこからIDが解散となる最長の30分を待って、再ログイン。家の中のIDを申請した場所に復帰したのを確認して、ほっと一息ついた。


「アイツら!」

 改めて怒りが込み上げてくる。ボス戦の撃破直前に、何らかのアイテムを使い、自由を奪ってきていた。

 その上で非道を働くつもりだったのだろう。さいわい俺はセーフティが働いてログアウトできたが、男達の口ぶりだとそのまま残ってしまう事もあるようだ。

 それがIDでの記憶の欠落に繋がるとしたら……恐れていた危惧が、最悪の形で実現されたとも言える。

 もしあの後の行為が、女の子の記憶に残らないのであれば、被害の自覚もないままになる。もしかすると、もっと前から記憶が失われるのかもしれない。

 そうなると証拠が何も残らない。

「確かein.s、zwei.s、drei.sだったか……」

 ID中の名前はファミリーネームがイニシャル表記だ。ただ名前を見たら、いかにもサブキャラっぽい。足がつかないようにしていそうだ。

「一応、運営には名前を伝えておくか……」

 自分が不正(チート)している事も忘れて、報告してしまった。俺のアカウントのログから、パーティを組んでたアカウントが確定できればいいが……。

 とりあえず、ソニアさん達にも伝えようと思ったが、もうログアウトした後のようだ。

 ショートメッセージで、警戒を促しておく。


「あとは何をされたかだな」

 一度ログアウトしているため、システムメッセージのログは消えてしまっている。

 あの時に感じたのはポーションを使われた事だ。ID内ではプレイヤー同士で敵対行動はできないので、毒や麻痺といったポーションは使えないはず。

 あの時、視界がブレて平衡感覚が失われた。セイラさんには、魅了と混乱が残っていた。

 明らかにバッドステータスが付与されている。

「どうやったんだ?」



 結局一人では答えが出ずに、翌日シゲムネに尋ねてみた。

「ID中にバッドステータスを付けられた?」

「ああ、視界がダブって見えて、立っていられなくなったんだ」

「症状としては、バッドフィーバーっぽいな。発熱状態」

 敵の攻撃によって、たまに発生する事があるらしい。

「しかし、それを味方からというのは分からんなぁ。ID中のパーティだろ?」

「ああ」

「その目的は何だ? PKというにはメリットも無いし」

 ちょっと話し難いが、正直に言った方がいいだろう。この優しい友達は怒ってしまうんだろうが、カナエちゃんにも関わってくる。

「実はな……」


「許せねぇな」

 腹の底から、それだけを呟いて黙る。攻略サイトに載っていなかったのは、被害者が女性でその手のサイトの更新を行わないからだ。しかも、被害者には記憶の欠落だけで、深刻な被害を感じていない。

「とりあえず、他言は無用で頼む。ホノカちゃんとか、記憶が無いだけでも不安そうだった。その間に何かされてたと分かったら、ゲームを辞めるどころじゃ済まないかもしれない」

「ああ、分かってる。とりあえずの予防法は、知り合いと組んでIDに行くことだな。少なくとも第三者が紛れ込むのを防ぎたいだろうから、犯人は3人でパーティを組んでるはずだ」

「なるほど!」

 犯人が2人だと、被害者の他にもう一人パーティメンバーが入ってしまう。それを防ぐ為に、3人で組んでいるなら、2人以上でIDに挑めばマッチングすることは無いのだ。

「しかし、2日回っただけで犯人に当たったのは深刻だな。思ったより、人数が多い可能性が高い」

 チェリーブロッサムに話を聞いただけでも、一日で7件も集まったのだ。潜在的な被害者はもちろん、犯人が三人だけでは済まないのか。

「グループが大きくなれば、それだけ見つけやすいはずだから、何とか見つけるしかないな」


 犯人探しはネットゲームの知識が多いシゲムネに任せ、俺は味方にバッドステータスをつける方法を探る。

 ポーションを使われたのはエフェクトで確実。ただどのようなポーションだったのかまではわからない。

 錬金術でもポーションは作成可能だが、専門職もある。ここは専門の人に聞くのが良いだろう。



 ALFにログインした俺は、まずはソニアさんに会いに行く。チェリーブロッサムのハウスには、クリスとアイリもいた。

「こんばんは」

 ソニアさんには昨日のうちにショートメールを送っておいたので、ある程度の話は通っている。

 ただ、そのソニアさんの表情が怖い。

「ケイちゃん、昨日は運営に任せるって言ったよね」

 俺の頭を掴んだソニアさんが力を込めてくる。ダメージが入ろうとすると、街中の戦闘不可バリアが張られるが、それにも構わずに力を入れている。

 痛くはないが、絶えずエフェクトが光って心臓に悪い。

「運営の連絡は待つと言いましたが、自分でも調査しないとははわわわわ……」

 アイアンクローが両手に増えて、視界がバリアの点滅で覆い尽くされる。

 ソニアさんは近距離戦闘の格闘家だった。

「まさかセイラも無茶してるんじゃないでしょうね。このところログインしてないみたいだけど」

 その言葉に胸が痛む。

「セイラさんは関係ないです」

 被害者ではあるが、調査には関わっていない。

「でもセイラの為ではあるわけね……はぁ、それでどこまでわかったの?」

「犯人は3人でパーティを組んで、入ってきた女の子に何らかの方法でバッドステータスを付けるみたいです」

 クリスも友達が記憶欠損を起こしていたと言っていたので、詳しい話はソニアさんに直接話しかけるモードで答えた。

「そうね、私の部屋に行きましょうか」

 俺の意図を汲み取ってくれたソニアさんは、クランハウス内の私室へと招いてくれた。


 ソニアさんの部屋は、木の棒にワラが巻かれた立てられ、ぶら下がる為のウンテイや、腹筋の際に足を掛けるための器具などが並んでいた。

「適当に座って」

 ソニアさん自身も、床の上にペタリと座り込むと、ストレッチを始めた。

 俺はスカートを抑えながらソニアさんの前に腰を下ろす。


「じゃあ、昨日ケイちゃんが遭遇した事から聞きましょうか」

 IDを攻略直前に、変な薬を使われ、自由を失ったところを体をまさぐられた事を伝えた。

「ケイちゃん、大丈夫なの?」

「私はすぐにセーフティが掛かって、意識が遮断されたので大丈夫です」

「でもそんな連中がいるなんて……運営には連絡したのよね?」

 頷いて答える。

「IDに居た時間と共に名前も運営に報告しました。ただ名前からして、サブっぽかったです。ein、zwei、dreiでしたから」

「ケイちゃんはまだ初級ダンジョンなのね。そうなると、低レベルのサブでも十分マッチングするわね」

「はい、そこにはまだゲームに不慣れな子を狙うという意図もあるかもしれません」

「ますます卑劣ね。あれからもフレンドに確認したけど、男で記憶の欠落があった報告はないわ」

 やはりそういう事なのだろう。

「シゲムネからのアドバイスは、IDに行く時は2人以上なら大丈夫そうです」

 その理由も併せて説明した。

「実際に何があるかは伏せて、それを徹底させるしか無いわね」

「記憶を失う場面の情報が欲しいから、ペアで行動するのを頼んでみたいです」

「そうね、調査の為と言えば、自然に組ませる事はできるかも」

 これ以上の被害を出さない為に、やれることはやっておきたい。運営がサブキャラごと、アカウントを停止してくれたら良いのだけど、運営の対応速度はまちまちで、今回の件がどこまで重要視されるかにかかってくる。

 防衛策は運営から明確な対応がでるまで、自分達で行っていくべきだろう。

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