初めての入浴
マーカスが旅に出てるので、俺に服を買うツテはない。まあ、ショップに行けばNPCが応対してくれるはずだが、値引きが効かないしな。
今日はセイラさんに付いて行く事にする。
ユーザーメイドの水着は種類も多く、現実のモデルを参考に様々な工夫がされている。
俺は水色に白の水玉が描かれたスポーツブラに近いタイプのビキニで、スカートもあるタイプ。
セイラさんは赤のビキニでボトムはかなりのハイレグ仕様、その上から白のキャミソールを合わせている。ヘソをチラ見せするくらいの丈でかなりセクシー路線で、直視しづらい。
「こっちはムダ毛処理要らないからいいわよね」
「そ、そうですね」
だからといって際どい水着にする気にはならなかった。相手はシゲムネだしな。
家に帰ると、シゲムネがカナエちゃんを連れてきていた。年上だが、ちゃん付けにしないとダメらしい。シゲムネから年齢を聞いたことも伏せるべきだろう。
「スラムにもこんな家を建てれるんだね」
「まあ、グレード気にしないとダメだから、住宅街の方が色々こだわれるよ」
二人でそんな会話をしていた。
「こんにちは、カナエちゃん」
「今日はお呼ばれに来ました」
昨日ほど険がないのは、シゲムネと良く話した結果だろうか。まあ、波風立てるつもりもないので、シゲムネにはあまり近寄らないでおこう。
「それじゃ、早速向かいますか」
カナエちゃんに入室の許可を出して、庭へと案内する。シゲムネには不要だと言われたが、更衣室も用意した。
生着替えなど見せてなるものか。まあ、装備欄から着脱するだけだが、やはり気にはなるのである。
まずはシゲムネを一人で着替えさせて、風呂場へ追いやると、三人で着替える。カナエちゃんは、緑のワンピースタイプで、要所にフリルで飾りが付いている。やや控えめの胸元も、フリルで隠れる感じだが、シゲムネにはどう評価されるやら。
先にカナエちゃんを送り出し、ファーストインパクトを受けてる間に、俺とセイラさんも入ってしまう。
四畳半の広さは、対面でも十分に足が伸ばせてくつろげる。メイフィや法師丸も水を怖がる事なく、チャパチャパと泳いでいた。
初めて二匹を見たカナエちゃんは、近くまで泳いできたのを捕獲。濡れてしんなりした毛を撫でて解放、もう一方を捕獲を繰り返している。
メイフィ達もいかにその手を避けるかで競っているようで、楽しそうだ。
庭はバラの赤と、桔梗の紫とがちょっとアンバランスな気もする。
「黄色系のパンジーとかの方がいいのかな?」
「バラは華やかで、他のと合わせるのが難しいのよね」
雨戸を開けきって、庭が見えるのはかなりいい感じだ。あとはどう飾るかだが、これまたセンスを問われて難しい。
この辺も試行錯誤していくしかないだろう。
「家はユニットバスしか無いから、足が伸ばせるのはいいわね」
「本当ですね」
ゲームの中なので、血行が良くなるわけでも、汚れが落ちるわけでもないが、リラックス効果は大きい。
VRMMOのヘッドギアは脳内から手足に送られる電気信号を読み取りつつ、その信号を遮断することでゲーム中の体が暴れないようになっている。
また手足が萎えないように、微弱に筋肉へと信号が送られ、ゲーム中も多少は運動していたりする。おかげで外出しないニートの中には、ゲームしていただけで筋肉痛になる事もあるようだ。
セイラさんは首を浴槽の淵に掛けるようにしながら、脱力して浮かぶ。豊満な双丘が海原に見える島のようになっている。
それに見とれたシゲムネが、カナエちゃんに耳を引っ張られているのも愛嬌だろう。
「失礼します」
皆がそれぞれにリラックスを堪能したあたりで、『動く人形』のウィステリアが冷えたソーダ水を運んできてくれた。
セイラさんが持っていたメイド服を着ている。何でもクエストの報酬にあったらしい。
「ありがとう」
庭に面した縁側に腰掛けながらの一杯は、贅沢な時間の使い方と言える。
「ケイちゃんといると、生活が潤うわ。ゲームの中だけど」
「自分がやりたいだけですけど、時間を共有してくれる人がいると違いますね」
「……ケイちゃん、男の子には簡単にそんなこと言っちゃダメよ?」
日曜日といえど、日がな一日ゲームをしているわけにはいかない。一週間分の買い出しなどで外出する。
ALFのおかげで生活にも張りは出ている気はするな。セイラさんに言われた事でもあるし、少しは自炊しないとな。
いつもとは少し違った買い物になっていた。




