告白とお風呂建設
翌日の朝もセイラさんのところで、朝食を頂くことになった。今日は中華なのだろうか、肉まんのような物が、小ぶりだか色々と揃っている。それと卵スープか、他にもサラダなどの野菜類も揃っている。
「朝にしてはベビーな感じですね」
「食べてみると、そうでも無いわよ」
ケイの小さな手のひらよりも小さく、二口ほどで食べられる。皮はそこまで厚くなく、具も肉よりは野菜が多めなのか。
「確かに軽く食べられそうです。この卵スープとも合いますし」
「でしょう?」
セイラさんは自慢げな微笑みを浮かべて、俺の食べる様子を見ていて少し恥ずかしい。
まんじゅうの具材も何種類が用意されていて、タケノコのシャキシャキしたのとか、白菜が多いの、ニラをベースなどなど、量を飽きさせない作りだ。
「朝ごはん作りたくなるでしょ?」
「んぐっ……ま、まぁ」
こんな朝ごはん作ってくれる彼女が欲しいとは思ったが、自分が作る立場ならたまらないかと思い直す。
「ある程度までは準備しておけるから、朝は蒸すだけで食べれるのよ」
セイラさんはそんな朝を過ごしているのかと、関心しなおした。
人心地ついた頃、セイラさんはお茶を煎れて、座り直すと改めて口を開いた。
「あ、あのね、他の人から変に伝わると困るから、先に告白するんだけど……」
少し歯切れが悪そうな様子に、疑問符が浮かぶ。何のことかと想像を巡らせる前に、セイラさんは続けた。
「私ね、以前女の子と付き合ってた頃があるのよ」
「ふぁ?」
変な声が出てしまった。姉御肌な部分はありつつも、女子力も高いセイラさん。異性だけでなく、同性からも好かれるのは分かる話だ。
「最初は向こうから告白されて、一緒に過ごすようになったんだけどね。まあ、結果は私がフラレて終わったのよ」
「え、えっと……」
明確に付き合った経験のない俺としては返答に困る。
「なんか引っ張って欲しかったみたいなんだけど、私はあんまりそういう経験もなくて、思ってたのと違うって感じで」
それだけ聞くとなんて勝手なと思うが、当事者同士では印象も違うかもしれない。その事に関してはノーコメントの方がいいだろう。
「でね、その、こうしてケイちゃんと過ごしてるのは、下心があるからとかじゃ、無いから安心してね」
「え、あ、はい」
「その子の事を知ってる昨日のソニアとか、たまにからかってくるけど、私から女の子を口説くとかはないからっ!」
「わ、分かってます。大丈夫です」
「私だって、ちゃんと男の子の方が好きなんだからね」
そこまで念を押さなくても大丈夫だ。ケイへの接し方は、普通だと思う。
「ただ、その、ケイちゃんが気にするなら、その辺はわきまえてるから」
「私はセイラさんといるの楽しいですよ。色々と教わる事も多いですし、私の方こそ迷惑掛けてないか不安です」
「ふふ、ケイちゃんは本当に優しいよね。ただどこで恨みの篭った中傷になるか分からないから、ちゃんと伝えないとと思ったの」
「そう……ですね」
セイラさんは色々と秘密を打ち明けてくれている。そんなセイラさんに俺はずっと嘘をついている。その事が心にトゲとなって刺さっている気がした。
「あの、セイラさん。私もセイラさんに言わないといけないことが……」
言うなら今しか無いかと決意した時、セイラさんの家の扉が叩かれた。
「すいません、ケイいます?」
シゲムネが風呂の工事に訪れ、告白の機会を失ってしまった。
「いやぁ、カナエちゃんがさ、ケイの事をかなり意識したみたいでさ」
大工作業を手伝いながら、惚気を聞かされる羽目になっていた。
「結構色々な話をできたのよ。ありがとうな」
「何? 嫉妬させて仲を深めようとか思ってたのか」
「いや、そんなつもりは無かったよ。結果論だって。最初は単に甘いものが苦手だから、助っ人が欲しかったんだよ」
まあ、それはそうだろう。悲しいことに俺も紹司も恋愛経験は乏しい。そんな駆け引きじみた事はできないだろう。
「カナエちゃんだと思ってたけど、年上みたいでさ。OLさんらしいのよ、何か俺の方が恐縮しちゃうというか……どうしたらいい?」
「いや、俺に聞くなよ」
「お前なら乙女心も男心もわかるのかと」
「俺はネカマなだけで、オカマじゃないんだ。分かるわけ無いだろ。しかも大人の女性とか未知の生き物だよ」
「セイラさんはどうなんだよ」
「お酒も飲んだこと無い未成年とは言ってたけど」
改めて考えると、年下の可能性が高いのか。色々な知識が豊富で、年上かと思ってたけど。まあ、男の知識と女の知識の違いか。そう考えると、早くネカマと告白しないと、先にバレる可能性は高いじゃないか。
「よし、次そっち押さえてくれ」
シゲムネはしゃべりながらも作業をしっかり進めていて、大工として食っていけるんじゃないかと思わせるほどだ。
木の浴槽を楔で固定していき、ガタツキがないかを確認していく。
「うし、こんなもんだな。ガラスはまだなんだよな」
「ああ、大きくするにはドンドンスキルが必要みたいで」
60cm四方で詰まっているが、窓にするには90は欲しい。もしガラス戸にしようとすれば2mほどが欲しいわけで、あとどれだけのスキルが必要なのか。
「システム合成じゃなく、溶かして固める方法を探した方が早いのかなぁ」
「よくやるなぁ、そんなの。スキル上がればできるなら、上げたほうが早くねぇの?」
「今のペースじゃ中々難しそうだからね」
「とりあえず今は木の雨戸だな。開ければ、庭も一望できる」
何本かのレールの上に、雨戸を載せていき、スライドさせると一箇所に重ねられるようになっていた。
「閉じれば中は見えないし、開ければ開放感がでる。学生には贅沢な風呂だな」
「学生じゃなくても、そんな風呂を家に持つ人は富豪だろ」
浴槽以外は敷石を埋めて、その上にスノコを並べていく。
「予定してたのは、こんなところだが、他に何かいるか?」
「あ、水をどうやって引くかかな」
「井戸から汲み上げるのは、精霊の力でやれたから、後はそれを家に引いて貯めておくのがいいか」
「水瓶か桶かを置いて、そこを貯水槽にするのがいいだろうな」
精霊によるストロー式の吸い出しで、一回高い位置まで上げて、そこからパイプで家まで引いて、桶へと貯める方向で決着。そこから、浴槽へと注ぐ部分には蛇口を付けて、水量を調整できるようにした。
「意外といろんなものが、オークションで出品されてるな」
「ハウスコンテストとかもあるらしいからな。凝る人は一定数いるんだろう」
建物の出来をプレイヤー投票で決める大会があるそうだ。その上位に食い込めば、運営から賞金と次回に向けて欲しい素材の要望を出せるらしい。
「建築も奥が深いな」
「下手な図面作成ソフトより、具体的な図面が引けると、建築デザインで使用されることもあるらしいぞ」
「ALFの運営はどこへ向かってるんだ……」
最終的には地球規模の環境シミュレーターになるんじゃないかと思ってしまう。それほどに色々な要素が、詰め込まれている。
「何にせよ、これで今日の分は完成だな」
「ああ、早速お湯を張ってみるよ」
四畳半ほどの広さの浴槽に水を貯めながら、そこに普通より熱くなる懐炉を設置。しばらくは時間が掛かるだろう。
「じゃあ、水着を買いに行きましょうか?」
セイラさんが提案してきた。
「水着……ですか?」
「シゲムネくんと入るのに、裸はまずいでしょう? 下着も変だし」
「いやいやいや、シゲムネと混浴なんて考えてないですよ」
「何を言ってるの。シゲムネくんがいないと実現できなかったでしょ? なら一番風呂を共有させてあげないと」
セイラさんの意思は固く、お湯を張る時間で水着を買いに行くことになった。




