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VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
32/87

女子クランのお菓子パーティ

「おう、来たな」

 シゲムネが五人の女子に囲まれる中で手を上げた。何そのハーレム。

「きゃー何あの子、お人形さん!?」

「ゴスロリ似合ってるし」

「可愛い!」

 女子達は、俺を見るなり殺到してくる。頭を撫でられ、頬をつつかれ、肩を抱かれる。

「セイラ? 久し振り!」

「あ、ソニア。久し振り……シゲムネの知り合いだったの?」

 セイラさんの知り合いもいるようだった。揉みくちゃにされながら、手を上げたまま固まっているシゲムネを見た。女の子奪ったのは悪かったから、助けてくれ。


「では改めて、俺の友達のケイだ。それとケイの隣人のセイラさん」

 何とか騒動が収まり、シゲムネから紹介された。

「この子がカナエちゃん、うちを共同で使ってる子」

 シゲムネが最初に紹介したのは、ミドルティーンの外見をした少女。明るい緑の髪に少し勝ち気そうな瞳、光沢のあるやや暗めの緑の服を着ている。見つめられているのか、睨まれているのか、俺を鑑定してるかのような雰囲気だ。

 それからセイラさんと旧知らしいソニアさん、アイリちゃん、クリスちゃん、ホノカちゃん。

 みんな女子専用クランの一員で、今日はスイーツを持ち寄ってのプチパーティらしい。


 ALFでは、現実の店舗が試供のデザートを出品してたりと、本格的なスイーツが楽しめる。

 今日持ち寄られているのも、そうした一流店のお菓子らしい。

「すいません、私は何もなくて」

 急に呼ばれたので、何の準備もしていない。途中で買おうかという案も出したのだが、誰かと被っても興ざめだし、任せてとセイラさんに言われた。

「ちょっと台所借りるわ、シゲムネくん、入れて」

「はい、許可しますね」

「セイラが作るなら、私も手伝うわ」

 ソニアさんも付いていった。俺も手伝いたいところだが、邪魔にしかならないだろう。やはりセイラさんに教わっておくべきだろうか。

「さて、私たちはこっちの品評の続きね」

 俺も席に座らされ、小皿に載ったケーキを食べてみる。ふんわりしたスポンジに、ふわふわの生クリーム。ムース状になったストロベリーソースでデコレートされたショートケーキは、甘いのにしつこくは口に残らず、次の一口が欲しくなる一品だった。

「すごい、こんなのあるんだ」

「お前、よくそんな甘いの食べられるな……」

 そういえば、シゲムネは甘いものが苦手な方だった。どうやら感想を求められて、俺たちにその役を代わらせたかったようだ。

「これ、美味しいよ。甘いんだけど、後味はすっきりしてるから食べやすいよ。いちごの酸味とクリームの甘さのバランスが絶妙」

「やっぱり? ホント、美味しいよね」

 ホノカが嬉しそうに話しかけてきた。どうやら、ホノカオススメの一品らしい。

「まだまだ、結論は早いよ。これも食べてみて」

 アイリが出してきたのは、オレンジをくり抜いて作られたゼリー。スプーンで掬うと、オレンジ色の綺麗な透明。口に入れてみると、まずはオレンジの風味がさっと広がる。しかし、透明に見えたゼリーには、何種類かの固さが混在していて、それを口の中で噛むと、違った柑橘類の味が広がる。少し苦味のあるグレープフルーツに、酸味の強いレモン、甘さの強いみかん、甘くて爽やかさも内包する柑橘系のゼリーは、噛むたびに違った風味を伝えてくる。

「柑橘系でもこんなに色んな味がでるんですね。不思議で美味しいです」

「そうでしょ、新しい発見をさせてくれる一品だったの!」

 ホノカが喜びを露わに微笑みを浮かべる。


「口直しにどうぞ」

 クリスに出されたのは、せんべいだった。甘いものが続いた後に、醤油の香ばしさが香る焼きせんべいは、適度な塩気があって正に口直しの一品になっていた。

「はーい、セイラさんお手製のクッキーですよ」

 持ってきたのはソニアさんだった。焼きたてのバターの香りが辺りに広がる。シンプルだが温かさが最高の調味料となっている。

「どれも美味しかったですね」

「うう〜ん、甲乙つける必要はないのかもね」

 セイラさんの意見に一同が納得する。これだけ食べても胃もたれはしないし、カロリーを気にすることもない。女の子にとっては、天国かも知れないな。


「で、実際のところ、シゲムネさんとはどうやんです?」

 クリスが俺に詰め寄ってきた。

「リアルの友達ってだけで、何でもないですよ」

「こいつ、キャラは可愛いけど、リアルはこんなじゃないからな」

 ネカマであることはちゃんと伏せてくれる。

「それはそうかも知れませんが、異性と同じゲームとか仲良すぎません?」

「たまたまだよ。私が始めたのを知って、久々に復帰してみたら面白かったらしいんで」

「うう〜ん、ケイちゃんの気を引きたいからとか?」

「ねーよ」

 ポンポンと頭を叩きながら答えるが、その仕草がかえって女性陣の興味を引いてしまう。

「むむむ」

 一歩引いた位置で俺を見ているカナエちゃんは少し気になるな。本気でシゲムネに好意があるのだろうか。だとしたら、応援するのはやぶさかではないのだが。

「ケイちゃんは、私のだから。シゲムネには渡さないわ」

 そんな事をいうセイラさんに腕を取られた。突然の事にわたわたしてしまう。ネカマの事がバレたのか……?

「その方がいいんでしょ?」

 セイラさんが耳元で呟く。シゲムネとの関係を、しっかりと否定するのに協力してくれるらしい。

「また悪い癖が出てるのかしら?」

 そう思っていたら、ソニアさんから思わぬ問いかけが。

「な、ち、違うわよ。そんなんじゃ、ないからね?」

 セイラさんがわたわたと暴れ始めた。何があったのか、赤面しながらソニアさんを睨んでいる。



「そ、そういえば、さっきID行ってたはずなのに、いつの間にか家に帰ってた事があったんだけど……」

 セイラさんは話題を変えようと無理矢理話を切り出した。しかし、それは盛大な自爆。先ほどのの事を思い出して、耳まで真っ赤になっている。俺の方を見ながら、違うわよと口を動かしている。

 セイラさんってそっちの人なんだろうか。少し不安になった。

「あ、それ、私もありました」

 ホノカが思わぬ返答を返してきた。

「私の友達もあったって。バグですかね?」

 思いの外、IDに行って不具合のあった子がいるようだ。さっきのセイラさんみたいな状態にはならなかったのだろうか。

「ちゃんと調べないとダメかしらね。運営に報告した方がいいのかも知れないし」

 その場は何となく流れ、女子クランの子達は、俺を着せ替え人形にする計画で盛り上がっていた。

 まあ、可愛い格好に興味がないと言えば嘘になるけど、女子のパワーはすごかった。

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