表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
28/87

セイラさんと朝食を

 セイラさんにはちゃんとご飯を食べなさいと言われたが、朝から何かを作る気にはなれずシリアルフレークで済ませてしまう。

 ログインする前に洗濯を済ませて、簡単な掃除もやっておく。スライムがいると楽なんだろうなぁ。細い隙間も入っていけるだろうし。

 一通りの用事が終わったところで、ようやくのログインだ。


 我が家で目を覚まして、まずは盗賊からの襲撃報告。倒した数が増えているのは、バラの垣根などで庭を整えたからか。グレード2に上がらなくても、品質が上がると敵の数が増えるみたいだ。

 グレード2になると、盗賊の強さがあがるのだろう。メイフィの強さは実感したので、あとはスライムや法師丸の成長か。

「いや、更なる可能性はあるな」

 昨日手に入れた錬金術のレシピ。難易度的には人形を動かすのが低いのか。アクイナス屋敷ではマネキンのような人形を使役していた。ああいうのはどこで手に入るのかな。マーカスはショップに並べてるから分かるだろう。

 シリカの様子も気になるし、後で聞きに行ってみよう。


「ケイちゃん、おはよう。そろそろご飯だよ」

 セイラさんからメッセージが届いた。お隣に朝食を呼ばれる……なんと贅沢なことか。

 庭に出るとメイフィが寄ってきたので、一緒にセイラさんの家へ入っていく。

「おはよう、ケイちゃん、メイフィちゃん」

「おはようございます、セイラさん」

 朝食が並べられたテーブルに進むと、今日は日本食が並べられていた。

 白いご飯に、豆腐のお味噌汁。焼き鮭に玉子焼き。

「漬け物とかなかったのよね、ごめんなさい」

「こ、こんなご飯、いつ以来だろ……」

「ホント、ちゃんと自炊しなさいよ。何なら教えましょうか、お料理」

「う、うーん、また機会があれば……」

「これは強制的にやらせないとダメね。シゲムネくんに批評させましょうか」

「だからアイツはそういうのじゃないですって」


 せっかくの料理が冷める前に頂くことにする。それにしてもALFの味覚再現力は凄い。ご飯の噛むほどに甘みのでる風味がわかる。味噌汁の出汁がきちんととられていて、複雑な旨味が感じられた。

 玉子焼きは少し甘めで、ふわっと仕上がっていて美味しかった。

「うう、美味しすぎる。セイラさんの手料理食べれる彼氏さんは、幸せですね」

「彼氏がいたらこんなにログインしてないけどね」

 それもそうか。

「もうケイちゃんのお嫁さんになろうかな」

 一瞬、ネカマがばれたのかとヒヤリとしたが、そんなはずはないか。


「御馳走様でした」

「ケイちゃんは、本当に美味しそうに食べてくれて嬉しいわ」

 そういって笑うセイラさんは、喜んでくれているんだろう。普通にモテそうなんだが、逆にそれで苦労したのかな……前にクラン内でもめたらしい話も聞いたし、人当たりがいいのも難しいのかな。

 後片付けの要らないゲーム世界は、食後もゆっくりできていい。三毛の子猫又の法師丸を膝に乗せてアゴの下を掻いてやってると、幼狐のメイフィが足下に擦りよってきた。

「メイフィは甘えたがりかな」

『ちょっと耳の後ろが痒かっただけです』

「そうかぁ、撫で撫でしたかったけど、諦めようかな」

『む、むう、仕方ないですねえ』

 法師丸を踏みつけるようにして、メイフィまで膝に乗ってきた。たまらず法師丸は、セイラさんのところに逃げる。

「ちゃんと仲良くしてよね?」

『ちゃんと鍛えるのが先です』

 教育係としてもやる気を出しているようだ。グレードが上がっても、メイフィなら中心で頑張ってくれるだろう。



 食後のコーヒーまで頂いて、セイラさんの家を後にした。バラの垣根は、早くもつぼみがいくつも見られるようになっていた。

 芝はまだまばらで、土の色が見えている。

 初夏に向けてキキョウも植えてみたけど、今はまだ草しかない。

 シゲムネは同居している女の子の相手かな? ログインはしているが、こっちには来ないみたいだ。


 俺はマネキンの入手方法を聞きにマーカスの店へと行こうとした。しかし、店の前はまたも人だかり。シリカが客寄せしてるんだろう……俺のポスター騒動は完全に消えるだろうと思いつつ、シリカは大丈夫なのかと心配になる。

 大半は男プレイヤーなので人垣が高く、店の様子を見ることもできない。

「マーカス、繁盛してるみたいね」

「僕としてはシリカを見せ物にしたくはないんだけど、トーマスが朝から色んな衣装を着せちゃってね」

 マーカスとしては、せっかくの所有権を一人で楽しみたいのだが、トーマスとの約束もあって自由にはできてないみたいだ。

「まあ、それは貴方達で決めてもらえばいいけど。連絡したのはマネキンが欲しいんだけど、どうしたらいいのか聞きたくて」

「マネキン? オークションか木工だろうけど、使わなくなったストックがあるから安くで分けようか?」

「そうしてもらえると助かるけど、本当にいいの?」

「シリカが実演してくれるようになったからね、マネキンの数は減らしていこうかと思ってたから」

 それならばと受け取りに行きたいが、店は大混雑。近づきたくはない。

「どこか人のいない場所があればそこがいいかな」

「なら錬金術ギルドは、基本無人だからいいかもね」

 少し悲しいが錬金術はマイナー職の位置づけだ。



「お待たせ」

「いや、今来たところだから」

 テンプレ台詞をどや顔で返すマーカス。言ってみたかったシリーズだろう。

「とりあえず三体ほど持ってきた。これって錬金術で動かすの?」

「昨日手に入れたレシピで、動く人形というのがあったからね」

「ふうむ、やはり錬金術って色んなところに隠しレシピがあるみたいだね。昨日連れてた妖狐の子供もレシピには無い奴だよね」

「マルミミウサギの素材を変えるとできたの」

「裁縫もデザインは色々変えれるし、耐性の種類もアレンジできるから、同じ様な応用なんだろうけど……」

 マーカスは生産メインでやってるから、興味があるようだった。しかし、爆発物のレシピを持ってる錬金術師は教えられないけど。

「シリカみたいな子が造れたら、ウハウハなんだけどなぁ」

「あの子は特殊でしょう。制約の冠を外したらどうなるか分からないし……」

 などと話していると、何やら外が騒がしい。ギルドを見てみると、プレイヤーショップの方から煙が上がっている。

「まさか」



 マーカスを追って走っていくと、店の周りが大変な事態になっていた。何人かのプレイヤーが死亡していて、あちこちがクレーターのように抉れている。

 人垣の中心にいるのは、青白い肌をした少女。その額からは冠が外されていた。

「シリカ!」

 マーカスは止める間もなく、そのシリカに駆け寄っていく。

「これはマスター、お帰りなさい」

 固まっていた表情が笑みに崩れる。ただその笑みは邪悪そのものだ。両手を広げてマーカスを迎えるようにしながら、寸前で腕が動いてマーカスの胸を貫く。

 街中ではプレイヤー同士の戦闘が禁止されているが、既にシリカはプレイヤーの手を放れている。モンスターとしてプレイヤーを攻撃可能なようだ。

「解放してくれて感謝していますわ。ありがとう」

 既に死亡してオブジェクトとなっているマーカスに口づけると、シリカは宙に浮かび上がる。

「ふふふ、自由だわ。ワタシは自由を手に入れた!」

 その言葉を発して、シリカは空へと飛び去っていった。

ブクマが150を越えました!

読者のみなさん、ありがとうございます。

もう少しイベントを起こしていきたいのですが、試行錯誤中です。

楽しんで頂けていればよいのですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!にゃんと~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ