表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
21/87

内風呂を作ろう 実験と設計

 家に帰ると軽く夕食(コンビニ弁当)を済ませて、ALFにログインする。

 まずは盗賊の撃破を確認。今日も三人の盗賊を撃破していた。スライムが倒してくれたと考えられる。裏庭には、またも小銭が。スライムは元気そうにウネウネ動いていた。

 次にパイプの確保。これはNPCから買うだけなので、これもまた簡単だった。後は井戸の確認だが、10mほど離れた場所にある。水を運ぶとなると少し距離があるな。

「流しそうめんみたいに、竹の橋でも作るか?」

 井戸の深さは5mほど。パイプは長さを決めて購入できたので問題なし。水を汲み上げる部分の構築に入る。


 ポンプの仕組みは、パイプの中の空気を薄くすると、空気が水面を押す力で、水か押し上げられる。現実のポンプは、人力などで筒の中の空気を抜くことで、水を汲み上げるらしい。

 俺の場合は精霊頼みである。

 まずはガラス瓶に重力操作で空気を軽くしてみる。しかし、これは失敗に終わる。抜けた空気はすぐに周りから入り込むのだ。重精霊を作るときは、押し込むことで逃げられないようにできたが、抜けた空気分が入っていくのを止められなかった。

 はてどうしたものか……答えはすぐに出る。高校くらいの知識だったか、熱した空気は膨張するが、分子の数は変わらない。これを利用すれば、瓶の中の空気が膨張したところで蓋をしてしまえば、冷えた時に本来よりも瓶の中の空気は体積に対して、密度が薄い状態になるのだ。

 生まれたのは色の薄い精霊で、飛び方はふらふらとしている。特に命令を出していないと、俺にくっついて離れようとしなかった。

 この精霊の魔法は、周囲の空気を吸い込む感じだ。カマイタチ現象は起こしやすいかもしれない。

 パイプの中の空気を吸い出してもらうと、水が噴き出した。

「そうか、ポンプというよりストローなのか」

 しかし吸い出す力が無くなると、当然水はでなくなる。再び精霊に吸い出してもらって、水が吹き出る。

「精霊が絶えず水を吸いだしてくれたら、今のところは大丈夫だけど、もう少しスマートな仕組みは欲しいな」

 吹き出した水は、パイプで作った水道を通して、家まで引いてきた。これを桶で受ければ、水が貯めれるはずだ。

 シゲムネが子供用プールくらいの桶を持ってくる間に、俺は水を温める方を進めておく事にした。


 作るのは『懐炉』だ。一定時間、継続して熱を出し、人肌くらいを維持する懐炉を、通常のコアではなく、三つ分のコアであるトライコアで作ってみる。

 フレアストーンから、フレアコア。それを三つで合成して、トライコア。そこから懐炉のレシピを……むぅ、トライコアは素材として選べなかった。

 レシピからの作成では、決められた素材でしか合成できない。懐炉を作る仕組みを理解した上で、その燃料にトライコアを使わないといけないようだ。

 まずは普通の懐炉を作ってみる。コアが淡く輝いて、熱を発し始める。効果時間は一時間、風呂には十分だが……試しにバケツサイズの桶に水を入れ、そこへ懐炉を沈める。

 しかし、火傷しない程度の熱量では、ほんのりとぬるくなるだけで、お風呂のお湯には遠くおよばない。

 懐炉をトライコアで作るには、どうすればいいか……。


「ということで、懐炉の仕組みを教えてください」

 自分では答えが出なかったので、錬金術師の元にやってきた。NPCが答えてくれるのか不安もあったが、錬金術師は鼻を膨らませて胸を張った。

「ふふふ、我が輩の知識を乞いたいとは殊勝な心掛けよ。懐炉なぞ、造作もない。これはコアに対して一定の波長の魔力を与え、そこから生じる共鳴魔力を連鎖させて、新たな魔力として次の起動に活かしてやればよい」

 得意げな天才バカの説明に、全く付いていけない。

「コアを起動させると魔力がでるんですか?」

「違う、魔力の波が互いに重なり、そこに生じた波紋が魔力となるのだ」

 やっぱり分からん。

「その波長とやらは、どうやったら作れるんですか」

「こう、ちょろちょろ~とやって、ピコってきたら、ずばーっとやれば簡単だろう」

 ああ天才バカだな、この人は。人に説明できないタイプの人らしい。レシピにはどうやって記載されたんだか。

 ピコン。

 システムメッセージが表示された。『魔力調整』のアクションを取得しました?

 え、今の説明で理解しちゃったのか。


 早速、フレアコアを取り出して『魔力調整』を使ってみる。フレアコアの横に別ウィンドウが開いて、魔力を注入する量を選べるようになっていた。懐炉になるところには、その説明が書かれている。

 懐炉にならないあたりまで魔力をいれると、コアが淡く光るだけで何も起こらず、懐炉までくると熱を発し始める。それを越えると、明るさが増して一定時間が経過すると。

 バガンッ!

 爆発して小ダメージを受けた。

 魔力量を決めるゲージには、5秒起爆の文字が増えている。魔力を増やすとどうなるんだ?

 少し多めに魔力を込めると、やはり爆発。次は3秒起爆が追加された。なるほど、魔力量で爆発するまでの時間が変わるのか。

 この遅延を使えば手榴弾みたいな使い方も出来そうだな。いや、フレアコア単体で使うときがそんな仕様になっているって事か。


 次はトライコアの起動を試してみる。とりあえず懐炉と同じ量の魔力を注いでみると……え、ヤバッ。

 バゴーン!

 中ダメージを受けた。コアが増えたら、必要な魔力も増えるのかと思ったら逆のようである。

 そういえば錬金術師が連鎖がどうこう言ってたな。反応するコアが増えると、連鎖が大きくなって勝手に起爆しやすくなるのか。

 コア数が増えると、どんどん不安定になりそうだ。


 トライコアに少量の魔力から、徐々に増やしていく。コアの輝きもそれに合わせて増えていくので、懐炉と同じくらいのところで止める。

「熱つっ」

 懐炉よりも熱いところで安定したようだ。布越しなら触れるくらいなので、50度くらいかな?

 俺はそれを持って錬金術師の家を出た。


「ケイちゃん、また変なことしてるの?」

 家の前に桶があり、辺りが水浸しになってるのを見ながら、セイラさんが聞いてきた。今日はピンクの髪になって、ツインテール。大人びたセイラさんには、正直似合っていなかった。

 俺は桶の中に手にしたトライコアの懐炉を入れてから、セイラさんに向き合う。

「こんばんは、セイラさん。ちょっと錬金術の研究中です」

 桶の中を覗いてみると、湯気が出始めている。手を漬けてみると、程良い温度になっていた。


「おーい、ケイ。持ってきたぞ」

 丁度いいところでシゲムネがやってきた。俺の側まで来ると大きな桶を取り出した。

「あなたがケイちゃんの彼氏?」

「彼氏? 違いますよ。ただの友達です。っていうか、この人誰だよ?」

 シゲムネは俺に聞いてくる。

「お隣のセイラさんだよ」

 そういって俺は井戸へと向かう。二人は何やら話してるみたいだが、俺は自分の実験を優先させた。

 待機状態になっていた精霊に、水を吸いだしてもらう。ストロー現象で吸い上げられた水は、パイプを伝って家の前の大きな桶に流れていく。

 三回ほど精霊に指示したところで家へと戻る。


「ケイとはリアル知人なんで、そんな関係じゃないんですよ。同棲してる彼女もいますし」

「へぇ、そうなんだ……こんな家まで作るから、仲がいいのかと思った」

「仲は悪くないですよ、単に恋愛相手じゃないってだけです」

「ふぅん」

 何やら怖い会話があったようだが、突っ込まない方がいいだろう。

 俺は桶の中のトライコア製懐炉ごと、大きな桶へとお湯を移した。精霊が汲み上げてくれた水も流れ込んできて、一定の量が溜まってきた。

 水の供給が止まり、水温が適度な量になったところでトライコアの懐炉を所持品へ格納。

「これでどうかな?」

「お、いいね。半身浴くらいならできそうじゃん」

 では早速と、シゲムネは装備を外して下着というか水着になって桶に入った。

「普段はシャワーですますから、お湯に浸かるの久々だわ」

「なるほど、彼氏じゃないわね。女の子より先にお湯に浸かるとか……」

 セイラさんは何かを納得したようだ。

「ケイちゃん、お風呂を作ってたのね」

「以前、貴族の家で大理石のお風呂に入れてもらったんですが、それを少しでも再現したくて」

「何そのイベント、私知らないわ」

「錆びたダガーの錆を落として始まったイベントなんで、錬金術関連かも知れません」

「色々あるのねぇ、このゲーム」


「で、今後の予定は?」

「裏の家を買って、そこにシゲムネが作るヒノキの浴槽をセットしようかなって」

「へえ、お風呂専用の家にするのね。それはいいかも。広い浴槽も置けそうだし」

「よし、レイアウトを見とこうか。それに合わせて浴槽を作るぜ」

 家の裏側に回って早速、家を購入。すると『家の敷地面積が広がります。よろしいですか?』というメッセージが。今の家が広がるという扱いなのだろう。

 家のグレードが増えそうだが、お風呂の為には仕方ない。スライムの防衛力に期待しよう。

 購入を決定した。


「せっかくだから、庭もちゃんと作ろうかとは思ってるんだ」

「庭が見えるお風呂か、いいね。ガラス戸とか作れたらなおよしだが……」

「ごめん、大きいガラスはまだ出来てない。スキルを上げないと駄目みたいなんだ」

「まあ、追々足していく形でいいだろう。まずは家で残す部分と庭にする部分だな」

 シゲムネとセイラさんと三人で、お風呂場&庭の造成について話し合った。

細々とした話が続きますが、この小説はそんな感じで続いていきますので、ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ