内風呂を作ろう序章
月曜日、大学でムネシゲのプレイヤーである紹司と出会った。何やら必死に調べているようだ。
「紹司、おはよう。何してるんだ?」
「いや、家を建て始めると色々と気になってきてな。デザインから、レイアウトから、素材に協調性。居住性も必要だし……」
「お前、建築家にでもなるのか」
あまりの徹底ぶりに少し戸惑ってしまう。仮想空間とはいえ、そこまで再現できるALFが凄いのか。
それはそれとして、自分の用件も伝えておく。
「木工で風呂とか作れる?」
「風呂? 当然ヒノキ風呂とかあるしな、可能だとは思うが、どうしたって素材が腐って耐久値が減っていきそうだな」
「なるほど、そうか……まずは五右衛門系の樽型からがいいか?」
「いやまて、風呂だろ。広くないと駄目だろ。作ってやんよ、浴槽を。その代わりにケイとこん……」
「断る」
「い、いや、冗談に決まってるだろ。ネカマキャラなんて、興味ねえよ」
「ん? 何か酷い暴言を聞いたが、それはいい。もしかして、誰か気になる人ができたか?」
友人としてこの手の反応は何となく分かる。自慢したい事ができたらしい。
「いやぁ、住宅地で家を建ててたらさ、女の子に誉められてさぁ。住みたいって言うわけよ。ネカマじゃない女の子と同棲」
建物に真剣になっているのも、結局は女の子が原因だった。まあ、俺としてはそこをとやかく言うつもりもない。
「確かに風呂は、家に必須だし、作るのはやぶさかじゃねえ。湯を張る方はできてるのか?」
「そこはこれからだが、あてはある……あ、水か。井戸から汲み上げないと駄目なんだな」
「なるほど、水を温める方法はあるわけか。ポンプはどうにかできるかなぁ……」
男二人、桃源郷を夢見て頭をひねるのだった。
ポンプを調べてみると、空気の力で水を汲み上げているらしい。そういえば、灯油を汲み上げるホースみたいなのも、原理としては一緒か?
空気を操作するとなると、風の精霊の出番か。しかし、重精霊は作れるが逆は可能なのか……やるしかないだろう。絶えず空気を吸い上げる精霊が作れれば、ポンプを手動で動かす必要はなくなるはず。
後は井戸まで届くパイプを用意しないと駄目だな。
パイプは鍛冶なのだろうか。
「紹司、井戸から水を汲み上げるためのパイプとかって作ってもらえる知り合いいる?」
「パイプねえ、建材の中にあったかな。NPCでも販売があるかも」
「そうなのか、攻略サイト見てみるか」
確かに建物用の材料としてパイプが用意されていた。
「これって何に使うんだ?」
「二階からの排水とか。あとはデザインでそういうのを張り付けたりするらしい」
コンクリートのうちっぱなしをデザインというように、無骨なパイプを見せるわけか。俺の趣味ではないが、パイプがあるのはありがたい。
「これなら長さもありそうだし、ポンプにできるか試してみるよ」
「じゃあ俺はとりあえず大きめの桶を作ってみるよ。子供用プールくらいの」




