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VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
18/87

二つ目のダンジョンと痛いプレイヤー

 日曜日の朝になり、一週間の洗濯をまとめてやってしまう。それから朝昼兼用のご飯を食べてからログインする。

 すると侵入者撃退の報告があった。盗賊Lv1の撃破数3と出ている。被害なしの報告に安堵するが、撃破3ってどういうことだ。

 マインで倒せるのは一人くらいだと思っていたが、集団できたのをまとめて吹き飛ばしたのだろうか?

 裏庭に出てみると、窓の下に穴が空いていた。深さは30cmほど、マインで吹き飛んだ分だろう。

 ドロップ品であろう小銭が、庭の三カ所に落ちている。

「吹き飛んでバラバラになった?」

 というかコア一つのマインに、敵を一撃で倒すだけの攻撃力があるのか?


「あ、ケイちゃん。おはよう」

「おはようございます、セイラさん」

 今日は緑の髪を三つ編みに、頬には六芒星。毎日変えてるのはすごいな、何かのポリシーなんだろうけど。

「あ、もしかしてセイラさん、うちに来た盗賊を倒してくれました?」

「え? 盗賊? 知らないわよ。ケイちゃん、グレードあげちゃったの?」

 セイラさんは全く知らなかったらしい。

「ちょっとマインっていうトラップを作れたんで試したんですが、一つしか使ってないのに三人倒した見たいで……」

 説明していると、セイラさんの足下に蠢く影。そういえば、裏庭の掃除の為に放し飼いにしてたんだった。セイラさんの庭まで掃除してたのかな。

「あ、もしかして、そいつか!」

「え、何?」

 スライムのステータスを確認すると、レベルが二桁になっていた。セイラさんのところで掃除して、裏庭も掃除したことで成長したようだ。

 そして決定的な証拠として、その体には錆びた剣が刺さっていた。

「スライムが盗賊を退治したのか、盗賊が落とした武器を拾ったのか……でも、スライムが番犬代わりになるならありがたいな」

「それはそうとケイちゃん、ご飯食べていく?」


 セイラさんの家は更に改装が進み、お洒落なリビングができあがっていた。テーブルには、赤のテーブルクロスと花瓶に生けられた花。イスにもクッションが備えられて、うちの簡素なテーブル周りと比べて華やかになっている。

 今日はバターロールに、スクランブルエッグ、ベーコンにサラダと彩りも豊かな朝食ができていた。

「今日もおよばれしちゃってすいません」

「こういうのは、一人より二人がいいのよ。どうせ明日は夜しかログインできないから、ゆっくりはできないしね」

「そうですね。それでは頂きます」

 女性の手料理を食べる……と言っていいのかわからないが、こうした時間が持てるのが不思議だ。ネカマでプレイして、男に貢がせるつもりだったけど、こうした時間の方が貴重だなと思ってしまった。

 もし俺が男のままだったら、セイラさんとIDで出会っても、そのまま別れて終わりだったんだろうな。チートプログラムに感謝する。


「ケイちゃん、ダンジョンは行かないの?」

「そうですね、そっちも進めなきゃなとは思ってるんですが」

「攻撃は買った?」

「はい、炎の魔法を」

「よーし、じゃあ次のダンジョン行っちゃおう!」

「そうですね、行きましょうか」

 まずはダンジョン解放からなのだけど。次のダンジョンは、鉱山の街『ボック』にあったりする。転送石もあるので、行くのは簡単だ。

 冒険者ギルドで鉱山に出没するコボルトの討伐を依頼される。コボルトは犬顔の人型モンスターで、鉱物を腐らせるとか逸話のある怪物。まだまだ強さとしては、怖くないレベルだ。

 セイラさんと共に、『ボック』へ転送。採掘ポイントとは違う入り口に、IDへの侵入ポイントが設置されていた。

「残りのメンバーは、ランダムでいい? それとも彼氏呼ぶ?」

「だから違いますって。それにシゲムネはオフラインみたいですし」

「そっか、じゃあランダムで申請するわね」

 ほどなくマッチングが完了し、IDである『ボック鉱山』へと転送された。



 鉱山をベースにしたIDインスタンスダンジョンは、採掘で行く坑道と似た作りになっていた。主道となる広めの道には、線路が敷かれていて、壊れたトロッコ何かが転がっている。そこから細い枝道が伸びている。

「よろしくお願いします」

「よろしく」

 チッと舌打ちした戦士が、挨拶もなく切り出した。

「メインは何だ?」

「私はタンク」

「私は攻撃魔法です」

「僕はヒーラーですよ」

「じゃあ俺が近接アタッカーでいいな」

 その戦士は両手で斧を構えて先へと進む。仕方なくセイラさんが続き、ヒーラーの男性と一緒に後を追った。

 両手持ちの戦士は、ダンジョンのセオリーも無視して、タンクがターゲットを決める前に攻撃を開始して、ダメージを受けながら戦闘を進める。もちろん、タンクを務めるセイラさんに比べると、受けるダメージが多く、ヒーラーにも負担を掛けている。

「ちょっと、一人でやってるんじゃないのよ」

「てめえのタゲ取りが遅いのが悪いんだろうが」

 セイラさんの忠告にも聞く耳を持たず、自分勝手なペースで進んでいく。


「たまにいるんですよね、低級ダンジョンに時間を掛けたくないって人」

「そうなんですか。なら、どうして低級ダンジョンに来るんですか?」

「もしかして、初心者なのかな? 低級ダンジョンから人がいなくならない工夫として、ランダムにダンジョンが決まるシステムがあるんだ。追加の報酬ももらえるんだけど、ベースとなる経験値やお金が少ないから、さっさと終わらせたい人がいるんだよ」

「なるほど、そうなんですね」

 ヒーラーをやっているジェイクは、俺に説明しながらも回復の手は休めていない。彼もまた上級者で、そのランダムシステムを使っているのかもしれない。

「ちんたらくっちゃべってんじゃねえよ」

 俺も精霊と攻撃魔法でしっかりと援護して、それなりのダメージを与えている。斧戦士は、他人の行動を見ずに文句だけいうタイプみたいだ。

「外れひいちゃったね」

 ジェイクは舌を出しながら、セイラさん達の後を追った。


 もちろん、最短ルートを攻略していくので、俺のマップは全然埋まっていない。もちろん、宝箱なんかもスルー。そのくせ、コボルトのドロップ品である錆びたツルハシや、錆びたハンマーには権利申請してくるので、俺と分け合う形になっている。

 これは早々に終わらせて、後で戻るかな。


 中ボスは大きめのコボルト、ラストのボスは更に大きいコボルトに、魔法を使ってくるコボルト。更に取り巻きが沸いて出てくる。

「魔法使いを先に、あとは出てくる奴を叩いてください」

 ジェイクの指示に俺は魔法使いにダメージを与えていく。斧戦士はそんなの無視で、大きなコボルトだけを攻撃。セイラさんは、魔法使いと、大コボルトの注意を引くために色々な技を使って務めている。

 ジェイクも回復を控えめに、魔法使いへの攻撃に加わってくれた。ヒーラー用の片手で持つ杖で殴りながら、魔法も唱えている。武器を使いながらなので、あの恥ずかしい呪文を唱えながらだが、戦いぶりが良いので様になっていた。

 俺と風の精霊も魔法使いへと攻撃を集中。しかし、取り巻きコボルトが出始めた。

 俺はフレアコアを用意。出てくる群れに投げつつ、炎の魔法を撃ち込んだ。これで炎の火力があがる上に、範囲攻撃にもなる。

 追加で出る敵はHPが少な目なのでほぼ一撃だ。20匹ほどに6個のコアを使って、あとは精霊と共に撃破。その間に魔法使いコボルトを、ジェイクが倒していた。

 残る大コボルトも、HPが半減していたので、一気に攻撃を畳みかける。そういえばと試してなかった一酸化炭素の瓶での引火実験も行う。瓶がコボルトに当たって割れた所に炎を撃ち込み、青白い炎が巻き起こる。コボルトの毛を焼きながら、それなりの威力にはなっていた。

 セイラさんは技によって、しっかりとターゲット保持。三人の集中攻撃で撃破した。

「早く権利確定しろよ」

 ボスを倒す前から、宝箱の出現ポイントに移動していた戦士は、すぐに宝箱を開けて権利申請している。

 俺も極力急いで行ったが、その間イライラとした舌打ちを繰り返された。

 アイテムの所有権が確定するなり、斧戦士はダンジョンを脱出。

 残った三人は苦笑いを浮かべて顔を見合わした。

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