レシピ本とガラスの生成
小休止と夜食を食べるために一度ログアウト。こんな生活を続けていると太りそうだ。攻略サイトを見ると、鏡はドロップアイテムみたいだ。
「作れそうでもあるんだがな」
ガラスの裏にメッキして作るはずだよな。詳しい生成方法はネットで確認。ガラスに硝酸銀というのを使って、銀を付着させるのが一般的だそうだ。
「これって化学の範囲だよな。となると、錬金術で作れるのかもしれない」
俺はログインして、錬金術ギルドへと向かった。
道中で以前より話しかけられるようになっていた。やはり、マーカスのせいか……でも、街の中央部を使わないで過ごすのも難しい。今は適当にやり過ごすしかないな。
錬金術ギルドの中は閑散としていて人気がない。ポーションは、薬師という専門職が作ると回復にボーナスが付くが、錬金術で作るとNPCで売ってるのと変わらない。他の雑貨類もさほど高価な物ではないからだ。
「とりあえずは……」
ポーションの作り方と、紙やインクなどの雑貨の作り方が書かれたレシピを購入。ポーションは、HP回復や状態異常の回復など数種類。万能薬となるエリクサーは載っていなかった。
雑貨の中を確認してみると、ガラスの作り方が載っていた。錬金術で作れるのか。
俺は家に戻って、錬金術師の所へ。所持金に余裕ができたこともあり、錬金釜を買ってしまう。
シゲムネのおかげで穴の無くなった家に、早速釜を設置。ストックの無くなった一酸化炭素を作成する。
その後でフレアストーンをフレアコアに。この辺は失敗しないので、ちゃかちゃかと作業を進めた。
そうするうちにシゲムネがやってきた。
「えらく張り切ってるな」
「ああ、やりたいことができたからね。あ、シゲムネ、ケイ砂ってどこで取れるか知ってる?」
「あれはどこだったかな……適当な海岸で採掘できるんじゃ無かったかな」
「ありがと……あ、そうだ。家を直してくれたお礼になるか分からないけど、この家の転送石渡しておくね」
「い、いいのか?」
「安い家だし、ここまで来るの面倒だろ?」
「なんか彼女の合い鍵もらうのってこういう気持ちなのかな……」
「や、やめてよ、そういう言い方するの。渡さないよ?」
「ごめん、ごめん。妙に嬉しくてついな。二人の愛の巣になるよう、俺もがんばるよ」
微妙に引く発言をするシゲムネは置いておいて、自分がやりたいことを進めていく。
フレアコアができたので、ガラスの材料となるケイ砂を取りに行く。
「じゃあ、私は海岸に行ってくるから、シゲムネも自分のやりたいことしてて」
返事も待たずに海岸へと向かった。
いっさんを作るために貝殻も使ったので、拾い集めていく。そして、以前は見えなかった採掘ポイントが現れていた。採掘スキルを取得したからだろう。
そこでツルハシを使うと、ケイ砂という素材が取れる。ここも一定回数掘るとポイントが移動するみたいだが、敵のドロップに比べると断然集まりやすい。
転送石で家に戻ると、家の中が小綺麗になってた。部屋の壁が新調され、継ぎ接ぎだったのが綺麗に整えられている。
シゲムネがやったのだろう。自分の家として、整えてくれるのはありがたいが、グレードは大丈夫だろうか。家のステータスを確認すると、グレードを示すゲージがかなり溜まってきている。
「それよりもガラスか」
俺は自宅に設置した錬金釜へと向かう。いざ合成を行おうとして、料金がでないのに不安になる。
「そうか、難易度がわからないのか……って、錬金術師のところで確認して戻ればいいや」
錬金術師のところで錬金釜の使用料を確認。100Gと以前失敗したスライムと同じ値段だった。
あれからも合成を行ってスキルも上がっているが、成功率は上げたい。ケイ砂を一度溶かして、固め直すんだよな。
以前、テレビでガラス細工を作っている映像を見たことがあった。かなりの高温で赤熱したガラスを、吹いたりして形にしていくのだ。
「となると、熱を出せればいいのか」
炎の魔法では瞬間的過ぎて駄目だろう。となると、何か継続して火力を出すには……現実にはフイゴなんかで空気を送り込みながら熱するんだよな。風の精霊に頼むか?
そういえばと、錬金術師にもらった爆発物のレシピ本を取り出す。あった、継続して熱を出すフレアコンロ。これに風の精霊の力を借りれば、継続的に高温が出せるんじゃないか。
フレアコンロはフレアコアを3つ使って、錬金釜の使用料は100G。ガラスを作りやすくするために、それと同じリスクが必要とか……でも、コンロは今後も便利だろうから作ってしまう事にする。
自宅に戻るとシゲムネもせっせと木工を行っていた。それで生じる木くずをスライムが、喜んでるかはわからないが掃除してくれている。
俺も負けてはいられない。
錬金釜に向かうと、フレアコンロの作成に掛かる。これはもう失敗したら、回数試すしかないな……そう思いながら合成すると、あっさりとできた。
一酸化炭素やらフレアコアを作ったことで、さらにスキルが成長していた事もあるだろう。
さていよいよガラスの合成だ。そこまできて失念していた、熱したケイ砂を何に入れればいいのかと。今まで使ってきたガラス瓶では、ケイ砂が溶ける熱を与えたら器も溶ける。
結局、ケイ砂をそのままメニューから合成してみる。素材が自分で採ってきたものなので、失敗してもあまり痛くない。
結果としては、普通に作れました。30cm四方のガラス板になる。色々準備したのになぁと思いながら、次々と合成していく。1割ほど失敗して素材を失ったが、スキルもかなり上がったので問題ない。
「お、ガラスじゃん」
木工が一段落したらしいシゲムネが、こちらにやってきた。
「錬金術でガラスは作れたよ。これに銀メッキできれば、鏡になる」
「へぇ、自分で鏡を作れるのか。オークションで捌いたら、一財産になりそうだな」
言われてみれば鏡は3万とかで出品されていた。その値段で売れるなら、かなり稼げるだろう。まあ、まだ鏡にはたどり着いてないが。
「このガラス、何枚かもらっていいか?」
「ああいいけど、何するの?」
「窓とか作れそうだなって」
「なるほど、ガラスだけでも売れるのか」
錬金術ギルドで売ってる本のレシピで、素材もすぐ手にはいるしそんなに高くないか。
やっぱり鏡にするのを目指そう。
銀メッキには、硝酸銀という物を使うらしい。銀を硝酸て溶かせば作れる。後は銀と硝酸か。銀は彫金などの細工でも使うので普通にあるだろうが、硝酸はどこにあるのか。
「硝酸ってどこかで取れる?」
「聞いたことないな。塩酸とか硫酸はドロップにあった気がするが」
一度ログアウトしてネット検索。硫酸と硝石から作れるみたいだ。攻略サイトを見ると硝石は採掘で取れるらしい。食料の保存に使われる点で、ハムなどの加工品で使われるらしい。
「火薬なんかにも使うみたいだから、錬金術の方が専門っぽいな」
ログインし直して、オークションへ。銀のインゴットと、硫酸、硝石を落札してみる。硫酸、硝石は使い道が少ないので、比較的安く手には入った。銀も素材としてそんなに高価ではないみたいだ。
ガラスの出品は大量というほどではないがそれなりにあり、値段も高くは無かった。素材が安いし、スキル上げで作るからかな。
目的の物は手に入れたので、家に戻る。