表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
12/87

友人とお掃除係

「直紀、ALFやってるか?」

「紹司か、ぼちぼちだな」

 以前ALFの事を調べてるのを見られた友達だ。過去にやってたが、しばらくプレイしてないそうだ。

「いや、お前が調べてるのみて、少し興味が出たんで調べてみたんだが、かなり凄いことになってんな」

「そうなのか? 俺は今しか知らないからなぁ」

「俺達の頃は戦闘重視で、クエストクリアばっかりだったんだが、今は生産も充実して、特に飯屋がすげーな。リアルな店舗とタイアップとか。ゲーム内のお金であの味を堪能できるのかよ」

「いや、俺は始めたばかりで詳しくないよ」

「そんなわけで、この週末、カムバックで無料プレイできるみたいだから入るわ。キャラ教えて、クエとか手伝うからさ」


 ALFは月極で料金の発生するゲームだが、たまに新規プレイヤーや過去に遊んでたプレイヤーを引き込むために、無料でプレイできる事がある。

 それを利用して三日間だけプレイする人なんかもいるらしい。

「いや、レベル差ありすぎだろ。俺はコツコツ楽しんでるだけだしさ……」

「ゲームやってると、たまに疑問に当たって困ることあるだろ。攻略サイト見るには、ログアウトしなきゃだし、俺がいると便利だぞ」

 ぐっ、確かに知人がいれば初心者ならではの質問も聞きやすいんだが……。

「実は俺さ、不正チートしてるからさ……」

 ここは素直に暴露してしまう。大学入って二年目、それなりの付き合いだし、通報はされないだろう。

「え? そんなのあんの? でも、能力いじったりしたらすぐにBANされるだろ?」

 不正が発覚すると、アカウントを停止されて、キャラクターも使えなくなる。紹司の言うように、能力に不正があるとかなり早い段階で見つかってしまうらしい。

「俺のはそういうのじゃなくて、キャラ作成時にね」

「ふむ」

「性別いじったの」

「は?」

 さすがの紹司も少し身を引く。

「VRMMOで性別変えられないだろ?」

「ああ、だから不正チートなんだよ」

「今はそんなんあるのか。昔のネトゲじゃ、ネカマくらい当たり前だったのにな。ふぅん、いいね」

「な、なにがだよ」

「いやぁ、俺がやってた頃なんて、ムサい男ばっかでさ。女の子なんて見ることすら稀だったんだぜ」

 さすがに今はそこまでレアではない。運営の発表だと日本サーバーで7:3くらいらしい。ただその多くは、カロリーを気にせずスイーツを食べ歩いたり、ファッションを楽しむようなライトプレイヤーらしい。

「じゃあ、待ち合わせは……」

 そのまま話を進められた。


 マーカスのおかげで目立つところには行きたくない。あまり地名も分かってないので、自宅に呼ぶことにした。

「ってか、もう家持ちなのかよ」

「スラムだから安いよ、2000G」

「へぇ、そんなもんか。個人で持つなら襲撃頻度も上がらないし維持もしやすいのか。利便性考えたら街中の方がいいけどな」

「俺の場合は錬金術師の家に用事があったし、男に追いかけられる恐怖もあったからな……」



 なんだかんだで、知り合いとゲームできるのは楽しい。家に帰って用事を済ませると、早速ログインしてみる。

 今日が金曜日で、明日・明後日は休みなので、プレイに時間をかけれるのだ。

 VRMMOは脳波を送受信する端末でプレイするわけだが、体の異常があればセーフティーが働く。

 長時間の空腹や、トイレなども検知して、強制的にログアウトさせられる。一通りの事を済ませて、ゆっくりとログインの時間を作るのが大事だ。



「あれ?」

 我が家でログインしたわけだが、何か違和感を感じた。未だにボロのままだし、家具もない。かまどはあるが、使ってないので、薪も用意してない。埃にまみれて……ん?

「埃がないのか……蜘蛛の巣やら、土なんかの汚れもないな」

 誰かが不法侵入して、掃除して帰っただと!?

 そんな突拍子も無いことを考えていると、ふと視界の隅に動く気配を感じた。床の割れ目から這いだしてきたのは、スライムだった。気のせいか、昨日より大きくなってる?

 ステータスをチェックするとレベルが1だったのが、5まで上がっていた。そして、スキルに掃除が追加されている。

「お前が綺麗にしてくれたのか!?」

 プルプルと震えて答える。


 スライムの意外な特性に驚かされた。自動掃除機だったとは。しかも段差も越えるし、充電もいらない。現実にも欲しいくらいだ。

 せっかく掃除してくれるなら、ちゃんとした家にしてあげたいな……スライム的には汚れてた方が餌が多いのか?


 などとたわいもない事を考えていると、訪問者のベルが鳴る。

 一応玄関に扉はあるが、壁に空いた穴から覗いているのがわかる。

「あ、あの、ここ、ケイ・リュウゾウジさんの家で、いいですか?」

「シゲムネさんですよね」

 扉を開けると、急に居住まいをただした紹司のキャラが立っていた。

「なんでそんなに緊張してんだよ」

「やっ、だって、そんな可愛いとか、思ってもないし……」

 まあ俺もリアルで女の子と接点ないし、逆の立場なら同じ様な反応になったと思う。

「まだ何もない部屋だけと寄ってく?」

「あ、ああ」

 あまりに緊張されると、俺も意識……しないか。紹司だしな。結構、彫りの深いイタリア系ハンサムのようだ。顎は割れてないが。


「これは女の子の部屋じゃねえよ」

「まだ買ったばかりだし、金掛けると襲われるようにもなるんだよ」

「ああ、スラムだからな」

 イスもないので、ところどころ穴の空いた板間に座る。

「でも、穴くらいふさげよ」

「といわれても、どうすればいいか分からないし」

「しゃあねえなぁ」

 シゲムネは、所持袋ストレージから木材を取り出すと、ハンマーを手に立ち上がる。

「え、直せるの?」

「ああ、木工スキルは多少上げてあるからな」

 トンカンと金槌を振るいながら、まずは穴の空いた床から、壁を直していく。

「踏み台もないのかよ」

「私の背中に乗る?」

「……できるかよ。待ってろよ、イスでも作るから」

 スキルの補正もあるのだろうが、見る間にイスが作られていく。そしてそれを足場に天井の穴もふさいでしまい、ようやく家としてまともな形になっていた。

「あ、ありがとう」

「なに、これくらいは朝飯前だよ。家具とかも作れるけど、何がいる?」

「でも報酬とか払えないし」

「こういうのは気持ちだからよ。スキル使えるだけでも嬉しいもんだしな」

「そう? じゃあテーブルは欲しいかな」

 言ったそばから作り始めて、時間もかからず完成。

「材料費とかは?」

「安い木材だから、在庫処分できていいくらいだけど……ちょっとだけいい?」

「何? 何でもするよ」

「何でも、何でもするって言ったよね。じゃあ、おっぱい触らせて!」

「ふぇっ!? 俺、男だぞ!」

「でもついてるのは確かだろ、柔らかそうに揺らしやがって!」

「でもそんな、顔あわしたときに気まずくなるって」

「そんな未来は知らん。今ここにある乳を揉みたい」

 鼻息の荒い友の姿が少し悲しくなる。でも男として、その気持ちも分からなくはない。

「す、少しだけだよ」


 わしっと掴まれた。

「うおぉ、なんじゃこりゃあ」

「ちょっと、強いよ、痛いって」

「けしからん、けしからんよ!」

「分かったから、落ち着いて」

「ああぁ、凄いな、こんな感じなのか……」

「あ……ん、ちょっと、そろそろ、ねぇ」

「顔を埋めていいのか?」

 いいながら顔を寄せてきたので、それは叩き落とした。


「すまない、我を忘れてしまった」

「ハラスメント申請出せるんだからね。無茶はしないでよ」

「面目ない。お詫びにベッドでも作ってやるよ」

「邪な考えがあるなら、本気で通報するからな」

「わ、分かってるよ。本当にお詫びってだけだ。グレードが上がらないように、最安値の作るから」

 本気で反省しているようなので、任せる事にした。

「布がいるから、オークションにでも行くか」

「ああ、私も行くよ。合成素材見たいし」

「何の合成やってるんだ?」

「錬金術」

「あれって、微妙だって評価じゃなかった?」

「いや、作れるモノは凄いと思うよ。そこのスライムも掃除機として優秀だったし」

「おおっ、いつの間にか木くずがなくなってる!?」

 シゲムネの木工で出たゴミも、スライムが掃除してくれていた。ゴミ箱もいらないな。いや、スライムの巣として置いておくのもありなのか?

ゲーム用語など、わかりにくい部分、誤解している部分があれば、指摘いただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 揉むんだ 胸(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ