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VRMMOでネカマプレイ日記  作者: 結城明日嘩
はじめようALF
11/87

失敗とスライム

「ケイちゃん!」

 鉱山から出て伸びをしているところに、いきなり背後から抱きつかれた。

「はわっ、セイラさんですかっ」

 俺に絡んでくる女性キャラは、以前IDでお世話になったセイラさんしかいない。セイラさんは俺から離れて向かい合う。

 その髪色が鮮やかな赤から、輝度を落とした紫になって、頬のペイントが星から三日月になっていた。

「こんなところで会うなんて、奇遇ね。ケイちゃん、採掘なんてするの?」

「ちょっと素材集めで。セイラさんは、どうしてこんな低いレベルの場所に?」

「賞金首がここに出るはずだからね」

「賞金首?」

 セイラさんの説明によると、モンスターの中でも固有名を持つモノがいて、それらを狩るクエストがあるらしい。

 初心者しか使用しないマップに配置することで、リソースの再利用をしているみたいだ。

 せっかく熟練者に会えたので、情報を聞いてみる。

「そういえば、ゼラチンってどこで手に入るか知ってます?」

「あら、料理でもするの? ゼラチンはクラゲ系か海草系のモンスターから、ドロップするアイテムで合成できるわ。初級レシピだから簡単に作れるけど、オークションなんかにもあるんじゃないかしら?」

 オークションか、そういえばまだ覗いてなかった。プレイヤー同士が不要な素材や、作った装備なんかを金銭でやり取りできるシステムだ。

「ありがとうございます、そちらを見てみます」

「はーい、頑張ってね」


 この町にはオークションを見れる掲示板が無いので、最初の街へと戻ることにする。

 家へ戻る転送石を利用して、一瞬で帰ることができた。便利だ。

 家に備えられている収納箱に、掘ってきた素材をひとまず収納。

 街の中心部へ出てオークションを見てみようとすると、プレイヤー商店街に人だかりができている。何かあるのかなと、近寄ってみると、マーカスの店だった。どうやら軒先に等身大パネルのような水晶板が立てられ、定期的に表示されるモノが変わっているようだ。

「あれって……」

 俺は慌てて路地裏に隠れつつ、マーカスにショートメッセージを送る。


「店のアレ、何ですか!」

 以前撮影した写真を引き伸ばしたモノだった。

「あ、ケイちゃん。おかげで千客万来、商売繁盛だよ」

「分かりました、もうマーカスの店には近づきません」

「え、あのっ、ちょっと!?」

「あんなところに私が近づいたらどうなるか、分かりますよね? もうあの店には近づけません。それではさようなら」

「片づける、パネルは片づけるからー!」


 メッセージを打ち切り、返信はしない。俺の撮影パネルをどけたところで、あそこの客に顔が知れ渡っている。当分は近づけないだろう。

 1万Gの代償はやはり大きかった……。

 幸いオークションボードは、街のあちこちに設置されているので、人の少ないところを利用する事にする。



 中心街を離れ、貴族の館付近にあるオークションボードを見てみる。クエストでしか用の無いこの辺りはプレイヤーが少ない。

「どれどれ、ゼラチンはっと」

 ボードを調べると、オークションウィンドウが開き、そこで検索が行えるようになっていた。アイテム名を入れると、ずらずらっと出品が並んだ。単価の値段の安い順に並んでいるが、まとめ売りで出品されているものが多く、最大数の99個が前半の多くを占め、少数の出品は少なく、あっても高い。

 スライムの作成に必要なのは2つなので、多く買っても困る。少し割高になるが、少数の方で2つ買うのと同じ値段だったので4つの出品で購入。モンスターの核が手に入れば、2回目の合成も試せるはずだ。


「そうか、モンスターの核の出品も見ればいいのか」

 そう思ってオークションを確認してみると、かなり安かった。料理でも使うらしいゼラチンと違って、使い道が他に無いらしい。とりあえず、適当に購入しておいた。

 まだ転送石は使えないので、歩いて家に戻る。そして錬金術師のところへ。

 そういえばこの人はギルドではなく、こんなところで錬金術を教えているんだ?

「ふん、真理の探求は孤高でなければ至れん! 群れたがる連中にはそれが分からんのだよ」

 どうやら追い出された設定らしい。まあ、爆発物を作り続ける奴は、側にいて欲しくはないな。


 いよいよホムンクルス生成の第一歩、スライムの作成を試みる。錬金釜の使用料が、100Gになっていた。一気に難易度が上がっているのか?

 俺は恐る恐る合成を開始。スライムなんて現実では作れないので、レシピからの合成しか作れない。

 ガラス瓶に詰め込んだゼラチンに、魔法モンスターの核を置いて錬金釜へセット。メニューから合成を開始すると、光のエフェクトが集まっていき……。

 ボフンッ!

 白い煙と共に素材が消えて、スライムはできなかった。システムメッセージに、合成失敗とでた。

「駄目じゃん!」

 合成で初めての失敗だった。スライムの合成は難しいのか。後一回は試せるが、先にフレアストーンの合成をやってみる。

 『フレアコア』というアイテムに作り変えるらしい。錬金釜にセットして合成……今度は50Gとスライムよりは安い。値段で難易度が分かるなら、一つメリットだな。

 そのまま合成を開始して、作成に成功。フレアストーンは濁った赤の水晶といった感じだったのが、少し透明度が上がっている。フレアストーンは、ダメージ微だったのが、ダメージ小に上がっていた。そのままあと2つも作ってしまう。

 続けてフレアコアで作れる『かんしゃく玉』を作成、こちらも50Gだったので、そのまま合成。丸い石のような形に生成された。ダメージがなくなり、音だけが発生するようだ。

 残り2つも『かんしゃく玉』にしてしまう。何とかスキルが一つ上がったので、再度スライムに挑戦する。


「うまくいってくれよ……」

 工夫するところが無いので、祈る事しかできない。メニューからの合成、100Gが所持金から引かれ、ガラス瓶に光が集まっていく。シュオシュオとそれが加速し、フラッシュ。さっきはここで煙がでたが、今回はでない。

 ゼラチン内部に取り込まれたモンスターの核がプルプルと揺れ、ガラス瓶から溢れ出した。錬金釜へと這いだしたそれは、ゲル状の物体。

「これが、スライムなのか」

 作成名スライムとでたので間違いは無いだろう。無事に成功した安堵感と、なんか違うという感情が沸き上がる。

 スライムは精霊と同じペット扱いらしいので、簡単な命令ができるみたいだ。

 メニューを開くと、命令が一覧で表示される。

「留まれと這い回れ……だけとか」

 精霊と違って攻撃には使えないらしい。しかも、精霊とは一緒に呼び出せないだと!?

 家に戻って『這い回れ』を指示して、今日はログアウトした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次にログインしたら、部屋がピカピカに……………ww
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