永久に共に
「待って」
急ぐ彼女の手を掴み、振り向かせる。
「えっ、渡んない感じ?」
彼女は横断をやめ、不思議そうな顔でぼくのもとに戻って来る。
「どうしたの? 別の店に行く?」
横断歩道を渡った先に、お昼をとる予定だったレストランがある。でも、そこに入ってしまったら、彼女は、、、。
「、、、もし、ぼくが、『このデートは6回目なんだ』といったら、どうする?」
「え? 何それ意味わかんなーい(笑)」
無邪気に笑う彼女。意味が分らない。素直な感想だ。ぼく自身、未だにこの状況が理解出来ていない。
横断歩道を渡る彼女とぼく。お昼をとるため、レストランに入る。地震が起こる。揺れ自体は大したことはない。でも、経年劣化の進んでいたガス管にトドメを刺すことは出来た。漏れるガス。調理場の火。答えはもう、分かるよね。
それからぼくは、ずっとこのデートを繰り返している。ぼくだけが、ずっと。
「で、お昼どこにする?」
何をやっても、彼女を救うことは出来ない。この日の昼、彼女を死ぬことになっているんだ。神様がそう定めたんだ。けど、だったら何故、ぼくにこんなチャンスみたいなものをあてがうんだ。こんな、、、。
彼女が答えを待っている。何か言わなくちゃ。何か、、、。
「、、、世界最後の日、美香なら、何が食べたい?」
「え~、唐突すぎ(笑)でも、う~ん、そうだなぁ、、、寿司、かな?」
「じゃあ、決まりだ」
デートが続く。お昼までのデートが。次目覚めたら、今度はどうしようか。どんなデートをすれば、彼女は喜んでくれるだろうか。どんな選択をすれば、彼女は救われるんだろうか。拝啓神様、ぼくの右往左往は、いい見世物になっていますか?