7 勇者じゃない!
『アイリス。起きるのじゃ。』
ん。朝から念話を飛ばしてきやがった。
念話はある程度の距離なら通じるが距離が離れてしまうと使えない。
『早く支度をして王の間にくるのじゃ。
よいな?』
ブチッ
返事をする前に切られてしまった。
言いたいことだけ言って、人の話をまったく聞かないのは昔から変わってない。
さっと用意をすませ、ドアに手をかけたところで思い出した。
あの騎士まだいるのだろう。
ドアの向こうに意識を集中させる。
よし。騎士の気配はない。安心して外に出られる。
早く王の間に向かわないとな。
一人で長い廊下を歩く。
もちろん、ローブを着てフードも被っている。
王の間に入るとそこにはばばあと王様がすでにいた。
あと騎士も。
「遅くなってしまい申し訳ありません。」
頭を下げる。
「よい。それより、ゆっくりと休めたか?」
「はい。ぐっすり眠ることができました。」
「うむ。それはよかった。
でだ、さっそくで悪いのだが今から魔王のところへ行ってくれんだろう。」
「分かりました。」
王に背を向け歩き出そうとすると
「待て。魔王のところに行くのに手ぶらはいかん。
おぬしが余程の魔法の使い手でもだ。
この剣を持っていくがよい。
これは魔物に効果がある。」
「いりません。剣など重たくて持てません。」
剣の扱いには慣れてるが勇者みたいで嫌だ。私は魔女だ。
剣など必要ない。
「それでもだ。
あぬしは剣を扱うことができるのであろう?
エルミーヌから聞いたぞ。」
ばばあ余計なこと言いやがって!
ばばあと目があった。そのしてやったりって顔が余計に腹立つ!
「分かりました....
その剣、使わせていただきます。」
仕方なく剣を受け取ったそのとき王は笑った。
「今ここに新しい勇者が誕生した!
勇者、アイリス=オレットの武運を心から願う!」
アイリス:私は勇者などになりたくなかった!
誰かマジで変わって.....