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プロローグ
君は『紫鏡』についてご存知だろうか。
もしかしたら名前くらいは聞いたことがあると思う。そして、君がまだティーンエイジャーであるなら早めに帰ったほうがいい。ま、それでも聞くと思うけどさ。僕もそのつもりで話すから。
『紫鏡』は、都市伝説の一つ。
簡単だ、二十歳になるまで『紫鏡』を覚えていたら不幸が訪れるというもの。
それを打ち消す呪文もあるが、これらは基本的に昔からの風習に由来するんだ。
まだ医学が精通していない頃は、身体に紫の斑点が出来るとそれは即ち"死"に直結する病気だと思われたんだ。ま、実際どうなんだろうね。
それから紫という色が出てきて、死への恐怖が相まり『紫鏡』の伝説が生まれた。
ところで君はいくつだ?
ん?僕かい?
僕、こう見えてすごく年寄りなんだ。少なくとも三百年くらいは生きてるかな?
それで、君は?
……へぇ、二十歳かあ。
なに、もう成人したって?
そうかそうか、それはおめでたい。
じゃあ、この際だから僕からもお祝いさせて。
とっておきのおまじないを掛けてあげるよ。
「『紫鏡』」