新入り、そして妹 その③
翌日。
プルルルルルル……プルルルルルル。
僕はある人に電話をかけていた。
「はい、白樺です。どちら様ですか?」
そう、僕が電話をかけたのは紛れもなくあの妹の友人、銀ちゃんだ。白樺銀、これが彼女のフルネームだ。
「ああ、ぴゅあラブのメイド渚です。ちょっとだけお時間もらってもいいですか?」
「えぇぇぇぇ!? あ、あの渚ちゃん!? まじ? これイタ電とかじゃないよね?」
「まじです。あの渚です」
「てことは、うちが渡したあの手紙、捨てないでちゃんと見てくれたんだ!?」
この白樺さんの言う、手紙、というのは、僕の妹と白樺さんが来店したあの時、帰り際に僕にくれたものだ。
その手紙には、何行にも渡る僕への熱いメッセージと、白樺さん自身の電話番号がのせられていたのだ。
手紙をもらうのはよくあることだが、わざわざ電話番号までのせてきた人は白樺さんが初めて。
別に妹に手紙をもらったことは、隠すようなことではなかったけど、あえて話すようなことでもない。
だから僕は妹に、このことは言わなかった。まあ、ちょっとばかし、妹にいいとこ見せようとした、ってのもないことはないんだがな。
あんな行き当たりばったりな作戦をたてて、きっと僕の妹は上手くいくとは思ってないだろう。
だがしかし、ふたを開けてみれば、いつの間にか妹の悩みは解決し、晴れて友達と仲直り、となれば、お兄ちゃんかっこいい! となるわけだ。
「うん、それでさ。今日ってうちの店に来れたりする?」
別にわざわざ店で話す必要もないけど、街中で女の子と二人で話すというのは、あまりにも僕にはハードルが高い。
残念ながら、僕にはそういう経験は皆無なもんで。だからここは、ぴゅあラブで話すことにした。
「だ、大丈夫です! 何時ですか!? うちは今からでも行けます!」
電話越しでも伝わる、この白樺さんの興奮した様子。よっぽど嬉しい、ということなのかな。
「じゃあ今から一時間後で。あ、今日はもちろん僕の奢りです」
やはり僕も男だからな。それぐらいはしないと。それに、妹と仲良くしてくれてありがとう、という感謝の意もこめて。
「まじでまじでぇぇぇぇ!? やっべぇぇぇぇ! 興奮して鼻血出てきたぁぁぁぁ! それじゃあまた後で」
そう言って、白樺さんは一方的に電話を切った。ていうか、鼻血が出そう、じゃなくて、もう鼻血が出ちゃってるんだな……。
やっぱりこの人なんか怖い。けど、今さら臆したところで、約束した以上行かないわけにもいかない。
「はあ……気が滅入る……」
そう独り言を言って、待ち合わせ時間よりも早くぴゅあラブへと向かうのであった。
「あら。今日はシフト入ってないわよ?」
店に着くとすぐに、僕の姿を目にした琴乃さんが話しかけてきた。
「はい。シフトは入ってないんですけど、ちょっと今日お仕事させてもらってもいいですか?」
僕の言葉の真意を測りかねたのだろう。琴乃さんは訝しげな顔をして、僕に言った。
「時給は出さないわよ? それでもいいなら」
「大丈夫です。その代わりと言ってはなんですが、一つ僕の提案を聞いてくれませんか?」
琴乃さんは数瞬考えてから僕に言った。
「……言ってみなさい」
「実は、今日とあるお客さんと、付きっきりで話がしたいんです。ですから、僕とそのお客さんの席を確保していただけませんか?」
依然として琴乃さんは怪訝顔だ。そして、念を押して言う。
「かまわないわ。話終わったら、ちゃんとその後仕事はしてもらうけど、いいわね?」
「はい」
「なんだかよく分からないけど、そのお客さんって男? もしそうなら……ま、まあいいわ。とりあえず、私は何もツッコまないでおく」
あらぬ誤解をされている気がしてならない。けど、僕の要求を了承してくれたわけだし、僕もとやかく言うのはよそう。
「禁じられた愛、ってやつね……応援してるわよ?」
「しなくていいです!」
「ふふ、人生に苦労はつきものね」
「もう……放っておいてください……」
なかば投げやりな感じで、琴乃さんとの会話を終えた僕は、メイド服に着替え、店の奥の休憩室で待ち合わせ時間まで待つことにした。
すると、一人の女の子が僕のいる部屋へと入って来た。
「あら? あなた今日は……?」
四条加奈子だ。顎に手をあて、不思議そうな顔をしている。こういった一つ一つの仕草を見ても、実に見事にさまになっている。
気品があり、華やかで、思わず見とれてしまう。まあ、性格は……ね。
「ああ、ちょっと今日は用事があってさ」
「用事、というのは?」
隠す必要もないので、すぐに答える。琴乃さんみたいに誤解されても困るし。
「お客さんと話がしたくてさ。そのお客さん、ここに来たことある人だし、どうせならここで話そう、ってなって」
四条さんはどうやら納得したのだろう。小さく頷いて僕に言う。
「そう。でもあの店長のことだから、ただで店を貸す、なんてことはないでしょう?」
さすがだな。よく分かってるじゃないか。
「もちろん。話終わったら、給料無しで働くことを条件にな」
「あなたって……もしかして馬鹿、なのかしら?」
「はは、そう言われても、何も言い返せない」
四条さんは眉を細め、信じられないといった顔をする。
「よく笑って済ませられるわね。そのお客さんとはどうしても、ここで話さなきゃならない理由でもあるの?」
「別にここじゃなくてもいい。けどまあ、さすがに女の子と二人きりで話すのに、街中じゃちょっとな。僕はそういうのに疎いから、ここをチョイスしたってわけ」
僕がそう事情を説明すると、四条さんは僕から無言で視線をそらし、何かを考え始めた。
何か気に障るようなこと言ったかな。そんな呑気なことを考えていた僕に、四条さんは鋭い一言を飛ばす。
「『さすがに女の子と二人で話すのに』? 『僕はそういうのに疎いから』? 私にはあなたのこの二言をとても奇妙に感じるわ。あなただって女性でしょうに、女の子と二人で話すのなんて、造作もないことでしょう?」
「それに」、と話を区切り、僕を一瞥してから、また話し始める。
「疎いもなにも、女の子と関わるのは日常茶飯事じゃないかしら? あなたが女性なら。そう……あなたが女性なら、ねえ?」
「うっ…………」
ドジ踏んだ、完全に。今までは、他のメイドさんとはあまり関わらないようにして、自分のぼろが出るのを防いでいた。
けど今は油断していた。四条さんと仲良くなったのが裏目にでたか。
「そういえば、あなたって決して更衣室で着替えないわよねえ? それは何故かしら? まるで、女性の着替えを見ないように、わざわざそうしているように思えるのだけれど?」
「や、やだなぁ……た、ただの思い過ごしだよ、きっと」
「それなら――」と四条さんは言うと、ビシッと人差し指を僕に向け、上品なその顔からは想像もつかないような、とても下品なことを言った。
「あなたにおちんちんがないか、確かめさせてもらうわ!」
ちゃんと、お、を付けるあたり、まだ幾分かましだろう。けどさ、なにもそこを確認しなくても、って思う。
別に、胸とか触ればすぐ分かることだろうに。にしても、僕も悠長なことは言ってられない。ここでもし、それを実行されてしまったら色々とまずい。
「あ、四条さん!? 今ちょうどお客さん来たみたい! ごめんね、悪いけど行かなくちゃ。それじゃあそういうことで!」
もちろん嘘だ。白樺さんはまだ来ていない。
「待ちなさ――」と後ろから声が聞こえたけど、そんなこと気にせずに、僕は逃げた。
これ以上話すのは危険だ。しかしどうしたもんかな。同じ職場にいる限り、四条さんから逃げ続けることはできない。
そうして今後のことを憂いていると、来客を知らせるベルが鳴る。
「渚ちゃぁぁぁぁん! 約束通りこの白樺銀、参上いたしました!」
おい、もっと普通に入って来いよ。
「お帰りなさいませ、お姉ちゃん」
依然、銀ちゃんにはお姉ちゃんと呼んでくれ、と言われていたので、僕はその要望通りお姉ちゃんと呼んだ。
「おおっ! さすがは渚ちゃん! そのこと覚えてましたか」
「ええ、まあ。とりあえずこちらへどうぞ」
僕は白樺さんを席へと案内し、アイスティーを手早く用意する。そして白樺さんの対面に座った。
「それで、今日は一体なんの用でしょうか? まさかの……デートのお誘い!?」
「お、落ち着いて下さい。ちょっと話したいことがありまして……」
今から僕が話すことはすべて嘘だ。妹と白樺さんを仲直りさせるべく、僕は嘘をつく。
「実は僕、白樺さんを街中で見かけたんです。それで、その時の白樺さん……なんだかとても落ち込んでいたように見えて……それで、もしかしたら何かあったのかと思って。こうして話をしてみようと思
いました。もしかして……迷惑でしたか……?」
白樺さんは非常に驚いた顔をしていた。それも無理はないか。
事情があるとは言え、一度店で会っただけの客に対して、ここまでのお節介をする人はなかなかいない。
白樺さんは僕の目をじっと見つめる。僕も白樺さんから目をそらしたりはしない。
すると、僕の用意したアイスティーを一口飲んでから、ゆっくりと口を開く。
「驚きです。まさか渚ちゃんに、ここまで気遣ってもらえるとは……」
白樺さんの口調はいつもとは違い、随分と落ち着き払ったものであった。
「それに、迷惑なんかじゃありません。むしろ、ちょうど良かった、と言ったほうがいいかもしれません」
ちょうど良かった。どういうことだろうか。
「渚ちゃんの言う通り、うちは確かに落ち込んでます。そうですね……少し相談してもいいですか?」
白樺さんは溶け始めた氷を見つめながら、僕にそう言った。僕としては願ってもない好機なので、「うん」と即答する。
「うち……親友と喧嘩しちゃったんです」
やっぱりそうか。もし妹と喧嘩した話じゃなかったらどうしようかと思ったが、どうやら大丈夫そうだ。
「原因は……ハッキリ言ってしまえばうちにあります。うちの事情なんて、凛子ちゃんが知るはずもないのに。それなのに……勝手に一人で怒ったりして……うちってほんと最低です」
語るに落ちるな。親友って言葉を使って、わざわざ名前を伏せてたのに。
これは、そんな些細なことを気にしていられるほど、心に余裕がなくなってるってことかもしれない。
「でも……それでも許せませんでした……お父さんの悪口を言ったりする凛子ちゃんのことが」
「お父さんの悪口? なんで白樺さんは悪口を言ったその、凛子ちゃんって友達のことが許せなかったの?」
もちろん知っている。白樺さんにはお父さんがいなくて、だから怒ったことは。
けど、ここでそれを知っていたら僕が疑われる。なので事情を知らないふりをした。
「うちには……お父さんがいないんです。生まれた時にはもう死んでいたそうです。だから、顔は見たことないし、当然思い出もありません」
親父の愛情を知らずに育った。その白樺さんの気持ちは、きっと僕には理解できない。理解できないし、理解しようとも思わない。
どんなに頑張って理解しても、それはきっと違う。ただの偽物で偽りだ。もっと切り詰めて言えば、偽善、だな。
「だから……簡単に悪口を言う、凛子ちゃんが許せませんでした。凛子ちゃん……うちの親友の凛子ちゃんだけには、そんなこと言って欲しくないんです!」
僕は白樺さんの目を見る。その瞳からは、嘘や建て前は感じられない。きっと本気でそう思っているのだろう。
「それで喧嘩になったと?」
「いえ……喧嘩というよりは、うちの一方的な逆ギレですね……」
「なるほど。それで凛子ちゃんは、白樺さんに謝ったりしなかったの?」
白樺さんは苦しそうな表情を浮かべ、やや自嘲気味に言う。
「もちろん謝られました。何回も何回も、それはもうしつこいぐらいに。それなのにうちは……ムキになって……言っちゃいました」
「なんて?」
「凛子ちゃんの口からあんな言葉聞きたくなかった、もう顔も見たくないって……」
顔も見たくないか……。そりゃあいつも落ち込むはずだ。
「あのさ、白樺さんは凛子ちゃんと仲直りしたいんでしょ?」
白樺さんは椅子からもの凄い勢いで立ち上がり、机に両手を置いて、店内に響き渡るような大きな声で言った。
「あたりまえです!」
僕を白樺さんに落ち着くよう言って、どうにか座らせる。そうしてから話を続けた。
「じゃあ何で謝らない?」
「それは……だって……あんな酷いこと言っておいて、許して下さいなんて……あまりにも虫がよすぎるじゃないですか」
「確かにそうだな」
「そんなあっさりと……やっぱりうちはもう――」
白樺さんがそう言いかけたところで、僕は右手でそれを制止する。
「けどな……」
きっと白樺さんは、あともう一歩のところで踏み出せないんだ。仲直りしたい、その気持ちが強いのは分かる。
じゃあそうすればいい……? 違う。僕はそんなことを言うために、白樺さんを呼び出したんじゃない。
僕は仲直りしろとか、お前が悪いとか、そんなことを言うべきじゃない。僕がすべきなのは、否定も肯定もせず、ただ背中を押してやる、それだけだ。
「けどな。いつまでもそうやって自己完結して話を終わらせちゃ、何も始まらないだろ? 凛子ちゃんに自分の思いをぶつけてみろ。それでだめなら仕方ないさ。また次がある。大事なのは仲直りすることじゃない……お互いの気持ちをぶつけあう、それが大事なんじゃないか?」
白樺さんは黙り込んでしまった。僕の発言に何か思う節があるのだろう。考える時間は大切だ。
そう思い、「ケーキでも……持ってくるよ」と、それだけ言い残して僕は席を立った。
このままどうにか上手い方向にもっていければいいんだがな。妹も白樺さんもともに、仲直りしたいみたいだったし。
まあ何とかなるだろう。とりあえず、何のケーキを持っていこうか。ショートケーキ? いやいや、やっぱりチョコレートケーキ? ううん……難しいな。
どうも女の子のこととなるとだめなんだよな、僕。あーでもない、こーでもないと、うんうん呻っていると、いきなり腕を掴まれた。
「うわっ、いきなりなんだよ!?」
後ろを振り返ればそこには四条さん。ああ……。妹の件が終わってから、こっちをどうにかしようと思ってたけど……そうはいきそうもないな。
「話があるの、来て」
「ごめん……今お客さんの相手してるから……」
「これは命令よ、あなたに拒否権はない。理解したかしら?」
いつにもまして、冷たく無機質な声だ。これは……もしかして僕大ピンチじゃない? 四条さんから逃げても地獄、逃げなくても地獄。
ならどうする? よし、とりあえず逃げよう!
「後でたっぷり話は聞くよ、それじゃ」
「あなたの秘密、ばらしてもいいのかしら?」
え……? 今なんて言ったこいつ? 秘密? まさかな。僕は思わず足をとめる。
「秘密って……なんのことだ?」
僕は息を呑む。
「この期に及んでまだ白を切るつもり? 呆れたものね……いいでしょう、私の口から言ってさしあげましょう」
ドクン、ドクンと鼓動が速まり、一気に緊張の波が押し寄せる。しかし、四条さんの次の一言で、僕はまったく別の意味で驚かされることとなる。
「あなた、レズなのね?」
僕は耳を疑った。いや、耳どころか、自分の頭さえ疑った。だって、この状況でそんな単語が飛び出すはずがないのだから。
「すまん……よく……聞こえなかった」
「一度耳鼻科で診てもらったほうが、よろしいんじゃなくて? 仕方がないからもう一度言うわ。あなたはレズか、そう聞いたのだけれど」
あまりにも突拍子の無い四条さんの発言に、僕はただ固まるしかなかった。
「そうすれば合点がいくのよ、全て。さっきの奇妙な発言といい、そしてあのお客さんと楽しくお喋りしているのこの状況。あなた、レズなのね? 隠す必要はないわ」
四条さんは、あたかも自分が名探偵然として堂々と僕に言った。
これは……あらぬ方向に話しが進んでいる。僕が男だとばれなかっただけでも、良しとするべきなのか。
それともここは否定して、ますます僕の男疑惑を助長するか。どうしていつも人生は、二択に限られているのだろうか。
僕はどちらも選びたくない。選びたくないけど、どちらかを選ばなければならない。
どうする……。いや、それなら他の方法があるじゃないか。すなわち、何も答えない。そうすれば、相手は自分の都合のいいように考えるだろう。
「……」
「どうして何も答えないのかしら? その沈黙は……肯定と理解していいのね?」
「……」
「なるほど。この件は私とあなたの秘密にしておくわ。感謝なさい」
「ありがとう……」
良かった。こいつ意外と天然というか、馬鹿なのかもしれない。
「それじゃあ、そういうことで」
「ええ、時間をとらせてしまって悪かったわね」
人生最大の危機を切り抜けた僕は、結局ショートケーキとチョコレートケーキの二つを持って、白樺さんのもとに戻ったのであった。
「ごめんね、待たせちゃって。もしよかったらケーキ食べて。ここのケーキ美味しいから」
僕は二つのケーキを机に並べて、白樺さんの様子をうかがう。
「ありがとうございます」
白樺さんは、そう一言だけ言って、ショートケーキへと手を伸ばす。
イチゴをフォークでどかし、フォークについた生クリームを少し舐める。
「うち……今日凛子ちゃんと会って話すことにします」
甘いケーキを食べているのに、白樺さんは苦い表情をする。
「仲直り、するの?」
かぶりをふって、子供みたいないたずらな笑みを浮かべ、白樺さんは僕にこう言った。
「仲直りはしません。渚ちゃんの言うところの、お互いの気持ちをぶつけ合う……ってやつですかね。えへへ」
不揃いの前髪をいじりながら、照れたような素振りを見せるその顔は、中学生というよりは小学生みたいだ。
だけど、子供っぽさはなく、むしろ大人びてさえ見える。ひどく矛盾したことを言っているが、こう表現するほかない。不思議だ。
白樺さんと一緒にいると、どこか不思議な世界に迷い込んだみたいになる。白樺さんのつくるこの世界は、居心地が悪いどころか、むしろ安らぎを感じる。
家族にはない。友人にもない。この独特の距離感は初めてだ。
「うち、今から話してきます! 今日は本当にありがとうございました!」
静かに席を立つと、深々とお礼をし、颯爽と店を出ようとする。しかし出る間際、白樺さんは振り向きざまに、僕にこんなことを言った。
「白樺さんじゃなくて、銀、て呼んで下さいね! それじゃあ!」
どうやら上手くいったようだ。これにて僕の任務は終了か。短いようで長かったな。
残された僕は、ほとんど手を付けられることのなかったケーキを見つめる。そうして僕は、こう思うのであった。
妹の友達と親しくなるのも悪くない、ってな。
後日談。その日、白樺さん改め銀との話を終えた僕は、琴乃さんと約束した通り、無給労働をきちんと行った。
これできっと妹たちの喧嘩も収拾がつく、そう思えたからかどうかは分からないが、自然と仕事は頑張れた。
ただ、一つ気になったのは四条さんと琴乃さんの視線というか態度というか……。
僕をレズだと思い込んでいる四条さんと、またまた別の勘違いをしている琴乃さん。どうにもこの二人の誤解を解ける日がくるのは遠そうだ。