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壱之章 路地裏の一匹狼―壱

 最初に申し上げていた、「壱之章 路地裏の一匹狼―壱」をお送りいたします。


「……は?」

 事の始まりは途轍もなく唐突だった。

 書類を捲る手を止め、言われた言葉に間抜けな声を発したのは、限りなく白に近い金の髪を持った十代半ばの少女だ。北域警邏部隊の証である、白地に銀の縁取りが施された制服を乱れなくきっちり着込んでいるのを見れば、彼女の性格が少しは解るだろうか。

「……もう一度言わねばならぬかのぅ……?」

 そんな彼女の前に立っているのは、白髪に豊かな白鬚を蓄えた老人であった。

 疑問に問いで返すのも凄いが、火花散るような視線の交わし合いのほうがまだ数段上だ。両者共に〝この若造が〟――〝ほざけ、老害〟と声にならぬ罵倒の応酬を繰り広げているのだから。――視線だけで。

 バチバチと火花を散らせている二人の間に割って入ったのは、

「つまり、取り締まればいいんでしょ? 通常の、僕達の担当範囲でさ」

 腹の底で一体何を考えているのか、それさえも不明な笑みを常時浮かべている十代後半の青年である。色素が抜けて灰色になりかけている、短く整えられた黒髪が特徴といえば特徴だろうか。

「うむ、まぁ……範囲内と言わず、北域全体を取り締まって貰ってもいいのだがのぅ…」

 そりゃ高望みし過ぎだよ。と零す青年はさておき。

「……ぇー……。取り締まるったって、具体的に何を――?」

 代理筆記で疲れた片腕を振りながら、文句なのか質問なのかよく解らない言葉を発す十代前半の少女。団栗のような真ん丸い翡翠色の瞳と、まだまだ幼さを残す顔立ち。どう見ても実年齢より低く見られてしまうのが悩みの種だとか。

「そうさのぅ、……浮浪者や乞食が主じゃの。……何じゃ、其の顔は」

 あっさりと言い放った老人の言葉に、間抜けな顔を晒すのは翡翠色の瞳の少女だ。白金の髪の少女はというと、言われた言葉に瞳を細めている。

「……あのさぁ…、彼らは住む家がないからああしているんであって、態々其処を追い出す必要はないと思うんだけど……」

 そりゃ、住む家提供してやるんだったら、素直に退いてくれるだろうけどさ、と続く青年の言葉を無視して、老人は白金の少女へという。

「……受けてくれますかのぅ?」

 沈黙したまま、作業すらも止めて、言われた少女は思考していた。どうすればいいのか、否、どう選べば最善の選択と成り得るのか。


 北域――俗称〝ネルトリヒ・ヴァント〟は、一年の殆んどを雪に覆われた場所だ。

 イザリア神聖帝国内では一番冬が長い地域。故に、自主警邏部隊の面々は、それを生かした特性を持っている。

 ――が、極寒の大地に植物は育てにくく、それ故年々餓死者は増えていく一方。救う手立ては、乞食や浮浪者を排除して少しでも食い扶持を稼いでいくという手段一つ。他の地域から輸入してくる食物は、殆んどが金を持つ家庭に売られ、浮浪者達には届かない。

 だが――だからと言って、彼らを排除するという決断は、してはならないもののような気もする。

 何故か。

 己達がそうなった時、必ず彼らを排除した、その報いを受けねばならなくなるからだ。


「……、ケストナー、モニカ、如何思う?」


 判断を、仲間達に仰ぐ。最良の選択は出来ないかもしれないけれど、最悪の事態だけは避けられるかも知れないと――思いながら。


 漸く本文に入ったっていう感じですね。

 進むにつれて、彼らがどんな道を選ぶのか――其れはまだ未定ですが。

 拙い文章ですが――楽しんでくだされば、幸いです。

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