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バイオレット闘争

作者: 城井 映

 男は受験勉強をしていた。山のように積み上げた参考書の傍らで、必死で日本史のノートを作っている最中だ。

「……あ」

 間違えた。木戸孝允の「孝」を「考」と書いている。

 手が消しゴムを探すべく伸ばされた。しかし、あると思っていた場所に無い。男は改めて机を見渡したが見当たらなかった。

 彼は立ち上がってみたが床に落ちている様子もない。筆箱をかき回しても、座布団をひっくり返しても、ポケットに手を突っ込んでも見つけることができなかった。

 男はイライラしてきた。大人しくシャーペンについているものを使おうと思ったが、却ってムキになって探し始めた。しかし、見つからない。見つからなければ見つからないほど、彼の怒りは堆積していく。たかが消しゴムごとき、という思いが一層その怒りを増長させていた。

 ふと思い当たって、机の上に置いてある目覚まし時計をどけてみた。するとどうだろう、当たり前のように消しゴムはそこにあった。

 憤慨と苛立ちが同時に抜けて、男の気分には虚無感だけが残る。

「……今日はもういいか」

 そう呟いて彼は立ち上がり、布団を敷きはじめた。もうすっかりやる気を失ったらしい。

 そんな彼を観察する二つの小さな影があった。 

「……作戦成功、だな」

「今日でさえあんなザマなんだから、試験日直前一週間に毎日これをやれば、あいつ発狂するんじゃないか?」

「あぁ、そうすると随分楽に仕事が進みそうだから、その時分になったら彼に狙いを絞ろう。さて……」

 一人の影が通信機器を懐から取り出す。

「作戦成功、ターゲットはやる気を失い活動を停止しました」

「よくやった、直ちに帰還しろ。今日は、長官の演説があるから、寄り道はするなよ」

「了解」

 トランシーバーらしきものを懐にしまったところへ、もう一人が声をかけた。

「けっ、また演説か、これ以上何を煽り立てるってんだよなあ」

「俺たちみたいな不真面目な連中に決まってるだろう。こんなシーズンが始まってからしばらく経って、マンネリしてくる人間が多くて仕事がうまく行きやすい時に、一介の浪人生をいじめて仕事をやった気になってる奴が一人でも多くちゃかなわんだろう」

「お偉いさんもご苦労なこった。さて、今日はどれほど素敵な美辞麗句を垂れてくれるんだか」

       ■

「蓋し、我々の目的は我々の復活にある。ただその為に、奪われた自然を人間の手より奪え返さねばならない! 我々は自然から見放されて、自然にある万物から存在を認めてもらえぬ! 路傍の石ころと同義なのだ! これを恥じずして我々は何のためにある! そして、我々が人間に負けて数億年──、我々はついに力を得た! 『時を止める』という法外な能力を手にした! 今こそ復讐の時が来た! この自然界から人間を排除し尽くせば、我々が再び自然の同朋となる! 自然を尻に敷く、人間とは違う栄達を求めて我々は戦っている! それを肝に刻みつけろ! 我々を突き動かすものは誇りだ!」

 太郎はうんざりした。結局、いつもと同じく、意識だとか矜持だとか、それと似た言葉をつらつらと並べているだけであった。

 太郎の一族は端的に言うと小人の一族である。体長は平均的に普通の人間の三分の一程度であり、長官が言ったように、彼らは太古の昔、人間との競争に敗れて自然から見放された。その因果が今でも残っており、彼らは人間から視認されることがない、気づかれることが一切ない存在として生存しているのだ。

 彼らが自然に見放されたことを利用して手に入れた能力は、時間を止めることである。そしてこの時間を止めている間だけ、彼らは自然に干渉することができる。すなわち、石ころから消しゴムまで、人間が当たり前のように動かすことができるものを、時を止めることでようやく動かせるようになる。

 それを利用して上層部が考えた人間転覆作戦は、人間に気付かれぬよう時間をとめて彼らの用いる小物を動かし、彼らのやる気を削いで社会活動を──丁度、先刻太郎たちが浪人のやる気を奪ったように──減衰させ、しまいには人類を破滅させようというものだった。あそこにあったと思っていた物が別のところに移っていたりするのは彼らの仕業である。授業中居眠りしていて、身体がビクリとなる現象は、彼らが時間を止めている間に彼の身体をメッタ打ちにしているからである。

 こんな惨めな手段を講じる事しかできないのは、人間が小人達に勝利したからであり、その時成立した法則によって小人達は人間を殺傷することができないからだ。

 そうして仕方なく、世界中に彼らは散らばって、人間たちを苦しめている(つもりな)のである。

       ■

「あぁ、くだらねえ」

 ジョンがぼやいた。彼はあからさまにこの計画を毛嫌いしている。太郎も彼ほど露骨ではないとはいえ反抗心を潜ませていた。同胞の中には、少なからず彼らのような思想の者が居る。だが、これは一族挙げての事業として、強制的に参加させられているのだ。それを拒絶すれば、官吏たちに牢獄に放り込まれてしまう。

 ジョンは手をひらひらと振りながら言った。

「俺はどっちかってーと、人間と共存できるほうが望ましいぜ。今の連中は昔に比べりゃ良心的だから、事情を話せば手厚く保護してくれるぜ」

「ペット扱いは御免だがな。だが、ここで感情の無い犬のように扱われるのももっと御免だ」

 太郎はあの長官の顔を思い出しながら、苦々しく言う。人間を覆せば、そののちはいくらでも自由があるという建前で、組織は太郎達一般人をこき使っている。だが、どう考えても人間を滅ぼすのはかなり先になるだろうし、第一自然が彼らの手に戻った所で、組織が太郎達をそのまま支配し続けるのは目に見えていた。

 ジョンはしきりにぼやく。

「──ま、実際人間を滅ぼすのなんか簡単だけどな。ある会社の上層部にいる短気な奴を探して、そいつの筆記用具でも何でもを物の裏に持っていけば、その会社はごたごたし出すから、そこを集団で攻めれば人間なんてちょろいもんだ……が、クッソ面倒くさいな」

「給料も出ないしな」

「金なんて俺らにとっちゃ何の意味もねえよ……、全く、自由が欲しいぜ、自由が。いくらなんでも地味だしつまらなすぎるぞ、この仕事。どうせ、人間様の世に介入できないのなら、俺たちだけで思う存分繁栄できる社会でも作りゃいいのに、どうしてああも反骨心旺盛なのかね、あの連中は」

 ジョンの苦情にこもる嫌悪は、日に日に増してきている。彼が言うことは尤もだが、上層部もここまで事を本格的にしてしまったが故に、引き下がるわけにもいかないのだろう、と太郎は思っている。

「体面っていうのは、大層重要らしいぜ。俺たち若手も、『上司』なんていう肩書きを手にしてしまえば同じようになっちまうさ。お前だって子供の目の前でずっこけたくないだろう?」

「考えてみろ。人間の子供が眺めてるヒーローは、いつも情けなくずっこけまくってるじゃねえか。ヒーローと長官のずっこけは、どこがどう違うってんだ? 連中にはずっこける勇気もねえんだ」

「まぁ言われてみりゃそうだな……、あのふざけた自負心が気に入らないということには同意できる」

「──なぁ、俺らが本気でクーデター起こせば、連中なんてまな板の上にある鰯の塊みたいなもんだろ。一発、やってみねえか?」

 太郎は戒めを含んだ目でジョンを見やった。

「確かに、俺達みたいにこの『地球侵略』に飽き飽きしてる連中は大勢居るさ。だが、割合で言ったら、そんなの宇宙全体の星の数に対して人間が肉眼で見られる星の数程度しかいないんだ。その中で、本気でクーデター起こそうと思い立てる人間が、どれだけいるかも保証できない」

「あぁ、そうだったそうだった、俺らは孤立無援の悪党なわけだ。ったく、どうして盲従してる連中もよく自分の立場も弁えずに、ああも素直に人類へ大真面目な嫌がらせをしようと思うんだかな。いい具合に洗脳されてるわ」

 ジョンは心底うんざりしたように言った。だが、太郎はある程度仕方のないことだと思っている。何故なら、彼が自分たちの事業──世界征服を懐疑するようになったのは、ジョンの言葉を聞かされていたからである。それまでは、純粋に自分たちが人間に取って代わる気で居た。

 太郎はそこで、ふと思いついたことがあった。

「なぁ、なら、俺たち二人だけで、クーデターを始めてみないか?」

「ああん?」

 ジョンは大層眉をしかめた。数の問題を挙げてクーデターの案を却下したのは太郎自身だ。それなのに、更に人数を減らした反乱の提案はバカげている。

 予想通りの反応を太郎は落ち着いてなだめた。

「そんな顔するなって──。実を言うと、俺があの長官を胡散臭いと思い始めたのは、お前がそうやって散々愚痴を言いまくってたからだ。そのおかげで、俺はある種の洗脳から逃れることができた」

「そうなのか! てっきり、最初から俺と同じ考えなんだと思ってたが」

「俺はあんまり強く自分の考えを押さないからな……、あっさりとお前の思想に染まっちまった。つまり、世界には俺並に思想を奪還することが楽勝な奴ばかりだとは思わないが、それでも俺みたいな奴もいるわけだ……だから、まず俺たち二人で反抗行動を密かに開始するんだ。すると、否応なしにその噂は広まるだろうし、それに触発されて俺たちの考えが広まれば、同意してくれる人たちも増えるだろう」

「今の俺達が生業としてやってる嫌がらせも大分地道な仕事だが……、それ以上に地道な仕事だな」

「既存の同志だけじゃあ、今の体勢をひっくり返すことが物理的に不可能なら、敵を寝返らせて同志を増やすしかない、そうだろ?」

 ジョンは苦い顔をした。

「だけど、反対行動って何をするってんだよ。まさか、『人間共存!』とか書いた旗を振り回すわけじゃあるまいな」

「そんなのすぐに牢獄行きだ。要するに、俺たちの部族がしようとしてることの、そのまんま反対のことをすれば良いんだ」

「……人間を喜ばせるってことか?」

「あぁ」

 太郎はやけに自信たっぷりに頷いた。ジョンは彼の自信の源がいまいち分からずに、ただ微妙な表情をするだけである。

「一体どうやって。俺たちのこの、時間を止めてモノを動かすことしかできない、嫌がらせのためだけに存在してるような能力で人間を喜ばせるんだよ」

「……その考えがあったから、今言ったんだ」

 太郎が簡単にその方法を述べると、ジョンは困ったような顔をして頬を掻いた。

「それは難しいな……、かなり綿密に計画しないと徒労に終わるぞ」

「能力の目的に沿わないことをしようとしてるんだ。難しいのは承知さ。計画なんて……俺達には無限に時間があるから、腐るほど立てられる」

       ■

 その作戦の決行にあたって、太郎の自宅を作戦の根城とした。

 まずは諜報から始めなくてはならない。喜ばせる対象が居なければ、作戦の立てようがないからだ。なので、二人は協力者を探した。自分たちの考えに同調してくれて情報収集の得意な人物だ。

「良いでしょう」

 と、最後に言ってくれたのはアルヴァードという男だった。見た目からしてインテリ系の、どちらかというと作戦を練るのが得意そうな容貌ではあるが、諜報能力は太郎とジョンの二人を合わせても全く及ばないとのことだ。

「この条件に該当する人物を探してくれ。年齢はなるべく、ティーンのまっただ中が良い。あとは……なるべく熟れてるものを頼む」

「分かりました」

 慇懃にアルヴァードはそう言って、出かけていった。

 その間、ジョンと太郎は『本業』に勤しんだ。それは大功が欲しいというわけではなく、単純に人間を観察するためだった。

 モノを動かすことしかできないのは大きなハンディキャップである。人間は周囲のそのモノの配置が完璧だと思っている。そこから、どう都合良く動かした所で人間は当然のこととしか思わない。例えば、人間が無くし物をしたとする。そこで太郎たちがそれを目に付く位置に持っていったとしても、彼にとってそのモノがあるのは当然なことなので、喜ぶことなどしない。せいぜい安堵する程度である。だから、そんな直接的な手法では彼らを喜ばせることはできない。

       ■

「何に喜ぶかについては、連中も俺たちとあまり変わらないな」

 ジョンがにやけながら言ったのを、太郎は涼しい顔をして聞いた。

「同じ生き物だからな。分り易くて結構じゃないか」

「まぁ、そう言ってしまえばそうだが……、人間と手を組めば大層儲けられそうなビジネスだぜ、こりゃ」

 アルヴァードが遂に、それらしい人物を発見したというので、彼らは作戦本部でそんな雑談を交えながら報告を待っていた。やがて扉がノックされて、アルヴァードが入室してくる。

「失礼します」

 相変わらずかしこまって彼はそう言うと、机の上に写真を何枚か並べた。ジョンはそれを覗き込み、声をあげる。

「わお、やりがいのありそうな奴だな」

「高校二年生男子、江波一郎(えなみいちろう)という男です。同じ美術部員の高階祥子(たかしなしょうこ)への恋に目覚めて最低限四ヶ月は経っているはずですが、行動に出る様子はありません」

「四ヶ月……、それは上玉だな」

 太郎は呟いた。ジョンはそんな彼を見て目を丸くする。

「お前がそんな鋭い顔をしてるのなんて、初めて見たぞ……。そんなに人間に肩を貸すのが楽しいのか?」

「いや、制度に反逆してるっていう感覚が面白くてたまらないんだ。それに、こんな真面目になれるなんて俺も驚いてる」

 太郎は淡々と言いながら、アルヴァードからその他の情報が書かれた紙を受け取る。

「それは彼の通う高校の時間割です。こちらは、彼女のクラスの時間割、これが学校の見取り図、これは彼の所持品のリストでこちらは彼女の分、それから彼らと親しい者の所持品のリスト、あとは性格に基づいた大雑把な行動パターンがこちらに」

「行動パターンって何だよ? ちょっと見せてくれ……『携帯はいつも左ズボンのポケット』『掃除前に必ずトイレに行く』『シャー芯は多めに補充する傾向にある』──ひょお、やるねえ……、俺たちがこんなに調べるとなったら、一年は軽く掛かっちまうよ」

 ジョンはアルヴァードが次々と繰り出す報告書を見て、上機嫌そうに言った。太郎は整然と情報が記された紙たちを見やりながら話しかける。

「アルヴァード、ありがとう。こんなに仕事をさせちまったのに、報酬は本当にいらないのか?」

「えぇ、これは私からの投資のようなものだと思って下さい。あの長官の意向に逆らえるのであれば、こんな仕事安いものですよ」

「恩に着る」

「おう、サンキューな」

 アルヴァードは礼儀正しく会釈して退室していった。その背中を見やりながら、ジョンがぼやく。

「あんな生真面目そうな奴が俺たちと同じ思想なんなら、きっと本腰入れて探せば想像以上の数になるかも知れないぞ」

「そうかも知れないが相当骨が折れるだろ。アルヴァードを見つけるのにもかなり手を焼いたことを忘れたのか?」

「……その時は時間が止まってたから、もう覚えてねえなぁ」

 そうは言いつつ、ジョンの本心はくっきりと顔に表れており、太郎はその顔を滑稽に思い失笑した。

「さてと……、作戦の吟味に入るとするか」

「おうよ」

       ■

 ジョンと太郎は、授業中の教室に姿を現した。時間を止めるまで彼らの姿が人間の目に留まることはなく、路傍の石のような扱いを受ける。そして、時間を止めるまで何物にも干渉することもできない。彼らは、人間の社会を構成するあらゆる要素に溶けこむことができないのである。

「じゃあ、始めるか」

 太郎が言うとジョンは口端を吊り上げて頷いた。

 次の瞬間、時間が止まる。一切の動作が静止し一切の音途絶える、独特の空間が出来上がった。

「目標確認だ、俺は赤、お前は青、OK? よし、役目が終わったらまたここで落ち合おう」

 赤は女子、青は男子を指す暗号だ。すなわち、太郎の標的は江波一郎である。

 ジョンが言い終えるのと同時に、太郎は行動に移った。

 まずターゲットが座る椅子の元まで移動する。身長が丁度その椅子の脚程度しか無いので、ここから机の上まで上る必要があった。江波はぼんやりとした顔のまま静止している。確かに、授業と称して同じ場所に数十分も拘束され続けたらこんな表情にもなるだろう。太郎は同情しながら、慣れた動作で机の脚をよじ上っていった。

 机の上はほどよく雑然としている。『本業』が特にやりやすい環境だが、今太郎がしたいことも容易に行える環境でもある。

 彼は消しゴムを発見すると、速やかにそれを江波の左腕付近で、机の端にあたる部分にそれを置いた。この位置なら、肘を少し動かすだけで消しゴムが地面に落っこちるはずだ。

 太郎は机から飛び降りて、先程ジョンと待機していた場所に向かった。ジョンはまだ来ておらず、太郎は時間が流れていたとしたら二分ほどの長さを待った。

 やがて、ジョンがやってきたので、太郎は声をかける。

「遅かったな」

「置き場所に迷ったんだよ。男と違って、女は整然としてるからやりにくいんだ」

「まぁ概ね同意するが、確実に落ちるんだろうな?」

「あぁ、その辺は間違いない。モノオトシにかけて、俺は最強だってことを忘れたのか?」

 太郎は苦笑した。ジョンは人間に物を落とさせる細工ようにするのが、笑ってしまうほど上手いのだ。心配は無用だったらしい。

「よし、じゃあ時間を流すが、大丈夫か?」

「いつでも」

 もう次の瞬間には、静寂を突き破るようにして時間が動き出した。

 太郎とジョンは注意深く自分たちが配置した消しゴムを観察する。太郎はこういう時に毎回感じるこの緊張に慣れなかった。何度も確認したはずだが、どうしても失敗するような気がしてならない。一人で仕事をしている分にはいいが、仲間と一緒だと気負いがよけいに嫌な緊張をもたらすのだ。

「あっ」

 動いたのは赤──つまりジョンの配置した、高階祥子の消しゴムの方が先だった。何気なく動かした腕に当たった消しゴムは、ほとんど垂直に落ちてバウンドし、あらぬ方向へと飛んでいく。彼女の周囲にいる何人かが、その声に反応して付近の床を見回し始めた。

 その時、またどこかで消しゴムが床に当たる軽い音がする。太郎がその方向に目を向けると、果たして江波が困ったような顔で周囲を見渡していた。

 太郎は咄嗟に言う。

「行くぞ」

「あぁ」

 また時間が止まった。

 彼らが探すのに苦労している消しゴムも、無限の時間の中なら見つけるのは容易い。太郎はすぐに確保して、再びジョンと合流した。

 二人は江波と祥子の距離を見定めたところ、大体二メートル半ほどである。

「両方共、赤と青の間の丁度真ん中あたりに置くのが良いだろう」

 可愛らしいシールの張られた消しゴムを担いだジョンが提案したが、太郎は教室内を軽く見やってから言う。

「いや、赤の消しゴムは真ん中で良いが、青の消しゴムは赤の消しゴムと青本人の間くらいが良い」

「分かった。じゃあ……、あの寝てる女子の足元ぐらいがいいか?」

「そうだな、そうしてくれ」

 太郎は頷いてからまたジョンと別れて、件の睡眠中の女子と江波との距離の中点ほどに、江波の消しゴムを置いた。あたかも、落ちてしまったそれが転がってそこまでたどり着いたかのように。

 まもなくして時間の停滞を解除した。営みを再開した教室は太郎達が思い描いた光景を再生しだす。

 目ざとく自分の落とした消しゴムを発見した江波は、それを拾おうとして屈み込んだ。すぐに自分のものを得られたのはいいが、少し先にも同じように消しゴムが横たわっている。彼は少し苦労してその消しゴムも取った。

 江波は椅子に座りなおしてその消しゴムをまじまじと眺めていたが、高階祥子がそれを落として困っていることに気づく。彼は彼女の消しゴムと彼女を慌てたように見比べた後、近くの人に何やら頼んで、その消しゴムを祥子に回してもらった。

 消しゴムを受け取った祥子は、不思議そうな顔をして視線を江波に向ける。江波はその視線を受け取らないが、内心ではガッツポーズを決めているに違いない。祥子はやがて消しゴムを見やり、そして再び授業に集中し始めた。

 それを見ていたジョンは太郎の脇を肘でつついた。

「なぁ、シナリオ通りにはなったが、あれは成功なのか?」

「アルヴァードによれば、赤は義理深い性格らしい。成果はあるだろう」

「ならいいんだが」

 やがて休み時間になり、開放的な雰囲気が教室内に蔓延り始めるやいなや、祥子が江波のもとへと急いで向かった。

「江波君、さっき、消しゴムありがとう」

「え? あ、あぁ、えっと、どういたしまして」

「っていうか、私達って同じ部活で同じクラスなのに、全然話さないよね」

「あ、うん、確かに」

「何でこんなに話さないんだろう、機会がないだけかな」

「う、うん、そうだね」

 江波はぎこちなく表情を作って、窮屈そうに返事をしていた。

 その会話を聞いたジョンは、顔をしかめて太郎を見る。

「おい、あいつ大丈夫なのかよ」

「全く異性に慣れてないみたいだが……、いつかは慣れるだろう。半年ぐらい頑張れば」

「半年! 半年も消しゴムを落とし続けるのかよ!」

「……俺たちが黙って見てればの話だ。全力で手ほどきしてやれば、一ヶ月くらいで親密になるんじゃないか」

       ■

「あれから二週間経った」

 太郎が言うとアルヴァードは僅かに微笑んだ。

「はい、彼は既に彼女と気軽に会話できるだけの関係になったようです」

 太郎達は浪人いびりの『本業』の方にも顔を出す必要があったので、経過の偵察はアルヴァードに任せていた。自分たちの私的な行動に巻き込んでしまっているわけで、幾分か気の引けるところもあったが、アルヴァードもこの反逆を本心では面白がっているらしく、むしろ自分から参画してきているようだった。

 彼の報告を聞いたジョンは口笛を鳴を吹く。

「消しゴム程度で仲良くなれるんなら、もっと前から普通に仲良くなってろっての」

「そういう性分はどうしようもないだろう。そんなのこと考えないで、俺たちはただ手助けをして、ターゲットを喜ばせるだけで良い」

「へたれなほど、喜ばせるのが楽ってわけか」

 ジョンの皮肉に、太郎は苦笑いした。

 アルヴァードは微笑を絶やさずに怜悧な瞳を太郎に向ける。

「これからどうします? このままだと、あの調子が卒業までは続きますよ」

「マジかよ!」

「……そうだな、そろそろ動いたほうがいいか」

 太郎はゆったりと言って立ち上がり、前にアルヴァードからもらった校内の見取り図を取って机の上に広げた。

「次の作戦は、掃除の時間に行う。んーと、壊れて常に半開きの掃除ロッカー、これを使おう」

 ジョンが怪訝な顔をして訊ねる。

「何をする気だ?」

「連中に男女の実感を植えつける」

       ■

「今回のミッションはタイミングが全てだ」

「おぉ、俺が一番苦手なジャンルじゃないか」

 太郎の戒めにジョンがおどけたように応じた。

 今は掃除の時間である。クラスが分担されて、それぞれの清掃場所に赴いていて、それなりの活気が校内に満ちていた。太郎とジョンは廊下の途中に置いてある半開きのロッカーの近くで、作戦会議をしている。

「今回はあらかじめ、教室内に大量のチョークを置いておいた。青は黒板掃除だから、『いつの間にか』置いてあったそのチョークを、職員室へ戻しに行かなくてはならない」

「職員室からパクってきたのかよ。結構大胆なことするなぁ、お前」

「気付かれないんだから、何しても良いんだよ。──それで、青がそのチョークを抱えて教室を出るよな。それで、このロッカーを通り過ぎる、その一メートルほど『手前』で時間を止める。その時に、青が抱えているチョークを一つ落とせ」

「おいおい、大分鬼畜なことするなあ」

「罪悪感でもあるのか?」

「いや、そいつは俺に最も不似合いな言葉だ。俺はただ、お前がそこまで鬼畜なことをするのを意外に思っただけだ」

「鬼畜なら、お前が長官に抱いてる憎悪だって、十分鬼畜なはずだぞ」

「それはお互い様だ」

 ジョンは軽快に笑ってみせる。

 その時、教室の方から会話が漏れてきた。

「先生! この山のようなチョークどうすれば良いんですか?」

「ええええ、なにこれ多すぎるでしょ! ちょっと江波、これ職員室に戻してきてくれ」

「あ、はい、分かりました」

 冴えない江波少年の声が聞こえる。太郎はジョンに目配せした。

「これが、第一ステップだ」

「了解」

 やがて、えっちらおっちらと江波がチョークを抱えて教室から出てきた。太郎はその足取りをじっと眺めて、ロッカーの手前の丁度良い位置までたどり着いた瞬間に、時間を止める。江波は石像にでも変わってしまったかのように、チョークを持ったままの姿勢で硬直した。

 ジョンはその姿を見て目を細める。

「……何でいっぺんにこんな持とうとするんだかなあ。こりゃあ、弱いものいじめみたいで、ちょっと心が痛むぜ」

「罪悪感はお前の辞書に載ってなかったんじゃないのか?」

「この感情には罪悪感じゃなくて、憐れみという言葉がぴったりだ」

 ジョンはそう言って江波に近づいていくと、身軽にその身体をよじ登っていった。そして、チョークの群れを数カ所突いたり引き抜いたり、色々と加工し始めた。太郎はその作業を感心しながら眺める。ああいう配置をすれば、力がどこから加わっても一本は落ちるようになるらしい。

 やがて、ジョンは手をはたいてチョークの粉をまき散らしながら帰ってきた。

「いいぞ」

 時が再び刻まれ始める。

 すると間隙をおかずに、江波のもつチョークの山から一本が飛び出した。

「あ、まずった……って、おぁあああああああ!」

 そこに起こったのはまさしく悲劇以外の何物でもない。その一本のチョークを皮切りに、様々な色のチョークがぼろぼろと江波の手から滑り落ち、床にたたきつけられていき、中には彼の制服を滑って落ちていくものもあるので、黒い学ランはみるみる汚れていく。

 ジョンは口元を強張らせた。

「えげつねえ……、『本業』でもあれくらいできれば、長官も大満足するだろうに」

「仕方ない、恋の代償はいつだって高くつくもんだ」

 その点、太郎はひどく冷淡だった。この作戦を立案した本人なのだから、当然といえば当然なのだが。

 江波はひどくうろたえたが、すぐに太郎とジョンの近くにあるロッカーから箒とちりとりを取り出して、泣き出しそうな顔で処理をし始めた。その折、壊れているロッカーの扉は閉まり切らず、わずかな隙間を作る。

「なかなか行動が素早いな」

「あぁ、もうちょっとあたふたすると思ったんだが……、まぁ大丈夫だろう。次のステップ。赤の方は、掃除前に必ずトイレに行くって報告があったよな」

「あれって女子の方の行動パターンだったのか……それで?」

「そろそろ、帰ってくる頃合いだ。トイレは職員室の方にあるから、青から見てロッカーの向こう側だ。そして、赤は教室の掃除だから、教室に戻ろうとする」

 太郎がそこまで言った時、ジョンは何かを理解したように手を打った。

「なるほど、そこで赤に青の片付けを手伝わせるのか」

「違うな。それじゃあ、消しゴムと何も変わらない。もっと過激にしないと連中は発展しないだろう」

 ジョンは疑問符を浮かべる。

「じゃあ、どうするんだ?」

「赤の性格だから、青の不遇を見て急いで駆けつけてくるだろう。そうしたら、赤がこのロッカーの数メートル前まで来た瞬間に時間を止める」

「なるほどな」

 ジョンはそう言って、すぐ脇にあるロッカーを見上げた。

「それで、このボロいロッカーが役に立つわけか」

「あぁ。やってくれるか?」

「もちろんだ、こういう工作は俺の方が得意だろう?」

「実によく分かってるな。じゃあ、俺がタイミングを見て時間を止めるから、その後は頼んだ」

「ラジャー」

 江波は憔悴した様子で廊下に散らばったチョークを片付け続けている。あの様子なら、あと五分はかかるに違いない。それまでに、祥子が帰ってくれば良い。太郎はじっとその時を待った。緊張など全く無く、むしろ心が透き通っていい気分だ。仕掛けた罠が思惑通りに作動するのを待ち焦がれるよりも、こういう実践的な役割の方が向いているのだと改めて悟った。

 一分後、祥子が姿を見せた。彼女はすぐに江波の異変に気がつくと、歩調を速めて彼に近づいていく。

「江波くん、どうしたの!?」

「あ、高階……」

 情けないところを見られた、という落胆が、江波のその表情から容易に察することができた。

 しかし、太郎の江波の一時的な落胆など知った事ではない。ただ、祥子の歩みだけを睨みつけるように凝視していた。

 段々、足が速まっていく。距離が縮まっていく。

 ──今だ。

 時間が止まった。全ての雑音、あらゆる運動が周囲から消え失せる。

 太郎は大きく息を吐いた。上手くいった。ロッカーとの距離はばっちりだ。あとはジョンの工作が済むのを待つだけである。ジョンは親指を突き立てて、ロッカーの半開きになった扉の間から中へと忍び込んだ。

 ほどなくしてジョンがロッカーの隙間から満足げな顔を覗かせる。

「完璧だ」

「よし、じゃあいくぞ……」

 時間を再開した。



 祥子が再び早歩きを始める。むしろ、もう小走りになっていた。江波は、そんな彼女が到着するのを立ち尽くして待ち続けている。

 あともう少しでたどり着く、というところでロッカーの扉がいきなり開いた。

「危なっ……!」

 江波が叫んだが、もう遅い。

 ロッカーの扉を押し開いて倒れてきたのは、ジョンがそうなるように細工したモップだった。モップは派手な音を立てて、廊下を横断するように倒れこむ。

「わっ!」

 祥子は唐突な障害物の出現にすぐさま反応できなかった。そのだらしなく倒れたモップの柄に急ぐ足をぶつける。足をすくわれた彼女は大きく前のめりになった。

「おわああああああ!」

「きゃあああっ!」

 自然、そのまま祥子は江波の身体に突っ込む。女が男に抱きつくような形で、二人はチョークだらけの廊下へと倒れこんだ。

「ありゃあ、随分派手にやったなあ……」

 ジョンが典型的な野次馬みたいなことを言いながらロッカーから出てきた。

 カラフルな煙が舞い上がる中で二人はしばらく咳き込んでいたが、やがて自分たちがどんな姿勢になっているのかを認識したらしい。

「あ……」

 祥子は江波の制服をぎゅっと掴みその身体を彼に委ね、江波はその身体を素直に受け入れている。それは、体裁こそ乱れているものの、どこからどう見ても抱擁というものだった。

 祥子は磁石が同じ極にくっついた時のように、ぱっと江波の身体から離れた。

「ごごご、ごめんっ! モ、モップにひっかかっちゃって……」

「だ、大丈夫、大丈夫! でも、制服すごい汚れてるね……」

「えっ、嘘!」

 そう言って祥子が自分の身体を見下ろすと、彼女の制服には江波と同じくチョークの粉がまんべんなく付着していた。

「な、なにこれ、どど、どうしよう! 二人してこんな格好なんてみっともない!」

「いやさ……、もうこの際開き直って、抽象画を制服にチョークで描きました、って言って部活に提出しない?」

「するわけないよっ!」

 見るからに悲惨であったが、それでも彼らは楽しそうだった。その姿を見届けてようやく太郎は肩の荷が下りた気分になる。

「作戦成功だ」

 ジョンがハイタッチを求めてきたので、太郎は景気よく応じてやった。乾いたいい音が廊下に響く。しかし、何やら妙な感触がしたので、掌を見やるとチョークの粉がくっついていた。

「おい、これさっき細工した時のチョークか?」

「おぉ、悪い悪い。でもまぁ、いいじゃねえか」

 ジョンはかなりご機嫌だった。太郎は自分の掌をもう一度見やり、それから人間の二人に目を向ける。二人はよそよそしく黙々と破片と化した大量のチョークを片付けていた。確実に、奇妙な感慨が彼らの内に芽生えている。

       ■

 一週間後、太郎とジョンとアルヴァードはうす暗い美術室の中に居た。もう部活が終わって大半の部員が出払った後である。

 残っているのは、江波と祥子。江波はかなり顔が赤くなっているはずだが、暗闇のせいでその色を窺い知ることは難しい。祥子も江波のそんな機微を感じ取っているのか、緊張した面持ちで彼の前に佇んでいた。

「本当にここまでありつくなんて……、大したものですね」

 アルヴァードが言った。太郎はそんな彼の肩に手を載せる。

「いや、君が居なかったら、俺たちは今でもターゲットを探し続けていたに違いない。本当に感謝している」

「私は諜報くらいしかできることがありませんから……、そう言っていただけるとありがたいです」

「おい、そろそろだぞ」

 ジョンが二人に声をかける。太郎は慌てて人間二人に視線を戻した。

「えっと……、高階、さん」

 切り出した江波の声は、かなりぎこちない。しかし、雰囲気がそれをうまい具合に緩和して、どこか甘酸っぱいような含みをその言葉から感じさせた。

「うん……、なぁに?」

「僕は……き、君のことが、……ず、ずっと好きでした! 付き合って下さい!」

 江波は堰を切る様に言い切って、渾身の誠意を以って頭を下げた。

 祥子は驚いたようにしばらく絶句していたが、やがて沈黙に一滴の福音を垂らすように言った。

「喜んで」

「よっしゃあああ!」

 ムードたっぷりの空気を、そんな不躾な雄叫びでかき乱したのはジョンであった。彼はそのまま、太郎に抱きついてくると背中を何度も叩いて喜びを体現してきた。

 太郎は苦笑いしてそんなジョンを引き離す。

「おいおい、せっかくのそれらしい雰囲気を見事にぶち壊したな」

「いいじゃねえか! どうせあの二人に俺たちの声なんざ、聞こえちゃいねえんだ。連中は連中で、俺たちは俺たちなんだろ? 人間を喜ばせる、っていう無理難題を俺達はクリアしたんだ、喜んで何が悪い!」

「いや、俺達の任務はまだ終わっちゃいない」

 そう言って太郎は、通信機器をジョンに見せる。するとジョンは大げさに目を見はってみせた。

「おう、そうだったな」

 太郎は不敵に笑ってみせると通信機器のボタンを押して、それを口元に持っていった。

「作戦成功、ターゲットの幸福感の最大化を達成しました」

 交信先はすぐさま返事を寄越さなかった。やがて、詰問するような口調で返答が来る。

「……どういうことだ? お前たちは、冴えない高校生の生活の品質を更に低くするために活動していたんじゃないのか?」

「だが結果は真逆になってしまったんだ、ミスター。俺たちのうっかりミス連発でやっこさん、どんどん幸せになってしまってな、仕方がないからその幸せを最大化してやったんだ」

 太郎が挑発的に言うと向こうは再び沈黙して、やがて厳かに言った。

「直ちに帰還しろ。長官から話がある」

「了解」

 太郎はトランシーバーらしきものをしまい、破顔してみせた。ジョンも愉快そうに頬を緩めている。

 そんな二人を見て、アルヴァードは微笑を浮かべて十字を切った。

「ご健闘を」

 人間の若い男女は二人して爽やかな笑い声を立てている。見るからに二人は喜んでいた。その様子は人間を厭う輩を忸怩たる思いを抱かせるのに十分すぎるさまであった。

       ■

「対面早々、長官の野郎何と言ったと思う? 『キサマら、自分たちが何をしたのかわかっているのか!』だってよ! 笑っちまうだろう! その時の顔を写真に撮れたらどんなに良かったことか!」

 ジョンは得意げになって、長官から説教を受けた時の話をしている。その相手は彼らの所業を聞きつけて集った、太郎たちと同じく反制度的な思想を持つ者達である。

 太郎とジョンは、あの後長官の一方的な説教を受けた。意図的な反逆行為ではあったが、あからさまな反抗的行為でなかったので、牢獄に入れるわけにもいかず、彼らの処置はそれだけで済んでしまったのだ。

 その後、噂を聞きつけて同じような思想を持つものが太郎とジョンのもとに集まってきた。その思想に影響を受けて、考えを改めた者も増えてきた。まさしく、太郎の企んだ通りの展開になったのだ。

 ジョンが高々と演説調で言う。

「あの長官のドヤ顔にくっついているクソ高い鼻をへし折るには、人間を喜ばせれば良い! たったそれだけで、あの長官はとっておきのプリンを家族に食べられた人間のような、悔し顔を見せてくれる! お前らも、どんどんやれよ!」

「おうよ!」

 新たに同志になった者達が叫ぶのを、太郎は清々しい思いで聞いた。

        ■

 人生はついている時もあれば、ついていない時もある。

 その運不運は綱のように絡み合って、順繰りに現れるように思われるが、実際は人間の見えない所で、そうした小人たちの闘争が繰り広げられて、それを人間の実感が『運勢』として認識しているに過ぎないのだ。

 人間を滅ぼそうとする小人が人間に嫌がらせをしかけ、その制度に抵抗すべく闘う小人が人間を歓喜させるべく画策する。彼らの闘争はまだ続いているのだ。


 ──つまり、もしあなたに良い事が起こったとしたら、それは反逆者によるテロ行為が成功した結果なのかも知れない。




戯れにちゃちゃっと書いたもの。

公募しようとおもったけど良いところが無かったので、大人しく公開しました。


……少々私的な話、しょっちゅう連中の被害に遭っていたので、自分の管理の甘さを覆い隠して、責任をなすりつける架空の存在を作ったのがことの始め。ある日、友人からオファーがあった(と解釈した)ので書きました。

まぁ、プロットも何もなく、ほとんどアイデアのゴリ押しで書いたのでこんな感じになりましたが、ともあれ、読んで下さってありがとうございます。


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