僕を痛ます、リフレイン
いまでも、夢をみる。
けど、僕にはどうあがいても手に入らないもの。
口に出したら、そんな事?っと、わらわれるかもしれない。
でも、その場面にでくわすたびに、
僕は、うらやましさで、心が沈んでしまいそうになる。
大学三年の
冬休み中にはいっても、
就活する気もなく、レジバイト三昧の日々がはじまった。
明治道り沿いにある、バイト先は、深夜一時までやっていて、
会社帰りのサラリーマンや、OLさんで夜は混んでいる。
クリスマスが過ぎてからは、
年末年始のお飾りを買い求める、お客様で、今日もごったがえしていた。
七時から、一時間の休憩をもらい、
バックヤードにむかって、スーパーの店内を歩いていると、
小学生くらいの女の子が、お父さんとお母さんに連れられているところに出くわした。
「ユミちゃん、だめ。これから、お夕飯なんだから、お菓子はいりません」
「やだぁ~、これ欲しい。」
聞こえた方を見ると、スナック菓子が置いてあるところで、
小学生くらいの女の子はお母さんにおねだりしている最中だった。
「母さん、買ってやってもいいんじゃないか?
明日のおやつにだったらいいだろう?なぁ、ユミ、それだったら我慢できるよな?」
後ろから、お父さんが娘のおねだりに甘い声をだしている。
「あなた、そんな事いって。明日、あなたが家にいて、ユミを見ていてくれるならいいですけどね」
ちょっと、した口論になっていたけど、
子供の事で、喧嘩できる親っているんだなぁ、と微笑ましさで心が暖かくなった。
家庭のある家族の会話を聞いていたくて、
レジ担当で、品出しなんかしなくてもいいのに、近くでとりにくくなっている品物の前出しを、僕は、やりはじめた。
「じゃ、明日、ユミと一日中一緒だね!おとうさん?」っと、
ユミちゃんは、笑みを振りまいてお菓子をカゴのなかにいれた。
『ね、おとうさんかぁ~・・・』
ぼくのおとうさんは海外勤務が多くて、
家で一緒に暮らしたのは、幼稚園くらいの時だけだ。
離婚調停中、
勤務先の国で、愛人ができてからは、もう10年も日本に帰ってきていない。
もちろん今は、離婚が成立してるから再婚しているかもしれないけれど、
そんな連絡が母さんと暮らす僕にくるはずがない。
時々、メールが送られてくるのが、唯一、僕と父親とを結ぶ接点だ。
目の前で、
幸せそうに笑顔を振りまいた少女の顔に、
ほんのりと僕の心は包まれながらも、ツキツキと過去の出来事に痛む胸を、なでた
運が悪かったのは僕、ただそれだけだ。
だから、大丈夫、大丈夫。
親に愛さてる子が、ほら、今目の前にいるじゃないか?
親の愛情に満たされている少女の暮らし。
その生活が、長く長く続いてゆきますように、とつぶやきながら、
両親に手をひかれてスーパーを出てゆく女の子を見送った。