一番最高の兄弟
「兄さん、僕が弟でよかった?」
恐らく宿屋だったのだろう。廃墟の壁際、殆ど野晒しの天井の下で肩を並べ座り込む兄弟の、弟の方が言った。
「なんでそんなことを?」
「……少し、気になったから」
暴力を振るう家族の元から逃げ出して早一ヶ月。冒険の道中で様々な出来事があった。イノシシ型のモンスターに追われる弟、トラップに引っかかり足から宙吊りにされる弟、毒キノコで意識が朦朧とし現実と夢の境目を彷徨う弟……。
今も盗賊に追われ逃げ出して、やっとこさ辿り着いた廃墟で夜を越そうとしている。
昔から出来が悪く、両親に不当な扱いを受けてきた弟は、優秀な兄が全てを捨てて一緒に家出してくれたことを気に病んでいた。けれど
「お前は世界で一番最高な弟だよ」
兄は微笑む。彼は弟が考えていることが大体分かっていた。しかし嘘を言う訳ではなく、発した言葉は紛れもなく彼の本心だった。
「僕も、僕にとって兄さんは世界で一番の兄さんだよ」
「よかった」
二人は身を寄せ合い、座ったまま一つの毛布に包まる。その内眠気がやってきた二人は、気が付くと夢の世界へと旅に出ていた。
月は沈み、やがて空が白み始め、世界はゆっくりと朝へ向かっていく。
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