嘘が上手な私
いつも嘘をついてしまう。
ご機嫌取りでも、保身でも、なんでもない時でも。
巧妙に嘘をつけてしまうから、誰かにばれたりはしていない、小さい頃からそうだった。
今日もいつものように嘘をつく、隣の席の安川さんに、
「そのヘアピン可愛いね」
と言った、心の中ではださっ!そんなのよく学校につけてこれるよなあ
と思っていた。
左足の小指がずくんと疼く、上履きには何も入っていなかった。
家に帰ってシャワーを浴びようとすると左足の小指の先が紫色に変色していた。
触ってみると感覚がない、爪の先で刺してみても、つねってみても変色した部分だけが、私の身体じゃなくなったみたい。
翌日もまた嘘をついた、前の席の子が彼氏から貰ったと話していたネックレスが羨ましくて、先生にいいつけた。
休み時間の後、その子の首からネックレスが消えていて、めそめそ泣いていた。
「田中先生酷すぎるよね、泣かないでえ私まで悲しくなっちゃう」
なんて言って慰めてみた。
めそめそ泣いているから鬱陶しかった。
また左足の小指がずくんとした。
帰宅し、靴下を脱いでみる。
左足の小指全体に紫色が広がって、全く感覚がしない。
握るとひんやりとしていた。
今日は休みの日だったから、大親友の素子と結衣と遊びに出かけた。
いつも思うけど結衣の私服のセンスは壊滅的、でも素子も何も言わないから私はいつも
「何そのネイル可愛すぎ!そのスカートもどこで買ったの?」
なんて興味も無い事を聞いてみる。
三人で寄った雑貨屋さんで結衣が
「このキーホルダー可愛くない?お揃いでつけようよ!」
と言ってきたので、心の中ではだっさ!
と思いながらも
「ほんとだ!超可愛い!お揃っちしよしよ」
って思ってもないことを言いながら、こんなのつけるの恥ずかしいわ、と考えていた。
スイーツビュッフェに行って、おなかいっぱい食べた後、今日は解散した。
帰って靴下を脱ぐと右足の小指が変色していた。
今度は小指全部に感覚がない、なんでこんなことになっているのかの、心当たりが全然なくて、軽いパニック状態になった。
念の為に何にでも効くオロナインを塗ってみた。
今日も休日、ゆっくり寝てリビングに降りていくと、パパとママがいた。
二人でどこかに出かけるようで、ママは
「ねえ、今日のメイクおかしくなあい?」
と聞いてきたので。
「めちゃくちゃ綺麗だよ!うちのママはいつも完璧」
と言いながら心の中では、
「何しても毛穴ガン開きじゃん、無駄無駄」と思っていた。
パパとママが出かけて行った後、お姉ちゃんの部屋をノックする。
「瑠奈!いる?」
「入っていいよ」
私は瑠奈に足の指のことを相談した。
スリッパを脱いで見せようとすると左足の薬指が変色していた。
瑠奈は「何これヤバくない?病院とか言った方がいいんじゃない?ママに話しなよ」
と言われたので、帰ってきたママに相談してみた。
「何これ!大変!明日病院に行きましょう」
と言われて病院に行くことになった。
病院で感覚が全然ないことを伝えて検査をしたけど、原因不明。
とにかく原因がわからない、と対処療法として薬を貰った。
「一日三、四回塗ってください、ただ効果があるかは試してみないと分かりません」
と言われた。
やぶ医者め!
ママは狼狽えていたけど、まあなんとかなるっしょ。
と言っておいた。
とりあえず帰って薬を塗り込めておく。
テープみたいなのも貼っておく。
帰ってきた瑠奈に「病院どうだった?」
と聞かれて原因がわからないことを伝えたら。
「まじで!やぶ医者じゃんね」
と怒っていた。
翌朝、登校途中のバス停で時刻表が見えないのかお婆さんが必死でそこを見ていた。
私はいらいらしていたので、お婆さんにどこに行くのか聞き
「それならこの後二時間後のバスに乗れば大丈夫ですよ!」
と爽やかに微笑んだ。
本当は後十五分でバスは来るが、嘘をついたから二時間後まで待つだろうと、心の中でほくそ笑んだ。
左足が痛い、ずくんずくんする。
靴下をトイレでこっそり脱いでみる、左足がふくらはぎの終わりあたりまで変色していた。
触ってみると氷漬けにでもしたように冷たいのに、自分の足じゃないみたいだった。
トイレから出るのも、教室に帰るのも左足に感覚がないせいで、一苦労だった。
でもそんな弱みは見せたくないし、何よりきも悪がられたくない。
今日は体育はないから、席から動かなければ安全。
休み時間にクラスの友達茉美が机に来た。
「昨日彼氏と喧嘩してさ、も既読つかないしどうしたらいいと思う?」
と聞かれたから
「向こうが謝ってきても無視しな、すぐ返事したら調子に乗ってくるよ」
と適当なことを言っておいた、私は自分の足のことで精一杯なんだよ。
帰り道道に迷って困ってる小学生に、治安の悪い道からの行き方を教えてやった。
家に帰って、ママに言う
「これ見て、もう全然感覚がないの」
右足も念の為に見ると太ももまで変色している。
「まじで何これ」
ママもおろおろしている
「薬は塗ってる?」
「塗ってるのにどんどん広がっていくよ」
とにかく明日もう一度病院に行きましょう。
その日は早く寝た、翌朝起きると布団に触れているはずの身体になんの感覚もない。
どんなに力を入れようとしても一ミリも動かせない、顔にだけ感覚がある。
眉も目も鼻も口も全部動かせる。
どんなに動かそうとしても動かなかった身体が突然動き出した、勝手に服を着替えだす、でもなんの感覚もない。
ママの声が聞こえる
「起きてる?今日は病院に行くからね?大丈夫?」
私は大きな声で助けを呼ぼうとした、けれども口から出た言葉は「大丈夫だよ」
という元気な声だった。
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