彼のイトコは私だけでいい
私には二歳年上の幼馴染でもあるイトコの男の子がいた。
小学校に上がるまで身体の弱い彼の母親の叔母さんがうちで静養していたので彼は私の家で育ったからだ。
小学校に上がる歳になった彼は叔母さんと共に都会の自宅へと戻る。
「学校が休みの時はここに遊びに来るからね」と言って。
そしてその言葉通りに彼は毎年夏休みになると海の側の私の家にやって来る。
夏休み中は毎日のように彼と一緒に海で遊んだ。
田舎暮らしの私には都会から時々ここに来るイトコの彼がどんどん大人びてかっこよく見えるようになった。
イトコの彼以上にかっこよくて優しい男の子はいない。
私はいつの間にかイトコの彼に恋をしていた。
彼のことが好きで好きで大好きで彼と共に過ごす時間は私の幸せだった。
だから毎年彼が来る夏休みが楽しみだ。
そして今年の夏休みも私の大好きなイトコの彼はやって来た。
でも今年の彼は一人ではなかった。
彼と同じぐらいの年齢の女が一緒だ。
私が「誰?」と訊くと彼は笑顔で答える。
「彼女は僕のイトコだよ。美幸は撲の母方のイトコだろ? 彼女は僕の父方のイトコの美砂子さ」
「よろしくね。美幸ちゃん。私も海に行きたいって言ったら彼が連れて来てくれたの」
美砂子は私に笑顔で挨拶してきた。
美砂子は私と同じ彼のイトコ。
違う……私はこんな女と同じ「彼のイトコ」ではない。
だってこんなに彼のことが好きで愛してるんだもん。
そんな私がこんな女と同じ「彼のイトコ」であるはずがない。
「さあ、海で遊ぼうよ。美砂子」
「うん!」
二人は水着に着替えるために家の中に入っていく。
私は側に置いてあった美砂子が持ってきた浮き輪に小さな穴を開けた。
彼と美砂子は水着に着替えて海へと遊びに行く。
そして一時間後、救急車のサイレンが鳴り響いた。
「大変だあ! 子供が溺れたぞ!」
大人たちは騒ぎ出す。
あの女が救急車で運ばれていくのを私は見ていた。
「そんな、そんな、美砂子が……」
彼は浜辺で泣き崩れた。
私はそっと彼の身体を抱き締める。
「大丈夫。私がいつまでも一緒にいてあげるから。だって私はあなたのイトコだもん。ずっとずっと一緒よ」
絶対に彼は誰にも渡さない。
「彼のイトコ」は私だけでいいの。




