第三話 新たな仲間! 炎の塔の問題児たち!
決闘から三日後。
俺は完全に回復し、ようやく本格的な学園生活をスタートさせることができた。
「火乃丸!」
「よう、烈!」
廊下を歩くたびに、あちこちから声をかけられる。決闘の噂は学園中に広まっており、俺は一躍、時の人となっていた。
「調子に乗らないでよね」
隣を歩く涼音が、呆れた声で言う。
「調子になんか乗ってねえよ。ただ、みんなが話しかけてくれるだけだ」
「はいはい」
涼音は水属性の「蒼の塔」に配属されているため、授業は別々だ。だが、昼休みや放課後は一緒に過ごすことが多い。
「そういえば、今日から本格的に炎属性の専門授業が始まるんだっけ?」
「ああ。どんな奴らがいるのか、楽しみだぜ」
「あなたと同じ問題児ばかりだったりして」
涼音の冗談に、俺は笑った。
だが、その予言は見事に的中することになる。
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炎属性専門教室――通称「紅の間」に入ると、既に何人かの生徒が集まっていた。
「おっ、噂の火乃丸烈じゃねえか!」
いきなり声をかけてきたのは、オレンジ色の髪を逆立てた、やんちゃそうな少年だった。
「俺は炎野陽太! よろしくな、烈!」
「ああ、よろしく!」
陽太は握手を求めてきた。その手は熱く、まるで炎そのもののようだ。
「貴様が、ヴィクター様を倒した平民か」
次に声をかけてきたのは、長い黒髪に赤い瞳を持つ、クールな印象の少女だった。
「私は焔院紅。炎の名門、焔院家の娘だ」
「火乃丸烈だ。よろしく」
「ふん。貴族に勝ったからといって、調子に乗らないことだ」
紅はそう言い捨てて、窓際の席に座った。なんだか、とっつきにくそうな奴だな。
「気にすんなって! 紅ちゃんは口が悪いだけで、悪い奴じゃないんだ」
陽太がフォローしてくれる。
「それより、あっちの二人も紹介するぜ!」
陽太が指さした方向には、対照的な二人がいた。
一人は、小柄で可愛らしい顔立ちの少女。ピンク色の髪をツインテールにしている。
「あ、あの! 私、火花咲っていいます! よよよ、よろしくお願いします!」
咲は緊張した様子で、ぎこちなくお辞儀をした。
「ああ、よろしくな」
「わああ! 火乃丸先輩が話しかけてくれたあ!」
咲は顔を真っ赤にして、その場で飛び跳ねた。なんだか、可愛らしい奴だ。
「先輩じゃなくて、同級生だろ?」
「え? あ、そっか! えへへ」
咲は照れくさそうに笑った。
そしてもう一人は――
「......」
教室の隅で、本を読んでいる少年がいた。銀色の髪に、どこか儚げな雰囲気を持っている。
「あいつは灰村燼。無口だけど、魔法の腕は確かだぜ」
陽太が小声で教えてくれる。
「燼、こっち来いよ! 新しい仲間だ!」
「......」
燼は本から目を離さず、小さく手を上げただけだった。
「ま、ああいう奴なんだ。気にすんな」
こうして、炎属性の同級生たちと顔合わせをした。
陽太は明るくて社交的。
紅はプライドが高くて厳しそう。
咲は人懐っこくて可愛らしい。
燼は無口でミステリアス。
個性的な面々だが、みんな炎属性の魔法使いだ。きっと、これから一緒に成長していくんだろう。
「さあ、席に着け」
その時、教室の扉が開き、一人の女性教師が入ってきた。
赤い髪をポニーテールにした、二十代後半くらいの美人だ。だが、その目は鋭く、厳しい雰囲気を漂わせている。
「私がお前たちの担当教師、炎城紗羅だ。今日から、お前たちに炎魔法の真髄を叩き込む」
紗羅先生は教壇に立ち、俺たちを一人ずつ見渡した。
「まず最初に言っておく。炎属性の魔法使いは、四大属性の中で最も制御が難しい。感情に左右されやすく、暴走しやすい。だからこそ、鍛錬が必要だ」
その言葉に、俺は身が引き締まる思いがした。
「特に、お前」
紗羅先生の視線が、俺に向けられた。
「火乃丸烈。お前の決闘は見ていた。魔力は強大だが、制御が甘い。そのままでは、いずれ自滅するぞ」
「...はい」
「だが、才能はある。しっかりと学べば、誰よりも強くなれるだろう」
紗羅先生は、そう言って微笑んだ。その笑顔は、厳しさの中にも優しさがあった。
「さて、早速だが実技訓練を行う。全員、訓練場へ移動だ」
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訓練場に到着すると、紗羅先生は五つの的を設置した。
「まずは基本中の基本、火球の制御だ。あの的を狙って、火球を放て。ただし、的の中心を狙うこと。外れたり、威力が強すぎて的を破壊したりしたら失格だ」
制御の訓練か。俺にとっては、最も苦手な分野だ。
「では、火乃丸から始めろ」
「え? 俺からですか?」
「お前が一番、訓練が必要だからな」
紗羅先生は容赦ない。
俺は深呼吸をして、的に向かって手を伸ばした。
落ち着け。冷静に。的の中心を狙うんだ――
「紅蓮弾!」
手のひらから火球が放たれた。
だが――
「あっ!」
火球は巨大化し、的どころか訓練場の壁に激突して爆発した。
「やっぱりな」
紗羅先生はため息をついた。
「お前の問題点は、魔力の出力調整ができていないことだ。感情が高ぶると、魔力が暴走する。まずは、心を落ち着けることから始めろ」
「はい...」
恥ずかしい。みんなの前で失敗してしまった。
「次、炎野」
「おう! 任せとけ!」
陽太が前に出た。彼は自信満々に火球を放つ。
その火球は、的の中心をやや外れたが、見事に命中した。
「よし、合格だ」
「やった!」
陽太はガッツポーズをする。
続いて、紅、咲、燼も挑戦した。
紅は完璧に的の中心を撃ち抜いた。さすが、名門の出身だ。
咲は緊張しながらも、なんとか的に命中させた。
そして燼は――
「......」
無言で火球を放ち、的の中心を正確に貫いた。その制御力は、紅に匹敵する。
「全員合格...と言いたいところだが、火乃丸、お前だけは放課後に補習だ」
「え...マジですか」
「マジだ。お前が一番、訓練が必要なんだからな」
紗羅先生の言葉は厳しいが、的確だ。
俺は、まだまだ未熟なんだ。
だが、諦めない。
絶対に、制御できるようになってやる!
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放課後。
俺は一人、訓練場に残っていた。
「さあ、特訓開始だ」
紗羅先生が、俺の前に立った。
「まず、お前に必要なのは瞑想だ」
「瞑想?」
「そうだ。炎魔法は感情に左右される。だからこそ、心を落ち着けることが重要なんだ」
紗羅先生は、俺に座るように指示した。
「目を閉じろ。そして、自分の魔力の流れを感じるんだ」
俺は言われた通り、目を閉じた。
体の中に、熱い何かが流れているのを感じる。それが、俺の魔力だ。
「その魔力を、ゆっくりと、丁寧にコントロールするんだ。焦るな。急ぐな」
紗羅先生の声が、優しく響く。
俺は集中した。
魔力の流れを感じながら、それを少しずつ、少しずつ調整していく。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
だが、やがて――
「今だ! 目を開けて、火球を放て!」
俺は目を開き、的に向かって手を伸ばした。
「紅蓮弾!」
手のひらから、小さな火球が放たれた。
それは、的に向かって一直線に飛んでいき――
命中した。
的の中心ではないが、確実に的を捉えた。
「やった...!」
「よくやった。まだまだ完璧じゃないが、第一歩だ」
紗羅先生が、俺の肩を叩いた。
「火乃丸、お前には才能がある。だが、才能だけでは通用しない。努力と鍛錬が必要だ。分かったな?」
「はい! ありがとうございます、紗羅先生!」
俺は、心から感謝した。
この先生は、厳しいけど本当に俺のことを思ってくれている。
「さあ、今日はここまでだ。明日も頑張れ」
「はい!」
訓練場を出ると、外はもう暗くなっていた。
だが、俺の心は晴れやかだった。
新しい仲間たち。
厳しくも優しい先生。
そして、少しずつだが確実に成長している自分。
「よし、明日も頑張るぞ!」
俺は拳を握りしめて、寮へと向かった。
この学園での日々は、まだ始まったばかり。
これから、もっともっと強くなってやる!




