第8話 覚めない夢
あの後、眠りについたのは明け方。ウトウトしても、九条くんの言葉が頭をよぎると目が覚めてなかなか眠れなかった。
結局起きたのはお昼。ハッとなって起き上がると、針は12時ちょうどを差していた。
携帯を見ると10時半に1件のメッセージ。
「おはよう!まだ起きてないかな?今日のデートすっごく楽しみにしてる!」
……現実?私は今日、本当に九条くんとクリスマスマーケットに行くの?
昨日の夜のメッセージ「迎えに行く」って何?私、家の住所教えたっけ?
とにかく返信をしないと。
「ごめん、今起きた!私たち本当に今日クリスマスマーケット行くの?」
そんなメッセージを送って30秒で、着信音が鳴り響く。
「………………もしもし?」
「もしもし?藤原さん?ほんとごめん!悪気はなかったんだ。昨日藤原さんが酔ってたことも知ってるし、無理させちゃうよね。ほんと、全部忘れてもらっても……困るんだけど」
「困るんだ」
まさかの電話に慌てる私。まくしたてるように喋る九条くんだが、やっぱりどこか余裕を感じる。
「けど、全然断ってもらって大丈夫だから!」
えー、なんかそれはそれで断りにくい……。
「あ、いや〜、その。どのみち行く予定のマーケットだからいいんだけど?そんなことより、こんなことに付き合ってていいの?」
クリスマス前の日曜日に私と過ごしていいのか?それが正直本音である。
「昨日話した通り彼女もいない、出会いもない、健全にお会いできるよ。藤原さんが行きたいお店には全部行くし、欲しいものがあれば買って、食べたいものを食べる。どう?最高じゃない?」
「うん、まぁ確かに最高だけど……」
「――ということで、14時に迎えに行くね〜」
じゃ!と電話を切る九条くん。
なんだかまんまと乗せられた感が半端ない。
昨日の夢がまだ覚めていないのだろうか?とりあえず昨日の戦利品でも眺めて、1回九条くんのことを忘れよう!そうしよう!
私はスノードームやキャンドルホルダーを机の上に並べ、ニヤニヤとすることで現実逃避をすることにした。
――1時間半後に来る王子様のことを私は忘れたくて。




