最終話 王子様
大晦日の夜。
家族が寝静まる実家で、濃くて甘い怒涛の1ヶ月間が心と頭を埋め尽くした。
あの日、大好きなクリスマスマーケットが舞踏会へと変わった。
私の人生はずっと、その他大勢のひとりなんだと思っていた。
でも目の前に現れた王子様が、私をお姫様にする魔法をかけてくれた。
その人は私のずっと知っていた人。かっこよくて優しい彼はただの同級生でしかなかった。
たまたま10年同じ学校に通っただけの、友達。
そう思っていたのは私だけだった。
私は何もわかっていなかったのだと、彼と過ごしていくうちにわかった。
小さいころから大好きだったクリスマス。その中にあるものはどれも輝いて見えた。
大好きなスノードーム。
小さなガラスの中に詰め込まれた幸せと、祝福の雪。
大きなクリスマスツリーは、憧れと夢のシルエット。
色鮮やかなクリスマスリース。
幸せを迎えるために、ここがクリスマスだと主張している。
小さな箱もクリスマスには特別に変わる。
大きなリボンが夢と希望を包んでいる。
それは私だけの幸せ。ひとりぼっちでも見ることのできる煌めき。
しかし彼現れて、私の世界はひっくり返った。
クリスマスは1人でも楽しい。それは絶対に揺らぐことのない事実。
ただ、誰かと過ごすことがこんなに幸せだなんて知らなかった。
気持ちを共有することがこんなにうれしいことだなんて知らなかった。
愛されるということが、こんなにも泣きたくなるとは思いもしなかった。
私は25歳のクリスマスに、恋という名のプレゼントをもらった。
――私は生まれたクリスマスに、王子様と出会った。
ご愛読ありがとうございました。
今後もしかしたら続編を書くかもしれません。
しかしここで一区切りとさせていただきたいと思います。
中村




