第51話 うたた寝
映画をどこまで観たのかさえ覚えていない。
確か主人公が現実に気がついたところぐらいだったかな。
何だか温かくて心地よい、それでいてうっすら鼻歌が聞こえる。
重かった瞼が開いた時、私は自分の状況が飲み込めなかった。
世界が横向きで、体には毛布がかかっている。
ふわふわしたまま上を向いて、ようやく事態を飲み込んだ。
「ご、ご、ごめんなさい!」
なんと私は、晴くんの膝の上で寝てしまっていた。
びっくりして慌てて飛び起きたものの、立ちくらみなのか頭が一瞬重くなって、目を閉じる。
「いいじゃん、寝てなよ」
笑いながら私の体を引きよせるようにして、再び横に戻す晴くん。
「は、恥ずかしいです……」
もう顔を覆うしかない。この一瞬で自分が寝てしまったことと、膝枕されていたことを理解した。
「いいのいいの。可愛いし、俺が独り占めできてるのを実感できるし」
私の頭を撫でながら、彼はふふっと笑う。
つい心地よくなって、流されそうになる。
とはいえこのままでは……恥ずか死んでしまう。
「もうさ、ずっとこのままでいいんじゃない?」
いやいやダメだよと起き上がった。
「ほんと、ごめんなさい。今起きました」
「まあ俺がトドメを刺しちゃったようなもんだし」
「トドメ?」
「あんまりにも眠そうだからさ、ちゃっかり手を握っちゃった」
そう言えば手が温かかった。
「手を繋いだら恥ずかしいとかさ、なんだかんだ言うかなって思ってたんだけどね。ウトウトしてたのが可愛すぎて、そのまま抱きしめちゃった」
「な……!と、というか今何時?」
「もうすぐ0時ってとこだね」
「そ、そんな時間まで……」
初めてのお泊まり。というか今日付き合ったばっかりなのに、映画を観ながら寝ちゃうなんて。
……やらかしてしまった。
どうしようかと焦っていると、肩をトントンと叩かれた。
「ん?」
横を向くと、そっとキスが降ってくる。
唇を抑えたまま、やっぱり私は固まるしかない。何度されても全然慣れない。
「何かって?寝起きで可愛いからキスしちゃった」
へへって笑いながらお菓子の乗っていたトレーを持って、キッチンへ片付ける晴くん。
ズルい。
晴くんばっかり余裕があって、私は全然慣れなくて、でも何かやり返せる気はしない。
「歯ブラシ置いといたからさ、もう歯を磨いておいで」
大人の余裕で紅茶のカップをさげる晴くん。
私はやっぱり何も言えなくて、洗面所に行くしかなかった。
洗面台の上には歯ブラシの入ったコップがあって、多分私のために用意してくれたんだろうなとわかった。
晴くんは大人なのに、私は子どもずっとみたい。
なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。




