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第50話 映画





 私はいただいた紅茶をすすりながら、晴くんとは反対側の夜景と見つめあっていた。


 


「あのさ、映画でも観る?」



「ん?」



 

 温かい紅茶を飲んだら、急にぼーっとしてきた。晴くんの話もなんだか入ってこない。


 


「姫奈乃さ、映画好きじゃなかったっけ?」


 

「うん?好きだよ」


 

「どれも契約してるから、多分なんでも観れるよ」


 

「えー、何観ようかな。というかさ、まずテレビがなくない?」



 

 今気がついたけど、この家にはテレビがない。


 


「あ、今下ろすね」



「え、どういう意味?」


 

 

 立ち上がった晴くんは天井から、プロジェクターシートを引っ張り出す。



 

「お、お金持ちだ……」



「これはそんなに高くないやつ」



「んー……」




 お金持ちだよと心の中で抗議している間に、晴くんはプロジェクターの電源をつけてくれる。


 

 あれこれ言ったって仕方ないので、渡されたリモコンをカチカチする。


 


「これはどう?」


 

「観たことないな。これにしよう」


 

「結構いい話だよ。感動系コメディで。あ、字幕でもいい?」


 

「全然どっちでもいいよ。あ、てかクッキー食べる?」


 

「クッキー?」


 

「映画を観るときってお菓子食べたくならない?」


 

「なる!」


 

「やっぱり。ちょっと待ってて」



 

 すぐに小さなトレーにクッキーとチョコレートを乗せて戻ってきた。


 ソファーのサイドテーブルに紅茶とトレーを置いて、ソファーをポンポンと叩く。



 

「ほら、一緒に座ろう」



「あ、うん」



 

 映画を観るということは、もちろん隣に座るわけで。椅子とは違ってくっついてしまうかも。


 

 ドキドキを誤魔化すように、思わずクッキーに手を伸ばした。



 

「ん、これおいしい!」



 

 シンプルでとてもおいしいクッキー。


 晴くんはただニコニコしながらこちらを見ていた。


 


 ありがたいことにすぐ始まった映画。そして字幕なので目を逸らせない。


 正直何度も観ているし、DVDも持っているぐらい好きな映画。それでも、晴くんが隣にいると忘れるぐらいに集中して観てしまった。


 


 紅茶が半分になった頃、映画はクライマックスに突入。思わず手を口に当てて眉間にしわを寄せる。


 ……が、意識が遠のいてきた。


 


 今日1日だけで色々あったし、泣いたのもあってだいぶ疲れていたんだと思う。

 

 映画もあと少しで終わりそう、というところで瞼が重くなってきた。


 

 せっかく映画を観てるんだからと、首を回してみたり自分の手を揉んでみたりとした……でも、抗えなかった。


 


 気がつけば手は温もりに包まれていて、目を開けていられなかった。


 聞き取れない英語は心地よい雑音となった。

 

 


 

 

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