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第40話 お風呂



 


 なぜか突然話が終わり、手を引かれてリビングに戻ってきた。



 九条くんは、部屋の隅に置いた私のトートバッグを手に持ったかと思うと、それを私の手に握らせた。


 


「はいどうぞ」



「あ、ありがとう?」



「部屋着かパジャマは持ってきた?」



「え、うん、持ってきたけど……」

 


「けど?」

 


「あんまり可愛くないというか、年季が入ってるというか」



「俺のやつ貸そうか?」



「え、いや、サイズ合わないだろうし」



「ズボンの紐を縛るタイプあるよ。待ってて」



「いや、そういう問題じゃないんだけど……」


 

 

 私の言葉を無視して寝室に戻ってしまった九条くん。

 


 サイズも何も、男の人のを着るなんて恥ずかしい。しかも九条くんが普段着てるやつなんじゃないの?


 


 私の気持ちもむなしく戻ってきた九条くんの手には、グレーのパジャマ。



 高級そうな無地のもの。無理やり渡されたパジャマは、とても肌触りが良かった。


 

 

「はい、じゃあいくよ」




 なぜかずっと手を引かれ、連れまわされている私。


 

 事態がのみこめないまま次にやってきたのは洗面所。



 

「入浴剤は何か入れる?」


 

「えっと、いつも、九条くんは……」


 

「――はーる!」


 

「は、るくんは、何か入れてるの?」



「入れてるよ。じゃあおすすめのバスソルト入れようか。ラベンダーの香りなんだけどどうかな?」



「お、お願いします」



「敬語?」


 

「お、ね、がい」


 


 広い広い洗面所にびくびくしている私をよそに、淡々と入浴剤を入れる九条くん。

 


 洗面所がこんなに広くある必要ある?全然落ち着かないのだけれど。


 九条くんは棚からタオルを2枚出して洗面台に置くと、くるりと振り返りこう続けた。


 

 

「シャンプーとか適当に使って」


 

「ありがとう。でも私、自分のもの持ってきたよ」


 

「うん、適当に使って?」


 

 

 なぜか圧の強い九条くん。ちゃんとそれは用意してきたんだけどな。



 

「おすすめのシャンプーだから使って欲しいな〜」




 白々しく言う九条くんには敵わない。仕方なくわかったというほかなかった。



 

 じゃあと言って、洗面所を出て行った九条くん。



 

 パタンっ。


 


 その音に私も洗面セットを台の上に置いて、借りたパジャマの上に持ってきた下着を出してふーっと息を吐く。


 

 お風呂場に来てしまった。



 少しのドキドキが、先ほどまでの不安を誤魔化してくれる。

 

 でも、完全に消えたわけじゃない。


 

 

 鏡を見れば女の子と目が合う。

 

 うぶで何も知らない、わかっていない女の子。



 

 たいして可愛くもないのに、精一杯オシャレした、けなげ女の子。


 

 もうそろそろ、女の子という歳でもなくなるね。


 この子は私のことをどう思ってるのかな。



 

 まあ考えたって仕方ないよね。


 

 九条くんも待ってることだし、とりあえずお風呂に入ろうか。


 

 そう思い服に手を掛けた時だった。




 ガチャッ




 

「え?」







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