第4話 おひとりさま
――「今彼氏いる?」
想像していなかったその質問に思わず固まってしまった。
私は彼氏がいるか聞かれている?あのモテモテでイケメンな九条くんに?
しかしすぐに我に返った。
「いない、いない。お気楽なおひとりさまですよ」
自分で言っていて悲しくなる。人生で彼氏ができたことなんて一度もない。まあ別に?欲しいとも思っていないけど?
最近周りが結婚し始めているのは事実。
「奇遇だね、俺もだ」
俺もなわけあるかい。九条くんほどの男を誰が放っておくというのか。私とは違うだろうよ。
「へー、意外」
ぶっきらぼうな返事をしたが、これが本音である。
「意外って思ってくれるんだ。ねぇ、口説いてもいい?」
まさかすぎる言葉に吹き出してしまった。口説く?誰が?誰を?
「冗談が過ぎるよ、九条くん」
「本気なんだけど?ねえ、ちょっと飲みに行こうよ」
「それマジで言ってる?」
からかうような口ぶりなのに、目が据わっている。そんな九条くんに思わずドキドキしてしまった。
「おひとりさまなんでしょ?ちょっと付き合ってよ」
いたずらに笑う九条くんの顔に、私は思わず返事をしてしまった。
「いいよ」
――多分、お酒に酔っていたんだと思う。そう思うことにした。
私たちはクリスマスマーケットを後にして、九条くんが調べてくれた居酒屋へ向かう。
いい感じにお酒が回っている私は両手の紙袋をブンブン振って歩く。
「藤原さん」
名前を呼ばれたと思ったら、持っていた紙袋をすべて九条くんに取られてしまった。
「返して?」
「んー、このまま藤原さんが持ってたら、スノードームが割れちゃうかもしれないから、ね?」
確かに私が持っている紙袋の中には、割れ物がたくさん入っている。うかつだった。
「藤原さんの大切なもの、俺に持たせてよ」
眩しい笑顔で惑われそうになる。
きっとすれ違う人はみんな「あー、あの男の人かっこいいのに、隣にいる人が残念だな」って思ってるんだろうな。
私は軽くなった手を見つめ、そんなふうに思った。




