第39話 不安
私たちは2人してベッドの足元に座っている。
私はぶつけた頭をさすりながら、再び体育座りをした足に手を回す。
声をかけられるまで九条くんが来たことに全く気が付かなかった。
それぐらい悩んでいるし、思い詰めている。本当に、純粋に自信を持つことができない。
「なんか暗い顔してるけど……頭をぶつけたからじゃないよね?」
「私、そんな暗い顔してる?」
「してるよ。本当に、心配になるぐらい」
落ち着きを通り越して、勝手に落ち込んでるなんて。
九条くんに余計な手間までかけさせて、ほんと私は何やってるんだろう。
そう思っているけど、鍵を受け取った時から始まったその結末に、どうしても不安でいっぱいになってしまった。自分を隠せないほどに。
「何かあるならさ、教えてよ」
さっきまでイタズラだった少年が、急に優しく私の手を握る。
「……わ、私が、その……彼女でいいのかなって」
「んー、なんでそう思うの?」
薄暗い部屋は、まるで私の気持ちを表しているようだ。
そしてリビングから差し込む小さな光は、九条くんの優しい言葉。
そんなふうに優しくされたら、私の不安が次々に溢れてしまう。
「九条くんにはもっとお似合いの人がいると思うし、なんで私なのかもわからないし……」
「それをこんなにも片思いしてたやつに言うかね。ガラスの靴もないのに、ずっと僕のお姫様を探してたんだけど」
「だからなんで」
「――一目惚れって言ったら信じてくれる?」
一目惚れ?この私に?
「姫奈乃は学生時代に彼氏できなかったでしょ?なんでか知ってる?」
「えっと、私は特に好きな人いなかったし」
「うん、そうかもね。でもさ、姫奈乃を好きな男子はたくさんいたよ」
「そんなの聞いたことないよ?」
「俺が牽制してたからね」
「……ん?」
「姫奈乃に悪い虫がつかないように、勝手に俺のものアピールしてたから」
「あっ……」
「何か思い出した?」
「別れたら教えって、言われたこと……ある」
「誰だよそいつ。でも姫奈乃がその意味をわからなくってよかった」
「でも、そもそも私恋愛に興味なくて」
「うん。それ、ほんと助かった。だから社会人になって知らない間に、彼氏ができてたらどうしようって思ってた」
「私が誰かと付き合うなんて」
「――告白されたこと、ないの?」
告白されたことは、ある。
会社の新人研修で会う同期の男性や、1年目に配属された現場の学校の先生など、何回かだけど。
もちろんすべて断った。
「その顔、あるんだ」
九条くんはやっぱりねと笑う。
「俺じゃ姫奈乃の王子様務まらない?」
「そ、そ、そういうわけじゃ……」
「ならこの話はおしまい。ほらっ、お風呂に行くよ」
「へっ?」
突然会話は強制終了され、私たちは寝室を後にした。




