第38話 かくれんぼ
頭がパンクしてしまった私は、立ち上がることもできずソファーに沈んでいた。
九条くんのお家で、今から私はお風呂に入る。
頭に浮かぶあんなことやこんなこと。邪念を払うように頭をぶんぶんと振って、私は立ち上がった。
そして不安に襲われた。
それはこんなことを思ったから。
九条くんがリビングに戻ってきたらどうしよう……。
どんな顔でいたらいいのだろうか。
九条くんに合わせる顔がわからなくなった私は、プチパニックになった。
そして、そんな私はおかしなアイデアを思いつく。
――そうだ、隠れよう。
なぜそう思ったのかわからないし、隠れるなんておかしいとわかっている。
でも、これ以上ドキドキしたら死んでしまう。
もう隠れずにはいられなかった。
隣にある寝室のドアをそっと開けて、大きなベッドの足元に小さく体育座りをする。
ふーっと息を吐いて深呼吸をしたら、心がちょっと落ち着いてきた。
この家についてからたった1時間。
すでに色々ありすぎるできごとが頭の中に流れ出し、恥ずかしさや嬉しさだけが浮かんだわけじゃない。
九条くんの彼女になったんだと思うと同時に、ネガティブな気持ちも湧いてきた。
私、ちゃんと彼女できるのかな?
そもそも私は九条くんをちゃんと好きなのかな?
好きではある。
でも九条くんにドキドキしてるいるのは、彼の作戦にハマっているだけなのかもしれない
こんなに自信のない私が、あのカッコ良すぎる王子様の彼女が務まるのかな。
学生時代、彼がどんなにモテたかはよく知っている。
私は付き合いが長いというだけで、地元が同じというだけで、一緒に過ごす時間がちょっとだけ他の子よりも長かっただけ。
そうなると典型的な「九条くんに近づかないで」という、嫉妬の言葉を浴びせられたことは1度や2度では済まない。
――似合わない。
幸せなドキドキが落ち着いた私は、そのまま不安なドキドキに気持ちが沈んでいった。
「――み〜つけた!」
「あっ」
ドンっ。
びっくりした私は急に立ち上がった結果、壁に頭を思いっきりぶつけてしまった。
「ど、どうした!?大丈夫?」
慌てた様子で私の頭を両手で包み込む九条くん。
「とりあえず腫れてはなさそうだけど。痛くない?」
「あ、うん。大丈夫」
「よかった。でも大丈夫じゃなさそうな顔してる」
九条くんは「よいしょ」と言いながら私の隣に座った。
2人して体育座りをして並ぶ。
私は九条くんになんて言ったらいいのかわからない。
彼女をやめたいわけじゃない。
会いたくないわけじゃない。
でも、やっぱり自信がない。




