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第33話 告白





 九条くんの笑顔が恐ろしい。




「忘れないでほしいって言ったんだけどな~」



「ごめんなさい。忘れてました」




 頬杖をついたまま、そこからだんまりで私を見つめる九条くん。



 熱い視線に耐え切れず、下を向いたり横を向いたり私なりの小さな抵抗をしてみた。


 もちろんそんなことは何の意味もないようで、視線は私の顔から離れない。

 

 

 

「そ、そ、そんなに……見ないでください」




 仕方がないので九条くんの顔を薄目で見ながら、小さな声で許しを乞うことにした。



 

「敬語?」



「……見ないで」



「やだ」


 

「な!?」



 

 私をからかい終わったのか、九条くんは食べ終わったお皿を持ってキッチンへ行ってしまった。


 

 私も自分の食べたお皿とフォークを持って、急いでキッチンへと向かう。



 

「ありがとう。てきとうに置いといて」



「わかった」



 

 お皿をシンクに置きながらそっと九条くんを見ると、ワインをしまっている。

 

 

 結局私たちはワインを1杯しか飲まなかった。

 

 

 

 気持ちいいほろ酔いでテーブルまで戻ってきた私は、立ったままテーブルのお水へ手を伸ばした。


 


 でも、コップに手が届くより先に、後ろから伸ばした手を引っ張られた。


 


 突然の事態にバランスを崩した私は、そのまま九条くんと向き合うように倒れこむ。


 

 転ぶかもと思った時には九条くんの手が私の腰にあり、支えられる形で抱きついてしまった。


 


「あのさ、まだちゃんと言ってなかったなって」




 開いた口はふさがらないし、心臓はうるさいし、九条くんの甘い匂いが鼻をかすめる。


 


「俺と付き合ってください」



 

 なんで今なのか。どうしてこの体勢なのか。もちろんそんなことまで頭が回るわけもなく、ただクラクラする。


 


「ダメ?」



「……ダメじゃ、ない」



「じゃあ付き合ってくれるの?」



「はい……」




 私が九条くんの彼女……。顔がカーッと熱くなる。




 体がふわっとして、九条くんとの間に少しの隙間ができると同時に聞こえたのはリップ音。




 

 ――チュッ。

 


 


 おでこにわざとらしい音と温もりを感じた後、九条くんは私を見もせずに離れていった。


 


「ワインもういいよね」


 


 左手でおでこを抑えて呆然とする私を置いて、ワイングラスをキッチンへと片付ける九条くん。




 私……キス、されたの?


 おでこだったとはいえ、恥ずかしさとほんの少しのふわふわが込み上げてくる。

 

 


 

 熱すぎる頬を両手で包み、窓際まで歩いてきれいな夜景を眺める。



 


 2時間前は鍵を受け取るかどうか悩んでいたのに。


 その私が、今は九条くんの彼女になった。


 


 お酒で火照っているのか、緊張と興奮で熱いのか、それとも両方か。



 窓に映る私じゃ顔の赤さまではわからないが、多分真っ赤っか。



 

 

 ――目に映る見えない夜景を眺めていたら、私は自分へと近づいてくる影に気がつかなかった。






 


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