表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/56

第29話 開いた扉



 



 

 あまりにも続くドキドキの連続に頭を抱えた私は、とぼとぼと九条くんの後ろを歩くしかなかった。





 今度は意地悪しないで、玄関の鍵を開けてくれた九条くん。

 


 しかし家の中に入ったはいいが、前回来た時とまるで違う状況になかなか足が進まない。

 



「靴、脱がないの?」


 


 微笑みながらひざまづいて、ブーツのチャックに手をかける九条くん。なんでこんなにさらっとイケメンなんだろうか。

 


 なんて思いながらも、その手を思わず目で追えば真剣な眼差しに高まる鼓動。

 

 しかし私は気がついてしまった。




 ――今見上げられたら、スカートの中が見えてしまう。



 そんなしょうもない雑念にとらわれて私は、天井を見上げて何も視界にいれないことにした。

 



「ほら、脱げた」



 

 一方余裕の落ち着きで、リビングのドアを開けて先に行ってしまった九条くん。



 まるで私ばっかりが意識しているみたい。


 熱い頬を冷たい両手で覆い、気持ちを落ち着ける。大丈夫、大丈夫、そう言い聞かせる。



 しかしその間に、ポツンと玄関に置いて行かれてしまった。




 

 覚悟を決めて目をぎゅっとつぶり、静かに長い息を吐く。


 そろりそろりとリビングに入ってみたが、なぜか九条くんがどこにも見当たらない。


 

 不思議に思いながらもダイニングテーブルまで歩いていく。




 ――窓に反射する九条くんに気づくより先に、私は温かいぬくもりに包まれた。



 

 抱きつかれたんだと理解した私の手から、トンと音を立てて落ちるバッグ。


 

 後ろから急に現れた九条くんの抱きしめる力は優しい。でも振り解くことができない絶妙な強さが、九条くんは男の子なんだと主張している。

 



「姫奈乃ちゃん、そのつもりで来てくれたんでしょ?」



 

 ――「そのつもり」という言葉にハッとして、無意識に力が入る体。

 



「今、振り解こうとした?」



 

 低いその声に心が縛られてしまった私は、全力で首を横に振る。


 


「だよね、お姫様はそんなことしないよね」


 


 その言葉に見合わない固い声。そして首に当たる熱い息に、思考放棄したくなる。


「お姫様」と呼ばれていることに気がつかないくらい、私にはもう余裕がなかった。


 

 

 だんまりの私を抱きしめる力が少しずつ強くなって、頭によぎったのは少女漫画のワンシーン。


 

 意外にもごつごつとしたその手が、ゆっくりと私の胸元に移動する。あぁ、大人な関係になってしまうかも……そう思った私は、息をのんだ。

 


 

「お部屋ではコート、脱ごっか?」




 するすると慣れた手つきでボタンが外され、コートを脱がされた。


 しかし私の行き過ぎた想像とは違って、そのまま九条くんは隣の寝室へと消えてった。




 ぽかんとした私は、広い広いリビングに1人残されてしまった。


 




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ