第25話 インターホン
王子様の隣を歩く自信がないから、あと一歩を踏み出しきれない。
それでも時間は止まってくれないわけで……。
【18:29】
あと1分で「着いたよ」なんてメッセージが来るかもしれない。
ドキドキしながら携帯を握っている手は冷たくて、画面に反射する私の瞳は揺れている。
――ピンポーン。
突然のインターホンに、まさかと思いながらも反射的にドアを見る。
手から携帯がすべり落ちたことにも気がつかないまま、玄関へ私の足はゆっくりと進んでいた。
ドアスコープを見もせずに、玄関のドアを開けた。
――案の定そこには、黒いコートの良く似合う王子様が立っていて、何度も見たかっこいい彼はドアに手をかけて笑う。
「答え、聞きにきたんだけど――これはイエスと捉えていいのかな?」
……まさか直接来るとは思わず開けてしまったドア。
イエスと捉えていいのか?
私は自分がおしゃれしたことを思い出して、急に恥ずかしくなった。
反射的にドアを閉めた――が、九条くんに足を挟まれ閉めることができなかった10センチの隙間。
「何で閉めるの?」
びっくりするぐらいのにこやかな低い声に、思わず肩が跳ねる。
「だ、だ、だ、だって……」
「だって?」
「あ、あの、えーっと」
うまい言い訳が見つからずたじろぐ私から目を離してくれないから、一生懸命ぐるぐるする頭を働かせたけど……うまい言葉が見つからない。
「入ってもいい?」
「わ、私の家に!?」
「うん。答え、教えて?」
答え……出さなきゃいけない。
わかっているけど、いろんなことが頭と心の中を駆け巡る。
九条くんは優しい。気もきくし、学生時代から彼といる時間は楽しかった。
でも、それだけで付き合っていいのだろうか?
「釣り合ってない」「九条くんの邪魔」「可愛くないくせに」「付きまとわないで」
学生時代に浴びせられた数々のキツい言葉。
当時はそんな言葉を真に受けることなく「はいはい、わかってますよ」なんて受け流せた。
――でも、今は違う。
学生だった九条くんも、大人になった九条くんも相変わらずかっこいい。だからきっと私の知らない、それこそ会社でだって人気者なんだろうなと思う。
クリスマスマーケットでも感じた痛い視線がその証拠だ。
私は彼の隣に立てるのか?その覚悟があるのか?
好きな人も彼氏がいたこともない恋愛経験ゼロの私。九条くんにはもっと素敵な大人の女性がいるんじゃないか。
――そんな現実から目を逸らしたかった。
25話まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。
イケメンにドアの間に靴を入れて止められたあげく、答えを迫られたいなという作者です。
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