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第24話 タイムリミット


 


 


 ――いつから九条くんは私のことを……。



 


 足取りまでふわふわした私は、家のドアを開けようとして鍵を落としてしまうほどに抜けていた。


 ふーっとため息をつきながらパンプスを脱いで、一応玄関の端に寄せる。


 

 

 バッグを床に投げたら机にぶつかって花瓶が揺れる。慌てて机の上を見た途端に、あぁこれは夢じゃないんだと感じた。



 


 答えを出さなくてはいけない。机の上の鍵を受け取るか、それとも……。

 



 

 時計を見れば、あと30分で九条くんが来てしまう。どうしてこんなにも心が揺れるんだろう。



 



 考えることを放棄したくなったけど、とりあえず準備するだけ。


 一応、念のため……自分にそう言い聞かせて動き出す。


 


 お泊まりの準備をしてから選べばいい。なんて自分の都合のいいように、頭の中が言い訳で埋め尽くされていく。



 


 

 猫柄の白い大きなトートバッグをクローゼットから引っ張り出す。


 でも、男の子とのお泊まりって何を持っていけばいいのだろうか。

 


 

 スキンケア用品、化粧品、充電系、歯ブラシ、……下着とパジャマ。



 


 いつも寝るときは、トレーナーにジャージのパンツを履いてるけどダサいかな?可愛いパジャマなんて急に言われてもないよ。

 


 仕方なく、一番毛玉の少ないものをバッグに入れた。




 

 ナイトブラは黒のレースを――というか今日の私の下着大丈夫かな?


 

 

 可愛いやつに着替え……って私もう行く気満々じゃん。いや、本当に念のため、ね?


 

 一応、一応ね?誰に言い訳しているのかもうわからないが、そう呟きながらピンクのレースがついた下着に着替える。



 

 そうだ。昨日はスーツだったけど、今日は何を着ていけばいいのかな。




 下着姿で鏡の前をうろうろ行ったり来たり。


 

 

 やっぱり男の子はスカートのほうがかわいいって思うのかな。漫画で得た乏しい知識を振り絞って考える。

 


 どうせならかわいいって思われたい。結局、黒いプリーツの膝丈のスカートを選んだ。タイツも薄い方がかわいいかな?




 いつもは80デニールなのに、この寒い12月に似合わない40デニールのタイツを選んでしまった。


 



 

 ――あと15分。もう時間がない。


 

 


 メイクもきちんとお出かけ用に直して、お気に入りのラメの入ったグロスで仕上げる。


 

 香水を振ってパールのピアスをつけたら完成。





 ――あと3分。


 



 鏡に映る私は、準備万端すぎて思わず眉間にしわが寄っているのに口角は上がっている。




 

 めったにつけない甘い匂いが自分からしている。



 そこまでしている私自身を見れば答えまる見えなのに、認めることができない。

 


 

 

 ここまで来ても、あと一歩を踏み出しきれない。




 

 

 ――だって私、王子様の隣を歩けるほどかわいくないんだもん。



 



 


王子様が迎えに来るまであと1話

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