第22話 カウントダウン
ほとんど眠れないまま迎えた朝。机の上に赤い花とネックレス、そして鍵。
――カウントダウンが始まってしまった。
寝ぼけながら、何度目かわからない携帯のアラームを止める。
布団にくるまり顔だけだた私は、画面に映る時計を見てベッドから飛び起きた。
ただですら苦手な朝なのに、眠れなかった私。
顔を適当に洗って、髪はささっと1つに結ぶ。それはそれはもうバッタバタ。
大急ぎでスーツに着替えて、バックに荷物を詰めたら勢いよくドアを開ける。
パンプスでリズミカルに階段を下りれば、カンカンカンカンと気持ちの良い音が鳴る。
いつもは15分かけて歩く道を、小走りで10分。予定より1本遅いバスは混雑していて座れず、ぎゅうぎゅうの車内で吊革につかまった。
息を整えて気が抜けたら、ふざけた雰囲気なのに真剣な声の九条くんの顔が頭に浮かぶ。「受けとって」そう言ったあの顔は本気に見えた。
今日の夜、九条くんが迎えに来る。そう思うと心が浮ついてドキドキする反面、完璧ともいえる九条くんの横に立てるのか……そんな不安も湧いてくる。
そんなふうにウダウダしていたら、降りなきゃいけないバス停に着いても気がつかず、バスが出発する寸前で無理やり降りた。
なんとか勤務時間には間に合ったものの、全然仕事のやる気スイッチが入らない。とはいえ仕事をしないという選択肢はないわけで。
職場の鍵を持っている私が遅刻するわけにもいかず、ゼーゼーとしながらジャージに着替える。電話やらパソコンやら起動させ、窓を開ける頃にやっと呼吸が落ち着いた。
子どもたちの机を拭いて、配布する手紙を準備していれば早番2の先生が出勤してくる。
子どもたちがガヤガヤとやってきて、ようやく仕事モードになった。
連絡帳をチェックして冬休みのイベントをして、休憩中はお昼ご飯を食べながら年明けのイベントの指導案書いて。
午後は子どもたちと校庭で鬼ごっこ。おやつの準備をしたら、下校の子どもたちを見送って……。
あっという間にやってきた退勤時間。
今日は残業もなく予定通りの時間に学校を出た。
出た、出ることができてしまった。
残業を言い訳にはできない。
バス停まで歩きながら、ぐるぐるともう出かけている答えについて考える。
男の人とお付き合いするってどういう感じなんだろう。いざ付き合って幻滅されたりしないのかな。
嬉しさに振り切れない私は、バス停のベンチにカバンを置いて一息つく。
するとすぐにバスが見えた。なんでこういう時に限って、あっという間にバスが来てしまうのだろうか。
――約束の時間まであと1時間。
王子様が迎えに来るまであと3話。




