第2話 クリスマスマーケット
子供の頃からクリスマスが大好きだ。サンタさんやプレゼントはもちろん、街が浮き立ち光溢れる、世間がクリスマス一色に染まった世界が何よりも好きだ。
大人になった今も、クリスマスが1番好きな季節。だからハロウィンが終わる頃には、家中をクリスマス一色にする。
1DKでの1人暮らしには珍しいだろう、180㎝のクリスマスツリー。初めてのボーナスで、私はクリスマスツリー専門店でツリーを買った。当時はまだ実家に住んでいたので、それは6畳の自分の部屋を陣取った。
それが今、私一人のお城にクリスマスグッズがずらりと飾られている。大好きなスノードームは、いったい何個あるかなんて数えきれない。棚という棚に置かれたクリスマスグッズは、どれも気に入っている。
玄関には一目惚れした赤いニットリース。靴箱の上にも、ガラスでできたオーナメントや、クリスマスモチーフの缶を飾っている。
もちろん、クリスマスは1人で満喫するものでしょう?
1人暮らしを始めた去年のクリスマスは、24歳だからと24個のプレゼントを自分で自分に用意した。もちろんプレゼントはすべてラッピングをして、クリスマスツリーの下に並べた。
12月の休日の楽しみと言えば、クリスマスマーケット。クリスマスグッズを買い、ソーセージやプレッツェルを食べ、ココアやワインを飲む。私はこのたった1か月のために働いていると言っても過言ではない。
四大卒業後、私は学校内の学童の先生という仕事を選んだ。基本的には出勤時間が10時で、土日が休み。朝に弱い私はそれだけを理由に就職した。
本日は12月20日の土曜日。いよいよ東京クリスマスマーケットに行く予定だ。オープンの11時から入り浸るために、苦手な早起きを頑張るほど楽しみにしていた。
クリスマスには最高の自分でいたいから、洗顔後はフェイスパックまでしちゃう。いつもは眉毛を整える程度しかしないメイク。今日はキラキラのアイシャドウにほんのりピンクのチーク。仕上げリップで唇をぷるぷるに。
もちろん、クリスマスコフレである。
髪の毛だっていつもは適当に1つ結びにしているが、今日は違う。軽くヘアアイロンで伸ばし、オイルをつけて完璧に。
洋服はこの日のために買った、ニットとプリーツスカートのワンピース。なかなか見つからない緑の服だったので、少し高かったけれど買ってしまった。去年買ったウールの赤いコートに、グレーのマフラー。いつもの黒のショルダーバッグにパールのスタッドピアス。
今年は少し背伸びをして、8㎝ヒールの黒いショートブーツでいざ参戦。
電車に揺られながら、イヤホンでクリスマスソングメドレーを聞いてテンションをさらに上げる。
最寄り駅に着けば、クリスマスマーケットに向かっているだろうカップルが目に入る。
「まあでも?ひとりの方が好きなように周れるけどね」なんて心の中で呟きながら歩くこと5分。
昼間でもわかるクリスマスの空気に、思わず足取りが軽くなる。
さっそくQRチケットを提示して、いざクリスマス!事前予約で購入した限定マグカップを受け取り、スキップで会場内へ。
まずは立ち並ぶ雑貨屋さんを巡る。クリスマスのマルシェって本当に最高。
クリスマスリースはもうあるので眺めるだけだけど「スノードームは何個あってもいいよね」と心の中の天使が叫ぶ。
ぬいぐるみショップやキャンドルホルダー、ハンドクリームなど、いくらお金を使ったかはわからない。が、それでいい。このために働いているのだから。
両手に紙袋を携えて、ホットココアとチュロスを買ってテーブルに着く。
気づけば私は、カップルに囲まれていた。
ちょっとだけもやもやした私は、ぐるぐるソーセージとプレッツェル、ビールを買ってひとりで乾杯。クリスマスの雰囲気を満喫していた。
夕方になってイルミネーションがきれいになってきたと同時に、どんどん冷え込む会場。
私はホットワインのお店に並んだものの、混雑してきたからか20分かかってやっと買えた。
さあさあ空いている席はあるかな~と探していると、屋根のない場所の角が空いたのでそこに座った。
にぎやかで、がやがやとしている会場。ひとりで来ている人はいったいどれくらいだろうか。
ワインを口にすると、その温かさが体に染み渡る。
お酒に気持ちよくなってきた頃男性に声を掛けられた。
だるいな~と思いながら適当にあしらっていると
「――もしかして彼氏できちゃった?」
聞き覚えのある声に驚いて、私は振り返った。




