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第18話 リボン



 




 ――まさか落ち着くために入ったカフェで、これ以上ドキドキするとは思っていなかった。





 

 私たちはコーヒーとケーキを頼んだ。というのもこんなに遅い時間に他の食べ物があるわけなく、残っていたケーキを注文するしかなかったのだ。




 


「誕生日おめでとう」


 

 ケーキを食べ終わりコーヒーをすする私の前に、水色のリボンで飾られた小さな箱が置かれた。





「これ何?」



「プレゼント。ほら、開けてみて」



 

 まさか誰かに誕生日プレゼントをもらう日が来るなんて……想像したこともない事態に、私の指先はコーヒーで温まったはずなのに震えている。



 小さく息を吐いた私は、ゆっくりと箱に手を伸ばた。

 



 震えた手でリボンをほどき、白い箱を開けると、中にはピンクゴールド色のネックレスが入っていた。小さなリボンがついたそのネックレスはシンプルなデザインでありながら上品で、私の好みドンピシャdだ。



 そう思ったけど、急すぎる展開についていけなかった私は、思わずため息をついた。




 「ごめん……好みじゃなかった、かな」




 ちょっと泣きそうにも見える九条くんに私は慌てて弁解をする。




「ち、ちがうの!すごくかわいくて……でも、なんで九条くんがこんなに良くしてくれるのか、わからないから」


 

「ここまで一緒にいてまだわからないの?」


 

「なに、を?」



「……俺の気持ち」




 九条くんの返事に、正直答えが全く想像つかないわけじゃない。でもそんなことありえない、だってあの九条くんだよ?


 それでも本当にちょっぴりだけ、もしかして私を……なんてうぬぼれた妄想が頭にちらつく。




「まあいいよ」




 今度は九条くんが大きなため息をついた。それがあまりに悲しそうな顔だったので、ちょっと心が痛くなった。


 

 

「姫奈乃に似合うと思って選んだんだ。だから……受け取ってもらえないかな?」



「……うん」




 イエス以外の答えが見つからず、うなずくしかなかった。

 



 私の返事に微笑んだ九条くんは、ゆっくりと私の首に手をまわす。びっくりして反射的に目をつぶると、首元に冷たい感覚。



 ネックレスに手を当てると、なぜか涙が出そうになった。




「似合ってるよ」




 寂しげなのに甘ったるいその声に体が熱くなり、思わず上がってしまった口角を隠すように、私は(から)になった箱を握りしめる。






 あの日、クリスマスマーケットで再会した王子様のような人。


 

 

 ただの同級生だったはずなのに、雲の上のような存在だったのに、3年近く会っていなかったのに……


 

 今、目の前に座って私のことを見つめている。





 

 ――私の心のリボンが九条くんにほどかれていく。



 


 

 

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