第11話 スポイル
――「わからせてあげようか?」
右手をグッと掴まれ「謎の地雷を踏んでしまった」ことに気がついた私は、黙るしかなかった。
「今日の藤原さんはお姫様だって言ったでしょ?任せなさいって」
そこから行くお店行くお店すべてで、私が「かわいい」って思ったものを片っ端から九条くんが買ってくれた。いや、有無を言わさず買われたのだけど。
もういっそのこと感情を無にしようとも思ったのだが、私のわずかな視線の動きから察知され、気づけば紙袋の山が手元に。
せめて飲み物だけは!と私はココアを2つ買った。そして向かい合わせにテーブルにつく。
「どう?欲しいもの全部買えた?」
ニコニコと王子様スマイルの九条くん。ご機嫌なのがよくわかる。
「私はお金払ってないんだけど……」
「んー、じゃあ欲しいものは手に入った?」
「……うん。なんでバレちゃうんだろう」
「まあ俺が本気を出せばこれくらい」
イタズラに話す九条くんはとても楽しそうだ。
一方で九条くんは気がついているのだろうか。私たちの周りの女の人の目が、皆ハートになっていることを。そして私への痛い視線を。
「藤原さんさ、このあと俺の家に来ない?」
唐突な斜め上過ぎるの誘いに、私はココアでむせた。九条くんの家に?ありえない。
「何もしないよ。ほら、寒いじゃん?」
「行くわけないじゃん!九条くんのファンに殺されちゃうよ」
「俺にファンなんていないし、おひとりさまだって言ったじゃん」
――そして今、私は九条くんと2人でタクシーに乗っている。
九条くんの訳のわからない自論と、言葉巧みなお誘い攻撃を受けた私は言いくるめられた。
九条くんファンの皆さんごめんなさい。私は逆らえませんでした。なんて心の中で言い訳を並べる。
降りた先に広がるのは高層マンションが立ち並ぶ街。
「あのさ、まさかここに住んでるの?」
「うん。でも一応言っておくと、藤原さんと同じ区内だよ」
最寄駅を聞いてびっくり。本当に同じ区内に住んでいることがわかった。
とはいえ端と端なので、交通の便だけで言えば遠いのだが。それに家賃が全然違う。
まあ同中だし地元が一緒で、お互いその隣の区に住んでいるということを考えれば、同じ区内に住んでいること自体は不思議じゃない。
しかしここから先は未知の世界にだ。
「九条くんってもしかしてお金持ち?」
「んー、どうだろう。まあ藤原さんの王子様にふさわしくなれるように努力してるところかな」
――最後の一言がトドメとなり、私の頭はフリーズしてしまった。




