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第88話 各ギルドは大騒ぎ

【薬師ギルド キルィ町 side】

「商業ギルドのグリーンだが、ギルマスを呼んでくれるか」

「はい、畏まりました。少々お待ちください」

「ご案内いたします」

トントン「商業ギルドのグリーン様をお連れしました」

「入りなさい」

「忙しいのに悪いな、ちょっとトラブルがあってな」

「なんだ、珍しいな」

「あー、スペンサー様なんだが、今日は治癒ギルドで講習をすることになっていて、そこでトラブルが発生したんだ」

「受講する奴らに貴族がいるから、あらかじめ契約書も作成している」

「なんだ、トラブルって」

「最初は順調に講習、実習としていったらしいが、貴族の受講者がスペンサー様の実習を受けている時に胸を触ろうとしたらしいんだ」

「はぁぁ、そんな馬鹿な事をする奴がいるのか」

「そうなんだよ、最初からスペンサー様は貴族に対して嫌悪感というか危機感を持っていて、だから事前にトラブルがあった時の対応を記載して契約書まで作成したんだ」

「相手は、ライアン子爵の息子で、詐欺だとか嵌められたとか、平民女がとか、それは酷い暴言を吐いて、侮辱罪で訴えるとまで言い出してな」

「スペンサー様は、ある魔道具を登録していて、ただ、まだ世間に公表するには危険だと判断して非公開にしている物があるんだ」

「今回はそれを仕方なく使用して、証拠として見せたそうだ」

「なんだよ、その秘密の魔道具って」

「俺には言えないのか」

「そうだな。今は聞かないでくれ」

「とりあえず、分かった」

「それで、スペンサー様は急いで町を出られたよ」

「契約書があるが、子爵家がどうでるかは分からないからな」

「はっ、そんなの何のための契約書だよ」

「まあ、そうなんだが。呼び出されでもしたら、断るのも難しいだろ」

「もちろん、うちからも抗議文は送るが、王都本部にも連絡はしてある」

「恐らくは、本部からも抗議文がいくだろう」

「薬師ギルドでもスペンサー様は登録しているだろ、だから教えておこうと思ってな」

「当り前だ、スペンサー様は上級免許の資格があるんだ。そんな大事な会員を侮辱されてたまるか」

「あー分かったぞ、商業ギルドだけでなくうちも巻き込んでしまえていう魂胆だったな」

「ハハ、当然だ、治癒からも抗議文が行くだろうが多い方が効果あるだろ」

「まあな、分かった。うちからの抗議文と王都本部にも連絡しておく。向こうからも抗議文が出されるだろう」

「上級免許取得者は多くはないからな、大切にしているんだ」

「じゃあ、よろしく頼むな」


【治癒ギルド 王都本部 side】

「商業ギルドのデイビスだが、会長のシャペルさんを呼んで欲しいんだが」

「はい、只今確認して参ります」

トントン「商業ギルド会長のデイビス様をお連れいたしました」

「どうぞ」

「やあ、忙しいところに悪いねぇ」

「珍しいじゃないか、デイビスが訪ねてくるなんて」

「今回は、ちと困ったことになってな」

「なんだ、どうした」

「ああ、おたくの治癒がやらかしてくれてね」

「なに、うちの者がか」

「ああ、そうなんだよ。キルィ町の治癒なんだ」

「『介護補助運動の指導』の本は知っているか。最近登録された本だ。その本はうちの会員が登録したんだ」

「なんでも、患者をリハビリする為の指導書らしい。これだよ」

デイビスはふところから出し、シャペルに見せる。

シャペルも報告は受けているが、内容までは詳しく知らなかった。

「これは、我々が研究してきたものじゃないか」

「それは会員の彼女が登録したんだ。だから、キルィ町の治癒も講習を頼んだのだろう」


「商業ギルドの会員が治癒で講習をすることになって、受講者に貴族がいるのであらかじめトラブルが起きた場合の対応について契約書で決めていたそうなんだが、受講者の貴族が平民出身だからと無体を働いてな」

「かなり酷い暴言も吐いて、しまいには侮辱罪で訴えるとまで言い出したそうなんだ」

「治癒のギルマスたちもその場にいたそうなんだが、油断していたんだろう、その行為は見ていなかったらしい」

「だが、その会員はある魔道具を使ってその行為を証明したんだが、それでも陰謀だとか嵌められたとかで大騒ぎをしたらしい」

「事前にそのようなことが起きるかもと危惧していたのに、監督していなかったのだろう」

「おおかた、講習に夢中になって、そのことを忘れていたんじゃないか」

「まさか、そんなことが」

「それで、その証明した魔道具とはなんだ」

「それは、非公開にしてあるんだよ」

「まだ、公にするには危ないからな」

「そんなに危険なものなのか」

「いや、魔道具自体は危険ではない、悪用するものが現れるということだ」

「それは何か、教えてはもらえないのか」

「まあ、すでにキルィ町の治癒では見ているからな、その連絡もあるだろう」

「いいか、非公開の魔道具なんだから、秘密にして欲しい」

「分かった」

「それは、記録する魔道具だ」

「記録とはなんだ」

「今こうして話しをしているだろ、その様子を記録するんだ。後から再生して見ることも出来る」

「そんな魔道具が作れるのか」

「そうなんだ。だから、悪用されると危険だろ」

「ああ、そうだな。それは使い方によっては、悪用されてしまうだろう」


「それでだ、その会員は相手が貴族だから、契約書をしていても呼び出されたら罰せられるんじゃないかと心配しているんだ」

「それは・・・、分からないな」

「その会員は、そんなに大切なのか」

「ああ、まだ成人したての娘さんだ」

「大金級の商会なんだ」

「この事も非公開なんだからな。若いから色々と心配なんだろう」

「揶揄されたり、強引に勧誘されたり、まあ考えたら色々あるだろ」

「連絡がきているかわからないが、歩行器、車椅子や娼婦病や船乗り病の薬を作ったのも彼女だ」

「白金級にするかも考慮中なんだからな」

「そ、そんなに凄いのか」

「ああ、そうだ。そんな彼女に対して、平民女と侮辱するような貴族をどう思う」

「それに彼女は、薬師の上級免許も取得しているし、1級ランクだ」

「なに!!! 薬師の免許まであるのか」

「今頃は、薬師ギルドも動いているだろうよ。なんせ、自分のところの数少ない上級資格者を侮辱されたのだからな」

「それで、ここまで聞いて治癒はどうする。どう動く、どう責任をとる」

「うちからも、その子爵に抗議文を送る」

「それだけか」

「えっ、それだけではダメか」

「それを決めるのは治癒だ」

「だがな、うちはその寄り親にも抗議文は送る予定だ」

「だってそうだろう。子爵だけならば、そこでもみ消されてしまうじゃないか」

「そうしたら、うちの会員に何するかわかったもんじゃない」

「下位貴族は見栄だけで、根性が悪い奴らが多いからな」

「下手したら、暗殺者だって送られるかもしれない」

「まさか」

「おいおい、今まで散々汚い貴族たちを見てきただろう」

「寄り親に報告するのにも、リスクはある。わざわざ彼女の存在を教えてやるんだからな」

「だから、こうして出向いてきているんだ」

「いくつものギルドが抗議してみろ、それだけで欲しくもなるが、手をだすとどうなるかも考える」

「中級貴族だって馬鹿じゃない。きちんと損得を考えて行動するからな」

「彼女のことは、ギルドが守らないといけない」

「下手をすると、この国をでてしまう」

「それが、どれほどの損失になるか分かるか」

「そうだな、分かった。うちからも抗議文を送るようにしよう」

「それから、キルィ町の治癒の監督不行き届きもどうするか」

「事前に危惧していたのに、きちんと彼女を観察して見守ることをしなかった」

「それによって、彼女は危ない立場に追いやられたんだ」

「なにもしないわけには、いかないんじゃないか」

「まあ、商業ギルドが口出しすることじゃないからな、判断はお前さんに任すさ」

「ああ、もちろん分かっているよ」

「しかし、こんな時にいうのもあれだが、お前のところばかりずるいんじゃないか」

「だって、治癒ギルドで登録すべき物ばかりじゃないか」

「なのに何でだ、キルィ町の商業ギルドばかりで登録している」

「ハハハ、そうだな。きっと、そこのギルマスやサブマスは信用されたんだろうよ」

「信用は大事だ、ここだけの話しだが、本来ならばダーニュ町で登録されるべきなんだ」

「どうやら、彼女はそこの町が拠点みたいだからな」

「だが、そこのギルマス、サブマス、職員は彼女からの信用を無くしたんだ」

「だから、キルィ町に乗り換えた」

「彼女は平民なのかもしれないが、馬鹿じゃない。それどころか、かなり優秀だ。ギルドを乗り換える決断も出来る」

「油断していると、うちだって乗り換えられてしまうかも知れない」

「誠実に対応しないと、見捨てられてしまうんだ」

「こちらが選ぶんじゃないんだ、選ばれる立場なんだよ。わしらはな」

「そうか、選ぶ立場じゃなかったのか」

「そうだ、胡坐をかいていたら、切り捨てられてしまうんだ」

「この歳になっても、まだ勉強することがあるんだな」

「ハハハ、まだまだ頑張らないとな」

「じゃあな、よろしく頼むよ」

「ああ、任せておけ」


【薬師ギルド 王都本部 side】

「ギルマス、スヴァロード領キルィ町のギルドマスターから届いた書簡です」

「珍しいな」

「いや、この前も来てたか」

「それに今回は薄いしな」

ギルマスは軽い気持ちで読んでいくが、だんだんと厳しい顔になってくる。

サブマスのフランクは、これはまずいかもと思い始めていた。

「はぁー、くそっ」

「どうしました」

「治癒ギルドにやられた」

「あの例の商会だよ」

「例の商会の彼女は、いつの間にか上級免許を取得したんだな」

「連絡がきていましたよ」

「そうだったか」

「それで何て書いてあるんですか」

「ああ、なんでも『介護補助運動の指導』とかいう本を出版して、その講習会を治癒でしたらしいんだが、そこで受講者の一人に胸を触られたと」

「相手は、子爵の息子で詐欺だとか、嵌められたとか大騒ぎして侮辱罪で訴えるとほざいたが、証拠をつきつれられて解雇された」

「商会の彼女は、事前にトラブル回避のためにも治癒と契約書を交わしたそうだが、子爵家からの罰を心配しているらしい」

「それに、その契約書には商業ギルドのサブマスも署名しているそうだ」

「子爵家に抗議文を送るが本部でも対応してほしいとさ」

「これは、治癒ギルドも商業ギルドも王都本部が黙っていないだろう」

「どうしてこうも、坊ちゃんたちは馬鹿ばっかりなんだろうな」

「これは大事になりそうだぞ」

「仕方がない、会長に報告してくるか」


トントン「ギルマスのヒューイです」

「入りなさい」

会長のポール・キッシュがいる。

ギルマスが入室し、秘書のビクター・キャロルに書簡を手渡す。

「スヴァロード領キルィ町のギルドマスターから届いた書簡です」

「ほう、今度は何かな」

「いえ、あまりよくない話しです」

「なんだね。それなら読みたくないねぇ」

「会長、ダメですよ」

「分かっているよ。ビクターは堅いんだから」

「なんだね、これは」

「治癒の奴らめ、どういうつもりだ」

「こうしてはいられない」

会長が立ち上がり出かけようとするので、秘書のビクターが慌てて止める。

「会長、どうされました」

「例の商会の子が治癒の連中に酷いめにあわされたんだ」

「文句の一言でも言ってやらないと」

「だから、どのような内容だったのですか」

「ああ、治癒の依頼で講習会を受けたら、貴族の息子に辱められたそうだ」

「加害者のくせに、訴えると脅して」

「あー、これは子爵家に苦情を入れないと」

「それだけでは、気分が収まらない、あの上は侯爵か伯爵か」

「伯爵だったと思いますが、調べておきます」

「では、治癒に行ってくる」

「私どももご一緒します」

あーあ、大変なことになったなと、会長に責任が移ったのでお気楽なギルマスであった。


【治癒ギルド 王都本部 side】

「薬師ギルドのキッシュだが、会長のシャペルは居るかね」

「はい、おりますが、只今来客中でございます」

「ふーん、それは誰かな」

「商業ギルド会長のデイビス様でございます」

「そうか、それならば同じ話しだと思うから通してくれるか」

「はい、只今確認して参りますので、少々お待ちください」

トントン「薬師ギルドのキッシュ様がお越しですが、お通ししてもよろしいでしょうか」

「え、ああ、構わない。通してくれ」

「なんだ、奴も来たのか」

「ああ、連絡が来たんだろうな」

「はぁ、頭が痛いよ」

トントン「薬師ギルドのキッシュ様をお連れいたしました」

「邪魔するよ」

「もしかして、デイビスも同じ話しなのか」

「ああ、たぶんな。あの商会の件だ」

「私も今連絡をもらった」

「それで、どうしてくれるんだ。治癒としては」

「子爵家と寄り親の両家に抗議文を送る。あとは、我々ギルドが彼女を守ることにした」

「抗議文は分かるが、守るって具体的にはどうするんだ」

「そうだな、本当に見守るしか手はないんだ」

「今回のようにトラブルに巻き込まれたら、抗議するとか常に情報を集めるぐらいしか思いつかない」

「そうか、まあそうだよな。彼女はあまり表に出たくないようだからな、直接何かするわけにもいかないから」

「まあ、何かあれば、情報を共有することにしよう」

「そうすれば、漏れもなく体制が整えられるからな」

「分かった。それで当の治癒はどうするんだ。監督不行き届きだろ」

「それなりの処分は下すさ」

「そんなものだな。あまり厳しくしてもな」


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