第80話 介護関係の商品登録
念話『ジョン、介護用品が出来上がったよ。登録に行こう』
人形ジョン『分かりました。今支度します』
私は、秋用ワンピースにカーディガン、薄手のコートを羽織り、ジョンはスリーピーススーツに着替えてある。
モーニングスーツと迷うが、正式な場所でも高貴な方が集まる場所でもないので、普通のスーツにした。
いつもと違う時間だけれど、受付にサブマスはいるかなぁ。
商業ギルドに入り、受付にいく。
サブマスはいなくて、たまに見かける男性がいた。
「スペンサーと申しますが、グリーンさんはいらっしゃいますか」
「お約束はされていますか」
「いえ、約束はしていないです」
「では、確認して参りますので、少々お待ちください」
念話『断られなくて良かったね』
人形ジョン『そうですね。もう、あの女のような愚か者はいないでしょう』
「いらっしゃいませ、スペンサー様、タンディ様」
「こんにちは、グリーンさん、また、急に参りまして申し訳ございません」
「いえ、スペンサー様でしたら、いつでも大丈夫でございます」
「では、お部屋にご案内いたします」
「あの、申し訳ございませんが、本日は少し広めのお部屋にしていただけますでしょうか」
「??? 広いほうがよろしいですか」
「そうですね」
「では、大部屋にいたしましょう」
「ありがとうございます」
案内された部屋は、10人が座れるテーブルに、スペースが広い大きな部屋だった。
「先日、郵送で申請されました、ポーション制作の器具と石鹸の登録手続きが完了しておりますので、こちらが控えになります」
「ありがとうございます」
「見本の石鹸ですが、使わせていただきました」
「泡立ちもよく、肌の乾燥もなく、とても綺麗になりますし、しっとりとして女性でなくても嬉しくなります」
「そうでございますか。それは良かったです。肌が弱いかたには、別の素材の作り方もございます」
「では、そちらの登録も是非お願いいたします」
「それで、本日はどのようなご用事でしょうか」
「はい、知り合いの知人の娘さんが、梅毒にかかりまして、私の薬を提供しているのです」
「重症だったのですが、ほぼ完治いたしまして、これからはリハビリをするようになりますが、寝たきりの状態ですから、歩く練習も大変になりますでしょう」
「それで、歩行の補助をする器具を制作しました」
「お話しするだけや設計図だけでは、分かりにくいと思いまして、見本品をお持ちいたしました。こちらに出してもよろしいでしょうか」
「はっ、ええ、構いません。こちらにどうぞ」
サブマスに指示された、空きスペースに全て出す。
もちろん、『汚れ防止、破損防止、盗難防止、盗作防止、コピー禁止、手書きの写し禁止、魔法攻撃無効、物理攻撃無効』を付与してある。
アース商会と商標登録を印字したプレートを器具に取り付けた。
もちろん、外れないようにしてある。
「こちらが歩行を補助する器具でございます」
「・・・・・」
唖然としているサブマスが正気に戻るまで待つ。
「これ全部ですか」
「はい、そうでございます」
「ご説明いたします。こちらの商品は腕を置いて、体重を少しだけ器具に預けて歩きます」
「そうすることで、足の力が弱っていても器具の支えにより歩けます」
「下にキャスターという小さな車輪が付いていますので、スムーズに器具と一緒に移動できます」
「この素材は、鉄を加工した合金のスチールというものになります」
「同じ形をしておりますが、こちらは木製で出来ています」
「スチールが手に入らない場合もございますので、木で制作してみました」
「こちらも、スチールと同様の使用となり、安全に歩行が出来ます」
「両脇に支柱がありますので、体重のある方や身体の大きな方でも支えやすいです」
「次の商品も同じようですが、こちらは、支える支柱は前にある一本です」
「同じように使えますが、体重が80kgまでの方がよろしいでしょう」
「次に、こちらは、四脚歩行器となります」
「下にキャスターが無く、ご自身で器具を動かしながら移動します」
「このように、器具を少し前に移動させて一歩進む、移動させて一歩進むを繰り返します」
「または、右側の器具だけを進ませ左足だけ前に進む、左側の器具だけ進ませ右足だけを進ませるという感じで、使います」
「次に、こちらは、かなり歩けるようになった方が使える杖になります」
「杖の下が四点になっていますので、しっかりと支えられます」
「次に、こちらは車椅子になります」
「歩行が難しい方に座っていただき移動できます」
「二種類ございまして、一つは『自走式』といいまして、ご自身で車輪を動かし移動するものです。もう一つは、『介助式』といいまして、介助している方が椅子の後ろから押して移動するタイプです。こちらは、車椅子に乗っている方が移動させることは出来ません」
「器具のほうは以上になります」
「こちらは、甚平型パジャマとなります」
「上着の前部分は紐で縛ります。前が開きますので医療などの診察時には便利かと思います。ズボンタイプなのは、リハビリ時に足元を気にしなくて良いからです」
「最後に、寝たきりの方ですとか身体を動かすことが不自由な方は、関節や筋肉が固まってしまいますので、それの予防や改善方法などを記載した本になります」
「その他にも、ベッドから移動されるときの負担にならない体制ですとか、補助しながら歩くときの注意点などをまとめてございます」
「先ほど、お話ししました、患者様に指導しようと予定しておりましたが、これは医療行為になるのではと思いまして、それをご相談させていただこうと伺いました」
「一気に説明してしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか」
「・・・・・」
また、放心状態か。
しばし待つ。
あ、復活した。
「ああ、いつものことでございますが、あまりのことに放心しておりました」
「これは、ちょっと、ギルマスを呼んで参りますので、少々お待ちください」
「サブマス、大丈夫かね」
人形ジョン『ふふ、いつもの事ですよ』
トントン「ギルマスを連れて参りました」
「こんにちは、スペン・・・」
あ、ギルマスも放心している。
長いな。
あ、復活した。
「ああ、失礼いたしました。こんにちは、スペンサー様、タンディ様」
「本日はまた、何やら凄い物がありますな」
「はい、こちらは歩くことが困難な方が補助として使う器具となります」
「エルフマンさんも試してみますか」
「ああ、そうだね」
「こちらに腕を乗せて少しだけ体重を乗せ歩いていきます」
「おー、凄いな、これだけで歩くのが楽になった」
「そうなんです。足の力が弱くても、これならば一人で歩けるのです」
「ただ、これは室内用になっていますので、外で使われるのでしたら、車輪を大きくしなければなりません」
「それと、ご相談があります」
ギルマスも席につく。
「グリーンさんには説明いたしましたが、寝たきりの方ですとか身体を動かすことが不自由な方は、関節や筋肉が固まってしまいますので、それの予防や改善方法などを記載した本を制作しました」
「その他にも、ベッドから移動されるときの負担にならない体制ですとか、補助しながら歩くときの注意点などをまとめてございます」
「患者様に指導しようと予定しておりましたが、これは医療行為になるのではと思いまして、それをご相談させていただけたらとお伺いいたしました」
「薬師の免許は取得いたしましたが、それはあくまでも薬師ですので、医療行為はどうなのかと心配になりまして」
「ああ、そういえば、上級薬師の免許を取られたのですよね」
「はい、そうでございます」
個人情報保護法は無いのか。筒抜けなのか。
「薬師ギルドのギルマスを呼ぶか」
「そうですね。その方がいいでしょう」
「では、声をかけてきます」
サブマスが退出していった。
「しかし、これは凄い事ですよ」
「どうして、こんなに色々なものが作れるのですか」
「いや、失礼しました。今の発言は聞かなかったことにしてください」
「詮索はいけませんでしたな」
「はい、そうしていただけると助かります」
そうこうしているうちに、薬師ギルドのギルマスがやってきた。
トントン「薬師ギルドのギルマスをお連れしました」
「こんにちは、スペンサー様、タンディ様」
「本日はどう・・・」
あれ、これはもうお決まりのバターンかな。
おーい、生きているか。
あ、生きていた。
「こ、こ、こ・・・」
ニワトリか。
「これは何ですかぁー」
「これは歩行を補助する器具です。それよりも別の話しですよ」
「それよりもってなんだお前。これはなんだよ」
「いいから、落ち着け。話しが進まないから」
「スペンサー様が、介護を支援する本を制作された」
「それで、その介護する行為が医療行為になるんじゃないかと心配されているんだ」
「どうなんだ」
「いや、急にそう言われても。介護を支援するってなんだ」
「寝たきりになりますと、手足の関節や筋肉が固まってしまいます」
「それを回復させるための運動ですとか、歩くことが困難な方の補助をする行為などのことです」
「それは、薬師の仕事の範囲ではないですよね」
「そうですな。薬師は薬を作ること、薬を正しく使用することを説明や指導することですからな」
「では、仮にこの介護の指導や行為をした場合はどうなりますか」
「うーん、どうですかな。罰金とかになるかもしれないな」
「では、本を出版するのはどうでしょう」
「本だけならば、問題ないでしょう」
「治癒ギルドに聞いたほうがいいな」
「そうだな。その前にこの介護関係の登録は済ませよう」
「王都の本部にも緊急便で送って」
「手続きが完了してしまえば、治癒ギルドも何も言えまい」
「ああ、そうしよう」
「スペンサー様、手続きしてきますので、少々お待ちください」
「はい、お願いいたします」
「治癒ギルドがあるのですね。初めて知りました」
「そうですな。普通は治癒院があることは知っていても、ギルドがあることは知らない人もいますよ」
「そうなのですね」
「治癒ギルドは、治療方針や治癒方法を研究したり決定したりするところですから、一般の人には関係ありませんからな」
「治癒ギルドは、皆さんお医者様なのですか」
「いや、そんなことはない。医者の仕事を補助して、怪我の手当てをする人は別にいるから」
「医者の補助する資格があれば、さっきの介護も出来るんじゃないか」
「えっ、本当ですか」
「あー、でもそんな簡単には慣れないですよね」
「いや、どうだったかな。講習を受けるんだとは思うが、詳しくは知らないな」
サブマスが戻ってきて。
「王都本部からの承認も取れた」
「今、使いの者を治癒ギルドに行かせている」
「あー、承認されてよかったよ」
「ああ、それで、あれは何なんだ」
「あれは、スペンサー様が開発された歩行を補助する器具だ」
「試しに使ってみるか」
「お、いいのか」
「スペンサー様よろしいですか」
「はい、構いません」
サブマスが嬉しそうに薬師ギルドのギルマスに説明している。
そんなに嬉しいものなのかねえ。
廊下のほうから、ドタドタと足音が聞こえてくる。
これは、治癒ギルドの人が来たのかな。
トントン「治癒ギルドマスターをお連れいたしました」
「なんだね。急に呼び出して、こっちは忙しいんだよ」
「って、なんだこれは」
「後で説明するから、椅子に座ってくれ」
「あ、これは失礼しました。まさか、お客様がいらっしゃるとは思いませんでしたので」
「こちらは、スペンサー様とタンディ様です」
「スペンサーと申します。こちらがタンディでございます」
「ご丁寧にありがとうございます。治癒ギルドのギルドマスターをしております、ピアース・パーラと申します」
「それで、私を呼んだのは、スペンサー様とタンディ様が関係しているのか」
「そうだ。あの器具はスペンサー様が開発されたんだ」
「え、そうなのか」
「それよりも、相談があるんだ」
「スペンサー様が介護補助する時の行為をまとめた本を出版された」
「それで、実際患者にその介護補助の行為をした場合、違法になるかということを聞きたい」
「それと、その資格を得るにはどうすればいいかだ」
「これが、その本だ」
治癒ギルドのパーラさんが本を手に取り、読み始める。
パラパラとページをめくりながら、だんだん真剣な顔になってくる。
パタンと本を閉じて。
「これは、スペンサー様が考えたのですか」
「ええ、まあ、そうですね」
本当は違うけれどね。
「あー、もう、なんてことだ」
「長年研究してきたことが、ここに書かれているなんて」
えー、やだぁー、そうなの。
「私たちは、長年、寝たきりの患者が動けなくなっていくのをどうにかして回復させようと手足を動かしたり、身体を動かしたり、無理に歩かせたりもした」
「だが、患者は痛がったり、泣き出したり、酷く抵抗したりと、なかなかいい対策が出来なかった」
「それなのに、こんな簡単に」
「いや、失礼した。簡単ではないな。私たちも凄く苦労しているのだから、同じように大変だったはずだ」
「私たちは、真逆のことをしていたのか」
「もっと、優しくゆっくりと動かさなければいけなかったのだな」
「この関節とか筋肉、筋などを理解できていない」
「あなたは、どうして分かったのですか」
「・・・私も幼い頃は、身体が弱かったものですから」
「そうでしたか、私どもも直接患者に聞き取りもしたんですがね」
「それは分かったから、スペンサー様がこの介護補助の行為をするにはどうすればいい」
「何かの資格はいるんだろう」
「スペンサー様は、上級薬師の免許は取得しているんだ」
「後は、何が必要だ」
「そうなのか。それは凄いな」
「そうだな。医者の補助をする資格を取ればいいんだ」
「6時間の講習を受ければ、資格が取れるぞ」
「スペンサー様は、すでに寝たきりの患者を診ていて、病気が完治するのでリハビリをしようとしていたところなんだ」
「そこで、それは医療行為になるのかもしれないと、こちらに来たんだ」
「あーそうなのか」
「じゃあ、急いでいるんだね」
「ならば、これから私が講習しよう」
「本来は、6時間だが急いで説明するから、4時間で終わる」
「そうすれば、介助する資格が取れるぞ。免状もすぐに発行できる」
「ただし、この本を売ってくれ」
「えっと、それは登録用の見本品なものですから、お売りは出来ないんです」
「後日で宜しければ、お持ち出来るのですが」
「ああ、そうか、これは登録用か」
「ならば、治癒ギルドで登録しよう、それならば私もすぐに読めるからな」
「何言ってるんだよ、それは、商業ギルドで登録済みだ。王都本部で承認も得ているんだ」
「なんだと、これは医療関係の本じゃないか」
「それは本だからな、商業ギルドでも登録出来るんだ」
「チッ、仕方ない。スペンサー様、後日ならば本当に本を売ってくれますか」
「はい、それはもちろんです」
「分かった、それで手を打とう」
「じゃあ、すぐに治癒ギルドに行って講習をしよう。それから治癒ギルドにも登録しなくてはな」
「それでいいか」
「ああ、それで頼むよ」
「じゃあ、すぐに行こう」
「お世話様でした。ありがとうございました」
「あ、スペンサー様、こちらが本日の登録品の控えになります」
「はい、ありがとうございました」
「いつも、急で申し訳ございません」
「いえ、いつでも大丈夫でございます」
治癒ギルドに連れていかれて、講習をみっちり4時間受けた。
ギルドに登録もして、介護資格の免状とギルド会員カードを貰った。
カードにも介護資格の記載がある。
これで、問題は解決できたよ。よかった。よかった。
【商業ギルド キルィ町 side】
治癒ギルドのギルマスとアンたちが退出した後で。
商業ギルドのギルマス、サブマスに薬師ギルドのギルマスの三人での会話。
「なんだか、慌ただしかったな」
「本当にいつも急にいらっしゃるのは構わないが、驚かせ過ぎないか」
「薬師の上級免許を取ったのだって驚きなのにさ」
「そうだろ、でもスペンサー様ならば、その上の資格も取れると思うぞ」
「えっ、そうなのか」
「ああ、そんな感じはする。だが受けないとは思うがな」
「なんでだ」
「だって、本当はスペンサー様は目立ちたくないんだろ」
「それ以上の資格を持ってしまえば、国も管理することになるからな」
「それは嫌がるだろう」
「まあ、そうだな」
「しかし、目立ちたくない割には、凄いものばかり登録してくるよな」
「それは言えてる」
「今回のこれは、実物を王都本部に持っていく必要があるよな」
「ああ、これだけの物だ。持って行かなければ催促がくるか、本部のお偉いさんがこちらに来るだろうよ」
「うわぁ、それは嫌だな」
「ここは、ギルマス一人の犠牲に任せよう」
「なんだよ。偶にはお前が代わりに行ってもいいんだぞ」
「いやですよ。そんなのギルマスほどの給料は貰っていませんし」
「なんだよ。たいして変わらないだろう」
「責任ばかり押し付けやがって」
「でも、鼻が高いんじゃないですか」
「ハハ、まあそうだな」
「本来ならば、ジユジョア領ダーニュ町の商業ギルドが登録するはずなんだからな」
「「ハハ、そうだな」」
「ここだけの話しだが、スペンサー様は、大金級になるんだ」
「えー、そうなの」
「ああ、なんでもギルド長会議が開かれて、店舗がないが特例として功績が認められて飛び級になったそうだ」
「今、仮の免状が送られてきた」
「明日か明後日には、本物の免状とカードが送られてくるはずだ」
「かぁー、凄いな、こんな短期間での出世じゃないか」
「これじゃあ、この新商品を持って行ったらどうなる」
「いや、さすがに現状維持じゃないか」
「あまり、特別すぎると他の会員から苦情がくるだろう」
「それはそうだが、他とは次元が違うだろ」
「そうなんだよなぁ」
「俺たちでも、こんなに驚いているんだ王都本部の騒ぎはもっとじゃないか」
「ハハ、目に浮かぶようだな」
【商業ギルド 王都本部 side】
「大変です、ギルマス、スヴァロード領のキルィ町から緊急の書類が届きました」
「なんだよ、ジャック騒がしいな」
「緊急なんですよ。すぐに返信が欲しいそうです」
「なんだよ。忙しいときに」
「また、例のあの商会ですよ」
「なに!!! また、あの商会か」
「そうなんですよ。だから、急いで確認してください」
「はぁー、まったく」
ギルマスのリッキーは、送られてきた書類を読んでいく。
読んでいくうちに真剣な顔になり、引きつりはじめて頭を抱えだした。
「おかしいだろ、この商会は」
「今度は、歩行補助の器具だと、それもなん種類もだ」
「それから、患者の介護支援とか介護運動などの本も出版するとか」
「それに伴って、治癒ギルドに確認するから、承認だけでも急いで返信してくれとさ」
「どうなっているんだよ」
「とにかく、時間がないから、会長に会ってくる」
「ハハ、頑張って」
「お前はいいよな。いつだって他人事で」
トントン「ギルマスのリッキーです」
「入りなさい」
「なんだね、浮かない顔だね」
「はい、緊急でスヴァロード領キルィ町のギルマスから書類が届きました」
「急ぎで承認して返信が欲しいそうです」
「なんでも、治癒ギルドのギルマスが来る前に承認を得たいそうです」
「なんだね。そんなに急がせて」
「そうですよ。ギルマス。会長はお忙しいのですから、そんな無茶な要求は断りなさい」
「はぁ、そうなんですが、あの商会だったものですから」
「それを早く言いなさい」
ギルマスは慌てて、秘書に書類を渡す。
会長は書類を受け取ると、凄い勢いで読み始める。
「なんてことだ。これはすぐに承認して返信しなさい」
「治癒ギルドに権利を奪われたら大変だ」
「はっ、分かりました」
秘書たちは慌てだし、いくつもの申請書類に承認印を押して、会長のサインを貰いギルマスに渡す。
「いいか、すぐに返信しなさい。治癒ギルドに負けてはなりませんよ」
ギルマスも顔色を悪くしながら、走って戻っていった。
会長も頭を抱えている。
「はあ、これはどうしたものか」
「大金級に上げたばかりですのに」
「また、ギルド長会議を開くようかもしれません」
「一体どのような申請だったのですか」
「介護関係の器具だよ」
「それに本までもある」
「これは、治癒ギルドに知られたら、躍起になるよ」
「この子はどうしたいんだろうね」
「君たちもこの申請書を読んで見なさい」
商業ギルドの人たちが大騒ぎをしているのも知らず、アンたちはシェルターに戻るのであった。
「ジョン、よかったね。治癒ギルドで資格が取れて」
人形ジョン『そうですね。これでアンが罰せられることがなくなってホッとしています』
「地球だと厳しい罰があって、たぶん裁判になって、執行猶予がつくんじゃないかな」
「これが家族なら、問題はないんだろうけれど、赤の他人だからね」
「こっちだと、罰金だけかな」
「でも、牢屋とか入れられちゃうのかな」
「それだと、嫌だよね」
人形ジョン『そうですね。アンがそんなことになったら、私も嫌です』
「知らないことや新しいことをするときは注意しようね」
人形ジョン『はい、気をつけましょう』




