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第79話 初めての指名依頼③

モーラさんが回復したら、まずはリハビリをするでしょ。

関節や筋肉が固まっているだろうから、ほぐさなくてはいけない。

それって、下働きのあの子に出来るかな、いや無理だな。

力加減も分からないだろうし、関節の動きも理解できないよね。

私が、手本を見せるようになるか。

今着ているだろうパジャマだと足を動かすのに向いていないはず。

ズボンじゃないと、お互いにやりづらいか。

甚平型のパジャマにしよう。ボタンだと手間がかかるし。


関節の動きが良くなったら、自力で手足の運動をしてもらおう。

ある程度出来るようにならないと、歩行練習までいけないし。

歩行練習には平行棒がいいね。

平行棒ならば、不安定な身体でも、ポールにつかまれば大丈夫だろう。

次は、一人で歩く練習だ。

まだまだ、力が入らず不安定だが、補助具が必要だよね。

松葉杖がいいかな。

いや、あれは足を怪我した人用か。

それに、不安定な身体では支えられないよね。

あー、コロコロするやつがいいか。

なんだっけ、歩行器って名前だったはず。

地球のネットで調べてみよう。

いやぁ、歩行器って、色んな種類があるんだ。

この世界でも作れそうなものを選ばないと。

キャスターが付いて歩いていくタイプと、キャスターなしで自分で動かしながら進むのもあるんだ。

四点杖もいいね。

そうなると、車椅子もあると便利だよなあ。

ついでに、これも作ろう。


「あ、ジョン、おはよう」

人形ジョン『おはよう、アン』

「あのさあ、介護用品を作ろうかと思うんだけれど、どう」

人形ジョン『介護用品ですか』

「そう、モーラさんみたいに寝たきりの人が歩けるようになるための補助道具とか」

「歩くときの補助道具とか」

人形ジョン『そうですね。そのような道具があれば、病気の方にもいいかも知れません』

「じゃあ、色んな種類があるから、調べてみるよ」


いくつか選んでみた。

・前腕支持型歩行器/抵抗器付き(前支柱)

・前腕支持型歩行器/抵抗器付き(両脇支柱)

・四脚歩行器

・四点杖

・車椅子(自走式)

・車椅子(介助式)

・歩行練習平行棒

これだけあれば、十分か。


器具を使うから、取説も必要だな。

器具はきちんと使わないと、怪我をするから、その当たりの注意喚起もしないとね。

使用できる場所や使用できる人も書かないと。

地球みたいに、まったく知識な無い人が使うのだから、細かく手順や説明しないと危ないかもなあ。


あとは、関節運動とかの指示書があるといいね。

これも、何冊か選んで必要な部分だけの本を作ろう。


必要があるか分からないが、甚平式パジャマも申請書を作成しておこう。


さすがに今回の登録は、郵送するわけにはいかないよねぇ。

実物を見せて説明する必要もあるだろうし。

ハハ、サブマスも驚くだろう。その顔が浮かぶよ。


今朝も時間になり、モーラさんの家に行く。

「おはようございます。モーラさん」

「おはようございます。アンさん」

「お加減はいかがですか」

「はい、もうすっかりいいです」

「薬が効いていますね」

「先に、クリーンをかけます」

クリーンと念のため下半身と背中に治癒魔法も掛けておく。

「では、続いて鑑定します」

「鑑定」

内臓も皮膚も大丈夫そうだ。治癒率98%ってところかな。

夕方もしくは明日の朝には、完治しているだろう。

治験に立ち会ったりはしていないので、こうして直に患者の経過を診れるのはよかった。

「ほぼ、完治しています。今晩か明日の朝には完全に完治しているでしょう」

「よかったですね。頑張りましたね」

「でも、まだ動き回ってはいけませんよ」

「関節、骨ですね。それが動かさなかったことで固くなっています」

「それを無理に動かすと、今度は骨を痛めてしまいます」

「筋肉もそうです」

「ですので、初めはゆっくりとほぐしていくようにしましょう」

「身体が楽になったからと、焦ってはダメです」

「病気に掛かった日数だけ、回復にも掛かると思ってください」

「運動の仕方は、また改めて説明しますから」

「モーラさんとあなたにもです」

「介護で疲れてはいませんか」

下働きの子の名前は聞いていなかった。

この場合、聞いてよいのかもわからない、相手から紹介されないので、こちらもあえて聞いたりはしない。

「はい、大丈夫です」

「食事はしていますか」

「・・・」

「モーラさんと同じものを食べています」

「まあ、それでは力がつきませんね」

ここで、持っている食べ物を渡してもいいのだが、それは施しにならないだろうか。

念話『ジョン、この子に食事を分け与えてもいいものか、どうしよう』

人形ジョン『難しいですね。でもこのままでは、この子も倒れてしまいます』

『サンドイッチを一つぐらいなら、いいかもしれません』

『モーラさんにも、一言ことわりを言ったほうがいいですよ』

『そうだね。分かった』


「モーラさん、私の昼食を半分だけ彼女に渡してもいいですか」

「このままだと、彼女も倒れてしまいます」

「・・・」

「お給金は渡してあるよね。それはどうしたの」

「・・・」

「お母さんに渡した」

「そうなんだ。でも自分でもきちんと食事をしないと、働けないよ」

「お母さんに渡すとしても、自分の食事分は残しておかないと」

「いいわね」

「はい、分かりました」


「それでは、今日だけ私の昼食の半分を渡してもいいですか」

「申し訳ありません。お願いします」

「では、こちら半分ですけれど食べてください」

ポケットにしまおうとするので。

「今、ここで食べてください。まだ、今日の仕事はありますでしょ」

怒られると思ったか、取り上げられると思ったかはわからないが、少女は食べ始めた。

「おいしい」

と、小さな声で呟いていた。


少女が食べ終わったので。

「桶とタオルを持ってきてください」

桶にお湯をはり、ヨモギを入れる。

「顔から拭いてくださいね」

「明日は、リハビリの説明をします。無理のない範囲でしますし、軽い運動ですので心配はいりません」

「少しでも痛いようならば、それ以上はしませんので大丈夫です」

「無理に動かすほうが、逆効果で身体を痛めますからね」

「では、安静にしてお休みください。お大事に」


その足でギルドに行く。ジョンは先にシェルターに帰ってもらった。

「おはようございます。レジーナさん。ギルドマスターはいらっしゃいますか」

「おはよう、アンさん」

「ギルマスなら執務室にいるから、案内するよ」


「おはようございます。ギルドマスター」

「ああ、おはよう、アンちゃん」

「今、モーラさんの家に行ってきました。ほぼ完治です」

「今晩か明日の朝には、完全に完治していると思います」

「そうか、それは良かった」

「いやー、正直ここまで薬が効くとは思わなかったよ」

「まあ、そうですよね」

「それで、明日からはリハビリを始めようかと思います」

「横になったままで、関節をほぐしていくことからになります」

「あー、そうなのかい」

「はい、まずは固くなった関節や筋肉をほぐして、それから手足を動かすようにします」

「それが出来るようになってから、歩く練習をします」

「以前のような生活ができるまでは、まだ時間がかかります」

「まあ、そうなんだろうな」

「ええ、モーラさんにも焦ってはダメだと言ってあります」

「ところで、ギルドマスター」

「なんだ」

「下働きの子は、食事をまともに取っていないようなんです」

「お給金はお母さんに渡していると言っていました」

「なにか事情があるのでしょうが、あの子が倒れてしまっては大変ですから、モーラさんにことわって、私の昼食のサンドイッチを半分渡しました」

「ポケットに入れようとするので、その場で食べさせました」

「たぶん、お母さんにでも渡すつもりだったのでしょう」

「そうか、そんなことがね」

「ああいう子たちは、それぞれに事情がある。ただ、食事をきちんと取らないのはダメだな」

「そうですね。でもこちらが手を差し伸べすぎてはいけませんからね」

「ああ、そこが難しいところだ」


「ただいまぁ、ジョン」

人形ジョン『お帰りなさい。アン』

「ギルマスにモーラさんとあの子のことを報告してきたよ」

人形ジョン『そうですか。あの子のことは、私たちが心配してもどうしようもありませんね』

「そうだね。変に関わってはダメだよね」

「同情とかではないけれど、相手もどう感じるかは分からないしね」

「じゃあ、私は介護用品の続きをするね」

人形ジョン『はい、無理はしないでくださいね』

「わかったぁ~」


「さてと、大型歩行器のほうから始めようか」

材質は合金なんだよねぇ。これはどうやって作ろうか。

異世界のネット通販と【ビューview】機能で、自動で選んでもらおうかな。

「この歩行器と同じような物を作って」

「クリエイト」

シーン。

「あれ、出来ない」

この世界じゃ、材料が無いのかな。

でも、スチールだけは出来るはずだよなぁ。

あとは、キャスターとか取手部分のゴムか。

そういえば、対象範囲はどうなっていたっけ。

「この歩行器と同じような物を作って、材料の対象範囲はこの国全土で」

「クリエイト」

「あー、出来たよぉー、よかった」

「これが、対象範囲がこの世界全土だったら、どうしようかと思ったよ」

「そんなんじゃ、申請できないし」

「続いて、木製でも作れるか試してみよう」

「木製でも出来れば、作れる人が増えるだろうからね」

「この歩行器と同じような物を作って、材料の対象範囲はこの国全土で、材料は木製とか植物も含めて」

「クリエイト」

「おー、若干形が違うけれど、いいんじゃない」

動かしてみようか。

思ってた以上に、よく出来ている。

これならば、問題ないね。


この調子で次も作っていこう。


平行棒、歩行器、杖、車椅子も出来た。

あとは、介護支援の本作りだね。

あれ、もしかして、もしかしなくても、これは医療行為になるのでは。

あー、まずいな。

薬師の資格はあっても、これは出来ないよね。

あー、でもこの世界では分からないな。

とりあえず、本を作るだけなら問題ないよね。

介護補助、介護支援についての本を何冊も購入して。

「この世界に合わせた、介護補助、支援、リハビリについて素人でも分かりやすく文字と絵で動作などを解説して」

「クリエイト」

おー、凄い。これなら素人や初心者でも分かるだろう。


あとは、申請書を作成して、設計図も作らないとね。

「これらの設計図を作成。上質の用紙で『原紙』と『アース商会』の文字を透かしのように印字、商標登録マークも入れて」

「クリエイト」

「続けて、上質の用紙で原紙をコピーに変えて『コピー』と『アース商会』の文字を透かしのように印字、商標登録マークも入れて」

「クリエイト」

2冊とも「汚れ防止、破損防止、盗難防止、盗作防止、コピー禁止、手書きの写し禁止」

付与魔法をかける。


「あー、忘れるところだった」

「甚平型のパジャマも申請するんだった」

地球のネット通販で購入して。

異世界の生地を用意して、上着やズボンのタグには、商会名と商標登録を印字

「クリエイト」

これで、申請書とデザイン画を作成してと。

これで、忘れた物はないかな。



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