第77話 初めての指名依頼
「おはよう、ジョン」
人形ジョン『おはよう、アン』
「ねぇ、ジョン。子爵と冒険者ギルドを監視しているけれど、私を探しに来ている様子はないね」
人形ジョン『そうですね。子爵家は今それどころではないのでしょう』
「あー、なんか侯爵に呼び出されているんだよね」
人形ジョン『そのようです』
「じゃあ、ギルドに行っても大丈夫かな」
人形ジョン『深夜か早朝に行ってみますか』
「うん、そうしよう」
夜9時に、冒険者ギルドの様子を伺い、受付にレジーナさんがいてサブマスもいた。
他の冒険者も居ないようなので、ギルド近くで外に出る。
「こんばんは、マックさん、レジーナさん」
「おや、こんばんは、アンさん」
「こんばんは」
「あれから、私を探しに来た人は居ましたか」
「いいや、不思議なくらい誰も来ないよ」
「諦めたのかもよ」
「そうだといいのですが」
「あの件はギルドマスターには、報告されたのですか」
「ああ、一応はしたよ。ただやっぱり被害届は出ていないからね。こちらとしても動きようがないのさ」
「そうですか。まあ仕方ないですね」
「ギルマスが直接話しを聞きたいそうなんだが、どうかな」
「はい、私は構いません」
「じゃあ、今からでもいいかな。丁度ギルマスは今夜いるからさ」
念話『ジョン、ギルマスが説明してほしいって、行ってきていいかな』
人形ジョン『私もご一緒します』
「あの、護衛も同席してもいいですか」
「えっ、ああ、構わないよ」
ジョンがギルドに入ってくる。
「彼は、ジョンです」
「ジョンと申します」
「私は、サブマスをしているジェシーだ。よろしく」
人形ジョン『よろしくお願いします』
レジーナさんにも、ペコリとお辞儀をする。
サブマスの案内で2階のギルマスの執務室に行く。
トントン「アンさんをお連れしました」
「ああ」
ギルマスの部屋に通されたが、山ずみの書類に埋もれていた。
「ああ、悪いな。そこに掛けてくれ」
「なかなか終わらないんだよ。この書類の山が」
「それは、ギルマスがさぼっているからですよ」
とりあえず、勧められたソファーに座る」
ジョンは、私の後ろに立つ。
「今、お茶を入れるからね」
「いえ、お構いなく」
サブマスがお茶を入れてくれる。慣れた手つきだ。いつもやっているのかな。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ギルマスも、もう遅い時間なんですから、アンさんの件を先にしてください」
「あー、分かったよ」
書類から顔を上げ、ジョンがいることに気がついたようだ。
いや、このギルマスだ。最初から分かっていたはずだ。
「悪いね。アンちゃん、そちらの方は連れかい」
「はいそうです。彼はジョンです」
ギルマスは、チラッとジョンを見るが、すぐに私の方を見た。
「デップ子爵では大変な目にあったそうだな。大丈夫だったか」
「はい、相手が混乱している隙に帰ってきましたから」
「そうか、さすがだな」
「子爵家には、娼婦病について説明に行ったので間違いないか」
「そうですね。子爵様には説明してきました」
「悪いが、俺にも同じように説明してくれるか」
「構いませんよ」
子爵に説明した内容をギルマスにもする。
ギルマスは真剣な顔で聞いていた。
説明が終わると、少しの間考えこんでいる。
「アンちゃん、頼みがあるんだが」
「はい、何でしょうか」
「俺の世話になった冒険者の先輩の娘が娼館で働いていてな。どうも娼婦病にかかったようなんだ」
「俺が様子を見に行くわけにはいかないから、アンちゃんに見てきて欲しいんだ」
「ガキの頃から知っている俺が行くのも、あの子からすれば嫌じゃないかと思ってな」
「そうですね。知り合いには見られたくないと思います」
「それで、見た後はどうされるのですか」
「どうとは」
「そこから助けるのか、そのままにするのかです」
「うーん、症状はあまり良くないらしいんだ」
「あの、そのような方はその後どうなるのですか」
「たぶん、隔離されてほぼ放置だろうな」
「面倒見のよい店ならば、下働きの人を付けてくれるかもしれない」
「もしも、回復したら、また働くのですか」
「そうなるだろうな」
「その方は借金があるのですか」
「あー分からないが、たぶん父親の借金があると思うぞ」
「亡くなった場合は、その借金はどうなるのですか」
「まあ、未回収になるんじゃないか」
「もし、状態が悪かった場合、ギルマスが引き取るとしたら、その借金はどうなります」
「そうだなぁ。かなり悪い状態ならば、店のほうも引き取ってくれた方が喜ぶんじゃないか」
「だから、借金はチャラだな」
「店から死人が出るのは、評判に関わるからな」
「もう一度聞きますが、ギルドマスターはその患者さんをどうしたいですか」
「保護したいですか」
「まあ、出来ることならば、そうしたいな」
「もしも、引き取って回復したら、その方は再出発出来ますか」
「そうだな。名前は変える必要があるが、真っ当な仕事につけるだろうよ」
「なんだい。アンちゃん、回りくどい聞き方をしてさ」
私は、ギルマスの顔をジッと見た。
本気で保護したいのかを見極めたかったのかもしれない。
念話『ジョン、ギルマスに薬の話しをしてもいいかな』
人形ジョン『この方なら大丈夫そうです』
「ギルドマスター」
「おう」
「娼婦病の薬はあります」
「正式な病名は、梅毒ですが。最近薬師ギルドで認可がおりました」
「はあ、嘘だろう。あれは治らない病気だぞ」
私は、バッグの中から、薬師ギルドが発行した証明書を見せた。
「こちらは、薬師ギルドが発行した、梅毒の新薬となる証明書です」
「治験が終わり、販売準備に入っています」
ギルマスは、書類をじっくり眺めている。
「どうして、アンちゃんがこれを持っているのか聞いてもいいか」
「私が、薬師ギルドに行って貰ってきたからです」
「アンちゃんは、新薬のことを知っていたのか」
「まあ、そうですね」
「なんでそのことを・・・」
「ギルドマスター、冒険者は詮索されないのでは、無かったですか」
「ああ、そうだったな。ギルマスの俺が破るわけにはいかないな」
「その薬が手に入れば、あの子は助かるのか」
「正直、状態によると思います」
「すごく悪化していて、数日の命とかになれば、いくら認可された薬でも分かりません」
「そりゃそうだな」
「連れ出して回復した場合、借金を踏み倒すことになるな」
「女将と相談するか」
「迷うところだな」
「薬を使用するならば、そこの場所からは移動した方がいいと思いますよ」
「回復した場合、大騒ぎになりかねませんから」
「いずれ、多くの人に知れ渡りますが、今、回復したことが知られたら、薬師ギルドに押しかけるんじゃありませんか」
「薬師の方の安全も心配になりますし」
「そうだな。俺としては、借金を踏み倒すような真似はしたくねえから、女将と交渉するか」
「薬で治療できれば、娼婦も女将も嬉しいことだからな」
「じゃあ、明日女将と話してくるから、明日の晩にもう一度来てくれないか」
「分かりました」
「私が様子を見に行くのはどうしますか」
「女将と話ししてからだが、連れ出してから見てもらおうか」
「その方を連れ出すとしたら昼間ですか」
「いや、人目に付かないようにするから、早朝だと思う」
「それもそうですね。評判に関わりますからね」
「では、明日同じ時間で宜しいですか」
「ああ、頼む」
「ジョン、あれでよかったかな」
人形ジョン『良かったんじゃないですか。ギルマスに恩も売れますし』
「いや、逆だよ。ギルマスにはお世話になったから」
「ジョン、薬の値段って聞いていたっけ」
人形ジョン『販売許可は貰いましたが、聞いていないですね』
「やばいじゃん。ギルマスに売るのに時価ってわけにいかないよね」
「どうしようか」
人形ジョン『また、薬師ギルドに行きますか』
「あーもう、うっかりしていたよ。二度手間になっちゃった」
「仕方ないか、明日行こう」
お嬢様風の支度をする。
最近は、色んな服装をして話し方も変えるので、段々面倒になってきている。今日この頃のアンである。
今日のジョンはスーツ姿なのだ。
いつもの時間に薬師ギルド近くで外に出る。
ギルドの受付で、ギルマスへの面会を依頼する。
すぐに取り次いでもらい、ギルマスの執務室まで案内される。
「こんにちは、ロペスさん。また、急にお邪魔して申し訳ございません」
「いえ、構いませんよ。それで本日はいかがされました」
「はい、知り合いに梅毒の新薬を販売しようと思いまして、販売価格を聞いておりませんでしたので、確認に参りました」
「あーなるほど、そうでしたか」
「銀貨2枚を予定しております」
えっ、高。
「本来は、銀貨3枚以上でも良いのですが、この薬は研究費もありませんし、材料も特別なものがございませんので、この価格となりました」
「そうですか。新薬となると高いのですね」
「それまでの研究費、人件費、材料費に、薬師も慣れないと成功率が下がったりしますので、どうしても高くなってしまうのです」
「それでは、私が販売する時も銀貨2枚で宜しいのですね」
「ええ、その価格で構いません」
「ところで、先日お願いしました器具の登録はされましたでしょうか」
「あ、申し訳ございません。ちょっと忙しかったものですから、まだしておりません」
「なるべく早く申請するようにいたします」
「ですが、あの器具は少量制作用ですが、いいのですか」
「そうですね。たとえば今回のような新薬を作る場合は、大量に作るのではなくて少量から作り始めますので、あの器具は丁度良いのです」
「そうでしたか、分かりました。なるべく早くいたします」
「よろしくお願いいたします」
「薬って高いね。地球ではよほどの特効薬でもない限りこんな値段はしないよ」
人形ジョン『手作りですから』
「そうだった。この世界は手作りなんだよね。地球みたいに工場で大量生産するわけじゃないからね。仕方ないか」
「でも、販売価格が決まって良かった」
「そういえば、薬師のランクに特級があるけれど、あれはどうすれば成れるのかな」
「もしかして、伝説のエリクサーを作るとか」
人形ジョン『そうですね。あり得ますね。アンは特級になりたいのですか』
「そうじゃないけれど、何かなと思っただけ」
人形ジョン『エリクサーは、アンなら作れると思いますよ。材料さえ揃えれば』
「えーそうなんだ。まあ、必要な時に考えるよ」
夜になり、今度は冒険者ギルドに行く。
前回と同じ時間にギルドを訪れる。
受付にはレジーナさんだけがいた。
「こんばんは、レジーナさん。ギルドマスターはいらっしゃいますか」
「こんばんは、アンさん。ギルマスなら執務室にいるよ。案内するね」
レジーナさんに案内され執務室に行く。
「こんばんは、ギルドマスター」
「ああ、こんばんは、アンちゃん」
「女将とは話しがついたよ。最初は疑っていたが、俺が嘘を付く必要がないし日頃の行いが良いから信用してもらえたよ」
「それは良かったです。それでは引き取りに行くんですね」
「借金はどうなりました」
「引き取ってくれるならば、チャラにするってさ」
「それは、回復してもですか」
「ああ、酷い状態から回復しても客の方も嫌がるらしいんだ。だから居ても仕方ないらしい」
「そうですか、それを聞いて安心しました。それでいつ引き取りに行くんですか」
「早い方がいいからな。明日の早朝に行ってくるよ」
「え、ギルドマスターが行くんですか」
「ああ、さすがに引き取るとなると知らない奴が行けば、あの子も不安になるだろう」
「なるほど、そうですね」
「それでお家はあるんですか」
「ああ、だいぶ古いが民家から離れていて丁度いいんだ」
「そんな場所があったのは、良かったですね。それで私も明日行けばいいんですか」
「ああ、アンちゃんには、引っ越し先に来てくれるといいかな」
「そうだなあ。早朝に引き取るが落ち着いてからだと、9時か10時がいいかな」
「それでは、9時に伺います」
「場所を教えていただけますか」
「ああ、紙に書いておいたよ」
「それでな。女将も娼婦病の症状を聞きたいらしいんだ」
「アンちゃんから説明してもらうことは出来ないかな」
「女将としても、娼婦たちが病気にかかるのは困るだろう。だから軽い症状のうちに治したいんだと思うんだ」
「分かりました。いいですよ」
「そうか、ありがとう」
「明後日の午前中はどうだ」
「はい、大丈夫です」
「ギルドに10時でいいか」
「分かりました」
「それじゃあ、指名依頼を出しておくな」
「えっ、今回は指名依頼になるんですか」
「そうだな。アンちゃんも指名依頼の方がいいだろう。その方がポイントにもなるし、支払いもしっかりするから」
「ありがとうございます」
「じゃあ、とりあえず明日はよろしくな」
「はい、お願いします」
「初めての指名依頼だね」
人形ジョン『ええ、ポイントになるなら良かったですね』
「ねえ、前もって様子を見て置いた方がいいかな」
人形ジョン『そうですね。患者の状態も気になりますし、女将さんの人となりも見て置いた方がいいでしょう』
いつもの【ビューview】機能で患者の様子から見る。
四畳半ぐらいの部屋に寝かされている。
下働きの子がお世話しているようだが、それでも環境は悪そう。
起き上がれないが、多少の会話は出来るようだ。
これでも、ましな方なのだろう。
中には、完全に放置している店もあるはず。
患者は重症ではあるが、数日以内に急変することは無さそうだ。
下働きの子との様子を見る限り、二人の関係も良いみたい。
ギルマスにお世話する人のことを聞かなかったが手配はしているのかな。
次は、女将さん。
肝っ玉母さんのような雰囲気の人だな。
業突く張りの婆さんでなくてよかった。
あれこれ従業員に指示を出し世話しなく動いている。
これは、自分が動いてしまうタイプの人だね。
娼婦の人たちとの関係も悪くなさそう。
患者のことも心配しているし、大丈夫そうだ。
「ねえ、ジョン。この世界にも石鹸はあるよね。どんな感じ」
人形ジョン『石鹸はないです。灰を使って洗っています』
「それは、貴族や王族もそうなの」
人形ジョン『王族はオイルを塗り、汚れを落としてから拭きます』
「結構近代的な部分もあるのに、洗浄だけは古いやり方なんだ」
「じゃあ、石鹸は新商品として登録できるね」
人形ジョン『はい、問題ないです』
「今から申請書を書こう。ポーション作りの器具も一緒に申請してと」
石鹸の材料と作り方、乾燥具合などを書く。
材料は、オリーブオイル、ミノタウロスの油脂又はオーガの油脂、灰汁、水。
乾燥・熟成は、2~4週間かな。
翌日、商業ギルドの様子を伺い、郵便物を仕分けしているなかに紛れ込ませた。
念のため、ギルマスとサブマスのみ開封できる設定をして、盗難防止、汚れ防止、破損防止を付与した。
石鹸のサンプル品も付けて、使ってくれるようにメモも添付する。
8時30分には、私もジョンも支度を終えて、患者の様子を伺っている。
下働きの子も一緒にいるようだが、今日だけなのかしばらく居てくれるのかは分からない。
白衣、三角巾、手袋、マスク、桶、タオルを用意した。
患者のそばに行くならば、上になにか羽織らないとね。
8時50分になり、患者のいる家の近くで外にでる。
家まで行くと、外でギルマスが待っていた。
「おはようございます。ギルドマスター」
「おはよう、アンちゃん、ジョン」
「朝から悪いな」
「いえ、大丈夫です」
「それで、患者さんの容態はどうですか」
「まあ、重症のようだが、重湯なら食べられる」
「それならば、少しは安心ですね」
「じゃあ、入ろう」
その前に白衣を着て、三角巾をかぶり、マスク、手袋をする。
ジョンは、三角巾以外は着けている。
「それは、なんだ」
「患者に接する時の装いです」
「そうか」
部屋に入る。
「モーラ、お前の状態を見てくれるひとだよ」
「こんにちは、アンと申します。こちらはジョンです」
「状態を見る前に、クリーンの魔法をかけてもいいですか。身体に負担などは掛かりませんので」
微かに、頷く。
この部屋全体、布団、患者の服、全身、髪の毛、ギルマス、下働きの子も含めて。
「クリーン」
下半身のかぶれやただれと床ずれだけは、治癒魔法をかけてあげる。
そこだけは、別の痛みだからね。
患者も驚いている様子だった。
「身体の状態を診させていただきますね」
「鑑定」
じっくりと全身を診ていく、身体におできができ、内臓や筋肉にも影響がでている。
骨は異常ないようだ。
「まずはギルドマスターに説明しますね」
そう声をかけてから、ギルマスを見て一緒に部屋を出る。
話し声が聞こえないように、家の外に出てきた。
「それでどうだった」
「重症ですが、末期ではないです。骨まではいっていないです」
「それで、どうしますか」
「治療しますか」
「ハッ、今、治療できるのか」
「薬を飲ませれば、快方に向かわれるでしょう」
「薬があるのか。だってまだ制作中だって言っていたよな」
「そうです。薬師ギルドでは制作中です。今あるのは、私が作った薬です」
「ハッ、アンちゃんがか」
「そうです」
「えっ、アンちゃん薬師だったのか」
「はい、薬師の免許はあります。見ますか」
「えっ、ああ、そうだな。確認はしたい」
薬師の上級免許証と一級ランクの薬師カードを見せる。
「はあ~、上級免許に一級だと~」
「ギルドマスター、声が大きいですよ」
「ああ、悪い。アンちゃんが薬師だとは、さすがの俺でも驚いたな」
「ふふ、そうですか。それで、薬は一瓶、銀貨2枚になりますが、どうしますか」
「ああ、もちろん、買うよ。買わせてくれ」
ギルマスがふところから銀貨2枚を出す。
私も薬瓶を出して、銀貨を受け取る。
「では、これから飲ませますね」
「ああ、頼むよ」
部屋に戻り、患者の身体を起こしてあげる。
「これから、薬を飲ませますので、ゆっくり飲んでください。慌てなくても大丈夫ですから」
ジョンが患者の身体を支えて、私がゆっくりと何回にも分け時間をかけて飲ませた。
この薬は、瞬間に完治するのではなくて、時間をかけて治していくのだ。
弱った身体を一瞬で治すのは、身体に負担がかかりすぎるからね。
とはいっても、ある程度は治さないと命の危険もあるので、30%ぐらいは治るようにしてある。
顔色も良くなり、熱も少し下がったようだ、あとは身体のおできも数が減っている。
夜には、もっと良くなっているだろう。
ただ、重症だったので、治るのには一週間はかかるだろう。
毎日、薬は飲まないといけない。
ギルマスが全部払うのか。後で聞いてみよう。
「気分はどうですか」
「はい、さっきより身体が楽です」
「薬を飲んだからと、すぐには治りませんので、一週間は安静にしてください」
「それと、食べられるようでしたら、重湯でもいいので三食食べてください」
「はい、分かりました。ありがとうございました」
「では、長居しても良くありませんので、これで失礼いたします。お大事に」
私とジョンとギルマスは外に出た。
「アンちゃん、ありがとうな。薬が効いたのか、随分楽になったようだ」
「とりあえずは、重症から回復されると思います」
「ただ、あと三日は薬を飲んだ方がいいと思いますが、どうしますか」
「ああ、その分の薬も買うよ」
「下働きの子は、いつまでいるのですか」
「一週間は世話してくれるように頼んである」
「ギルマスが飲ませるのですか」
「俺かあの子だな」
「そうですか。飲ませる時はゆっくりと一口ずつ何回かに分けてください」
「では、三日分の薬です」
三本の瓶を渡し、銀貨6枚を受け取る。
「私は、また診に来たほうがいいですよね。毎日来たほうがいいですか」
「そうだな。俺たちじゃ分からないから、とりあえず、三日は来てくれるか」
「分かりました。都度報告します」
「ああ、助かるよ」
シェルターに帰ってきた。
「なんとか薬も飲めたし、回復出来そうで良かったね」
人形ジョン『そうですね。薬の効果も診られて良かったです』
「そうだよね。実際に患者の様子が診られるのは良い経験だよね」
「そうだ。初めての患者だし、きちんとカルテを作っておこう」
「今日の診断と治療とこれからの診療経過を記録しておかないと」
記載内容は、患者情報(氏名・生年月日・年齢、住所)、負傷名・負傷原因・症状、治療方法、治療日、処方された薬、親族、知人。
誰だかわかるように、顔写真も付けてね。
翌日も同じ時間に、患者の家に行く。
下働きの子だけがいて、ギルマスは朝来たがもう帰ったようだ。
薬もその時に飲ませている。
下働きの子に預けている訳ではないようだ。
まあ、当たり前か。
知らない子だものね。
「おはようございます。気分はいかがですか」
「はい、だいぶ楽になりました」
「また、クリーン魔法をかけますが、いいですか」
「はい、お願いします」
「クリーン」
全身と髪の毛を念入りにかける。
下半身と背中には、クリーンと治癒魔法をかけておく。
『身体の状態を診ますね」
「鑑定」
内臓や皮膚も良くなってきている。
「昨日よりも回復しているようです。このまま薬を飲んでいけば大丈夫でしょう」
「食事はとれましたか」
「はい、朝は重湯を食べました」
「そうですね。しばらくは重湯のほうが胃に負担をかけずに良いと思います」
「ところで、身体は水で拭いているのですか」
「はい、そうです。あの子が拭いてくれます」
「そうですか。でもそれでは寒いでしょう」
「ええ、そうですが。お湯を沸かすのは大変ですから」
「それならば、桶を持ってきましたので、それにお湯を入れますね」
「それと、消毒になるヨモギを乾燥させた物を小袋に入れてありますので、これをお湯にしばらく入れてから拭くといいですよ」
木製の風呂桶を出して、その中にお湯をはる。50℃でいいかな。その中にヨモギを入れる。
「今は少し熱めの温度にしてあります、顔からタオルで拭き始めてくださいね」
新しいタオルも渡しておく。
「このくらいの大きさならば、桶は持てますか」
下働きの子に聞く。
「はい、持てます」
「では、身体を拭き終わったら、お湯はトイレに流すのは危ないので止めてください。庭に捨ててくださいね」
「はい、分かりました」
「では、これで失礼します。お大事に」
「ありがとうございました」




