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第75話 厄介ごと③

「おはよう、ジョン」

人形ジョン『おはよう、アン』

「ねえ、ジョン。今日は、子爵家に行くじゃない、手土産とかは要らないの?」

人形ジョン『そうですね。普通の訪問ならば必要ですが、今回はどうでしょう』

「なんかさぁ。こっちを下にみて、馬鹿にしているじゃない」

「手土産を持って行って、驚かせようよ」

「まさか、中身も見ずに捨てられたりしないよね」

人形ジョン『そうですね。それもいいかも知れません。ただ、本当に捨てられてしまう可能性もあります』

「もし、そうされたら、今後一切のお付き合いは無しにしよう」

「そうだ、【ビューview】機能で、館内を録画しておくように設定しておこう」

「お土産は何がいいかなあ。無難にクッキー缶がいいかな」

「昼間だからワインとかは要らないよね」

人形ジョン『そうですね。クッキーなどは良いと思います。ワインは無しですね』

「分かった。じゃあ地球のネット通販で美味しそうなのを探そう」

個梱包はダメだから、数種類入っているのを選んだ。

包み紙はどうしよう。紙にするか不織布にするか。

「ねえ、ジョン。包み紙は紙と不織布とどちらがいいかな」

人形ジョン『そうですね。初めての訪問ですので紙にしましょう』

「そっか。分かった」

包み紙にして、紙袋も購入しておこう。

缶の裏と包み紙には、販売元『アース商会』とアレルギーの材料と賞味期限を記載したシールを張り付けた。


さて、そろそろ出かける支度をしますか。

クリーム色のドレスにシルバーのパーティーバッグにシルバーの靴。

エメラルドグリーンのアクセサリーセット(録画魔道具)。

髪の毛は、ジョンにハーフアップにしてもらう。

ジョンは、最上級のモーニングコート、白蝶貝のカフスボタン、トップハット、手袋を着用。

時間になったので、レンタル馬車屋さんに行く。

どんな馬車を借りたのかと思えば、これもまた最上級クラスだった。

本来ならば、4頭引き馬車なのだが、街中を移動するだけなので、2頭にしたらしい。

この馬車は何人乗りなのか、広さからすると4人~6人かな。

乗り心地は、ジョンの作った馬車のほうがずっといい。

まあ、当たり前か。地球の知識を取り入れているし、最上級の素材を使っているからね。

近づいてくると憂鬱 な 気分になってくる。

すでにもう帰りたい。


子爵家に到着して、ジョンが門番に手紙を見せている。

門番の人は冒険者が来ると聞いていたらしく、立派な馬車が現れたので驚いているようだ。

ハハハ、これでよくある門番からの蔑むようなバトルはないな。

門番の一人が建物のほうに走って行った。

到着した連絡でもするのかな。

建物の前に着き、ジョンが馬車のドアまで来て、エスコートしてくれる。

馬車からキャリッジステップで降りるがドレスの裾が引っ掛からないか気になってしまう。

こういう時、レースのドレスは良くないよね。

でも、顔には出しませんよ。

馬車は馬丁の人が乗って移動させてくれるようだ。

馬車には結界、盗難防止、破損防止、魔法攻撃無効、物理攻撃無効を付与し。

馬には、バリアと盗難防止、精神安定、魔法攻撃無効、物理攻撃無効を付与してある。


入口には使用人?の人がいて、中に案内してくれるようだ。

中に入ると、真朱の虹色のメンバーが出迎えてくれた。

「・・・・・」

あれ、何も言われないけれど、こちらから話しかけてもいいのかな。

「お呼びにより参りました」

「心ばかりですが、お納めください」

ジョンが紙袋から手土産を出して、使用人に渡す。

紙袋は上着の内ポケットの空間収納にしまう。

「えーっと、アンさんだよね」

「はい、アンでございます」

「なんだか、いつもと違うね」

「はい、デップ子爵閣下のお屋敷にお伺いいたしますので、失礼のないよう支度をして参りました」

「はぁ、そうなんだね」

「ところで、そちらの方は」

「従者のジョンでございます」

「ジョンと申します」

ジョンが軽く礼をする。

「えっと、従者がいるんだね」

「はい、そうでございます」

「立ち話もなんだから、部屋に案内するよ」

真朱の虹色メンバーの後ろについて行く。


玄関に近い部屋に案内される。

貴族のお屋敷では、身分やお客様により案内される部屋が違うらしい。

玄関から近いということは、一番格下の扱いなんだろう。

まあ、ただの平民の冒険者だからね。

別に気にしないよ。この位置ならばすぐに帰れるし。


リーダーのカレンさんに席を勧められて、私だけが座る。

ジョンは、私の後ろに立つ。

従者だから同じソファーには座らないのだ。

真朱の虹色メンバーもカレンさんだけがソファーに座り、他のメンバーは部屋の隅に立っている。

すぐに使用人がお茶を用意してくれた。

味は、まあまあってところだ。

特別に美味しいわけでもない。

格下だしね。

カレンさんがお茶に口をつけてから、私もいただく。

「今日は、わざわざ悪かったね」

「いえ、とんでもございません」

「先日も話したが、梅毒の症状について同じことを父上にも説明してほしい」

「デップ子爵令嬢からは、ご説明されていないのでしょうか」

「・・・いや、私からも話しはしてあるが、私では詳しいことまで分からないからね」

「そうでございますか」

「・・・・・」

話しが続かない。それほどの知り合いでもないしね。

「最近は、冒険者ギルドで絡まれることは無いかい」

「はい、おかげさまで何ごともなく活動させていただいております」

「そうかい、それは良かった」

「どうしても、若い冒険者は無理なことをするからね」

「そうでございますね」

「・・・・・」


30分ほどして、やっと子爵本人の登場だ。

トントン「旦那様をお連れいたしました」

カレンさんの返事がなくとも入ってくる。

私はすぐに立ち上がりソファーの横に移動して、カーテシーをする。

ジョンも右手を胸に当て軽く礼をする。

数秒待ち。

「ああ、楽にして構わないよ」

「私がデップ子爵だ。君がアンかね」

「お初にお目にかかります。アンと申します」

「お呼びにより参りました」

「ああ、呼び出して悪かったね。まあ、掛けてくれ」

「それで、そちらの者は」

「従者のジョンでございます」

「ジョンと申します」

ジョンが軽く礼をする。

カレンさんと同じことを聞くんだ。

まあ、気になるよね。

「・・・そうか」


「ところで、娘から聞いたが君は梅毒に詳しいらしいね」

「いえ、詳しいわけではございません。病名と症状を聞いたことがあるだけでございます」

「患者の方とお会いしたこともございません」

「しかし君は、鼻と耳が取れると聞いてすぐに梅毒だと言ったそうじゃないか」

「はい、梅毒もそのような症状があると聞き及んでおりましたので」

「似ている症状でも異なる病気かも知れません」

「まあ、そういうこともあるだろう」

「ただ、聞いた症状に当てはまる患者がいるのも確かなんだよ」

「君はどうして、その病気に詳しいんだい」

「母から聞いたことがございました」

「そう、母君から聞いたのか」

「母君は薬師だったのか」

「いえ、たぶん違うと思います」

「母君はどうしているのかね」

「亡くなっております」

「そうか、それは悪いことを聞いたね」

「他にも病気のことは聞いているのかな」

「日頃の注意ですとか、夏や冬の季節ごとの注意ぐらいです」

「母君は、なぜ病気のことを君に話したのかな」

「恐らくは命に関わることだからではないでしょうか」

「男性の身体にも発症しますので、結婚する前にはお互いに医者で検診するように言われておりました」

「一般の女性は、旦那様から感染いたしますし」

「子供を成すためにも、お互いの検診は必要でございますから」

「ほう、男性もかね」

「原因は、半分ずつですから」

「なっ、なんたる侮辱」

執事だか家令が怒り出した。

「まあまあ、そのような考えもあるのだな」

当り前じゃないか。子づくりは一人じゃできないんじゃボケ。


「それで、話しは戻すが、梅毒についての症状を改めて聞かせてくれないかい」

「症状としまして、初期は塊ができたり、リンパが貼れたりします。第二段階では赤い斑点が出て膿んだり、発熱、関節痛がおきたりします。その後、身体全身におできのようなものが出ます」

「最終的には、骨、筋肉、内臓に腫瘍ができ、顔にはこぶのようなものができ、死に至ります」

「症状が一番出やすいのが、娼館だと思われます」

「ふむ、やはり同じような症状だな」

「君はこの病気を減らすにはどうしたらいいと思うかね」

まったく、そんなのはお貴族様が考えて対応するべきだろ、なんで私に聞くんだよ。ボケナス。

「そうでございますね。一番簡単なことは清潔にすることでしょうか。それと、ひと月に一度はお医者様の検診を受けることでしょうか」

「そんなことでかね」

「そうでございますね。簡単そうで難しいかと存じます」

「娼館に限れば、都度身体をきれいに洗うのは難しいのではないでしょうか」

「お湯に入り石鹸できれいにするにはお金も掛かります」

「お医者様の検診を受けるのも嫌がるのではないでしょうか」

「それもそうだね」

「では、どうすればいい」

私に聞いてんのか。ゴラァ~!!!。試してんのかこいつ。

だんだん、言葉遣いが悪くなってきた、アンである。

「・・・デップ子爵閣下にお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ああ、構わないよ」

「デップ子爵閣下は、娼館をどのようにされたいのでしょうか。排除されたいのでしょうか、それとも改善をされたいのでしょうか」

「そうだねぇ。正直に言えば排除したいね」

「でも、それは無理なんだよ。一部の人にとっては無くなっては困る場所だからね」

「そうでございましょうね。でしたら改善ということでございますね」

「もう秋ですが、年間計画にその改善案は入ってございますのでしょうか」

「それとも年単位の計画でございますか」

「予算などもございますでしょう」

「いや、予算も計画も無いね。急に湧いた話しだからね」

「私には、この町の娼館の場所ですとか、店舗数も存じませんのでご回答するのは難しいかと存じます」

「だったら、下見に行って来てよ」

「私がでございますか」

「そうだよ」

「・・・それは、お断りさせていただきたく存じます」

「私のお役目ではございません」

「貴様!!! 旦那様に逆らうのか!!! 平民の冒険者の分際で」

今度は家令だかの隣にいた、若そうな男が怒り出した。

「落ち着きなさい。お前は外に出ていなさい」

彼は抵抗するが、部屋から追い出された。

なんだか、面倒くさい。早く帰りたいよ。

「悪かったね。彼はまだ若いから」

そんなんで、客に対する暴言を許すのか。

ああ、平民の冒険者だから、どう扱おうと構わないんだな。

「話しに戻るけれど、私達よりも君の方が違う視点で見られるんじゃないかと思ってね」

「それは、平民の冒険者だからでございますか」

チラッと家令らしき男を見てやる。

「いいや、違うよ。私達では凝り固まった考えが抜けないからね。新鮮な目で見てもらいたいんだよ」

なんかさぁ。もっともらしい事言っちゃっているけれど、要は平民同士だから気がつくだろってことでしょ。

「仮に私が下見に行くとした場合は、どなたが同行されるのでしょうか」

「いや、誰も同行はしない。君が行ってくればいい」

「それは、街中を歩いてくればいいということでしょうか」

「いや、娼婦に話しを聞いてくるんだよ」

「小娘がいきなり話しを聞きに行っても、門前払いされるかと存じます」

「仮に、子爵閣下の使いだとしても受けてはくれないと存じます」

「それならば、真朱の虹色の皆さまが同行される方がいいのではないでしょうか」

「貴様!!! お嬢様をそのような場所に行かせるわけないでしょう。女性なのですよ」

「はぁ、私も同じ女性ですが」

「貴様は平民じゃないか。身分をわきまえろ」

その場がシーンとなる。

そこにお茶を入れた侍女が入ってきた。

冷めたお茶を入れ替えてくれるようだ。

「まあ、気を静めて、お茶でも頂こう」

私のお茶にだけ、毒が入っている。

「結界!!!」

テーブルの上にあるお茶すべてに結界を張った。

「どうしたんだ、いきなり」

「私のお茶にだけ毒が入っています」

「何、そんな訳ないだろう」

「言いがかりも甚だしい」

「では、鑑定できる方を呼んでください」

「そこまで言うのならば、誰か魔法部隊長を呼んでくれ」

「君のお茶だけに毒が入っていると言うんだね」

「そうでございます。念のために全てのお茶を結界で包みました」

「もしも、違っていたら大変なことになるからね」

「私の鑑定に間違いはございません」


玄関が騒がしくなって、息を切らした男性が入ってきた。

「お呼びと聞き、参上いたしました」

「ああ、急がせて悪いね。何も聞かずテーブルの上のお茶すべてを鑑定してくれるかい」

「はぁ、はっ、承知いたしました」

男性は、一つずつ鑑定しているようだ。

「どうだね」

「はい、そちらの女性のお茶にだけ毒が入っております」

「・・・何の毒か分かるかね」

「はい、睡眠薬と媚薬になります」

「なっ、媚薬だと!!!」

「そんな、媚薬だなんて聞いていないよ」

真朱の虹色メンバーのヒラリーがそう囁いた。

「おい、ヒラリー何か知っているのか」

彼女はブルブルと震えて何も答えない。

私は、お茶から毒だけを抽出して、カップの上に留まらせた。

「デップ子爵家では、毒を使用するのでございますか」

「まあ、色々とあるから使用はしている」

「媚薬も使用するのでございますか」

「いや、それは断じてない」

「では、毒を入れた関係者に戻しましょう」

毒の中から、睡眠薬と媚薬とに分け、媚薬だけを三倍にして関係者に戻した。

「何をしたんだ」

「ですから、毒を入れた関係者に戻しただけでございます」

「これで、犯人が分かりますでしょう」

案の定、真朱の虹色メンバーのヒラリーの顔が火照りフーフー言い出した。

三倍にしたんだ、きついだろう。

「ヒラリー、まさかお前がやったのか」

「違う、違う、私じゃない。マイクがちょっと困らすだけだって」

「おい、誰かマイクを呼んで来い」

侍女と従者らしき人が走って出て行った。

「ヒラリーなんでそんなことを」

「カレン様、だってマイクに頼まれたから」

喚き散らす大声が聞こえてきて、従者が二人して抱えてさっきの退場男が連れてこられた。

「マイク、お前がアンのお茶に毒を入れたのか」

「フーフー」

「正直に答えなさい!!!」

「ああ、そうだ。その女が平民の冒険者の分際で旦那様に逆らうからだ」

「なぜ、媚薬を入れた」

「・・・そんなの俺たちで躾けるためだ」

「平民の女は、そうやって分からせればいいんだ」

「お前は、いつもそうしているかの口ぶりだな」

「ああ、そうだ。女は男に従っていればいいんだ」

「なんてことを」

「お前、そんな事をしていたのか」

「父さんだって、いつも言っていたじゃないか。平民の女は力で分からせてやればいいんだって」

「私は、そんな意味で言ったんじゃない」

「そんな、マイク嘘よね。嘘だと言ってよ。私だって平民なんだよ」

「ヒラリーは、違うよ。子爵家に勤めているんだから」

「そこの女とは違うんだ」

「でも、他の平民の女性には乱暴していたんでしょ」

ワァーン、ワァーンと、大声で泣き出した。

こっちが泣きたいよ。

「デップ子爵閣下、これはどうなさるおつもりですか」

「・・・」

「私共は帰らせていただきます」

残りの睡眠薬も関係者に戻してやる。

「いや、待ってくれ」

「いくら、私が平民とはいえ、このような扱いをされる覚えはございません」

ジョンと二人で、呆然とする人たちの間を通り、玄関から出る。

こんな時は、玄関に近い部屋で良かった。

馬丁のところまで行き、馬車に乗り込み子爵家を後にした。

馬車を無事にレンタル馬車に返して、シェルターに戻る。

馬と馬車に掛けた、魔法と付与は解除してある。


シェルターに戻り、ソファーにゴロリとする。

人形ジョン『お疲れだとは思いますが、ドレスから着替えた方がよろしいですよ』

「そうなんだけどさぁ。なんか展開が凄すぎて疲れたよ」

人形ジョン『お手伝いしますので、着替えましょう』

ジョンに促されて、手伝ってもらい着替える。

人形ジョン『ついでに、お風呂にも入りましょう』

もう、疲れ切っていたので、ジョンの思うままに洗ってもらった。

美容関係も勉強しただけあり、洗顔も丁寧に泡を立てて洗ってくれた。

おー確かに、勉強は役に立つな。

ジョンは、『チェンジ』魔法を使い、一瞬で普段着に着替えていた。

あー私もそうすればよかった。


お風呂から上がり、リビングのソファーでジョンの入れたコーヒーを飲んでだらりとしている。

何だったんだろうか。今日一日は。

あの男だって、平民じゃないのか。

子爵家に勤めているだけで、偉いと勘違いしているんだろう。

ハァー、とんだ勘違い野郎だ。

しかし、あの口ぶりだと、今までに被害者が沢山いそうだな。

これは、どうするべきか。

「ねえ、ジョン。あの男どうする」

人形ジョン『どうするとは』

「あの男、犯罪者じゃない。ほおっておいていいのかな」

人形ジョン『念のために調べますか』

「鑑定してみればいいかな」

鑑定してみると、女性は6人被害者がいて、男性も5人は暴行を受けていた。

冒険者もいれば、ただの庶民もいた。

これは、冒険者ギルドに報告すべきか、悩むなぁ。

あの子爵は、どう処分するだろうか。

平民相手だからと注意ぐらいで終わらせるのかな。


「ねえ、ジョン。しばらくの間は、町に行くの止めようか」

人形ジョン『そうですね。たぶんアンを探すでしょう』

「レジーナさんが行かないと心配するかもしれないし、カレンさんたちから違うことを吹き込まれたら嫌だから、話ししておこうかな」

人形ジョン『そうですね。それならば早い方がいいでしょう』

「今の時間だと混むから、深夜か早朝に行こうか」

人形ジョン『そうしましょう』

「子爵家の動きも気になるから、【ビューview】機能で監視も続けておこう」

あれからの動きや私たちに関係する話しは、必ず記録するように設定した。

夜の9時を過ぎると、冒険者ギルドにはほとんど人はいない。

ジョンと私は、普段着に着替えてギルドの近くで外に出る。

ジョンには入口で待っていてもらった。


受付には、レジーナさんと男性が一人いた。

「こんばんは、レジーナさん」

「どうしたんだい、アンさん、こんな時間に」

「実は困ったことが起きまして、ご報告に来ました」

「ここで話せる内容かい」

チラッと男性を見る。

「ああ、彼はサブマスだから大丈夫だよ」

「俺は、サブマスのジェシーだ。よろしく」

「アンと申します。よろしくお願いいたします」

「それで、どうしたんだい」

「デップ子爵様から使者が来て、呼び出されたのはご存じですよね」

「ああ、知っているさ、目の前でやり取りしていたからね」

「それで、今日うかがったんです」

「娼婦病の症状について、説明をさせられて、娼館に下見に行けと言われたんです」

「だから断ったんです」

「そうしたら、使用人の一人が怒り出して、平民の冒険者の分際でと怒鳴りだして」

「部屋からは追い出されましたが、子爵様は諦めなくて」

「誰も付き添いもなく、同じ平民だから私のほうがいいだろうと」

「それならば、冒険者でもある真朱の虹色の皆さまが同行すればと言うと」

「そうすると、今度は家令らしき人が怒り出して」

「お嬢様にそのような場所には行かせられないし、なにより女性であると」

「私も女性ですと答えると、『貴様は平民だし、身分をわきまえろ』と、怒鳴りつけられました」

「なんてことを」

「そこで、お茶が運ばれてきたのですが、私のお茶だけに毒が入れられていました」

「えっ、毒をかい」

「はい、鑑定してみると、睡眠薬と媚薬が入っていました」

「子爵家の魔法部隊長にも確認していただいています」

「だから、毒を抽出して媚薬だけを関係者に戻したんです」

「真朱の虹色メンバーのヒラリーさんに媚薬の症状が出て、マイクという男性には私を困らせるだけだからと聞かされていたようです」

「まあ、媚薬とは聞いていなくても、困らせることには同意していたわけですし、犯人の仲間ですよね」

「それからは、マイクが呼ばれてきまして、暴言を吐いて部屋から退出させられた男性でした」

「動機としては、私が平民の女性冒険者で生意気だからだそうです」

「それから、驚いたことに犯罪行為は以前からしていて、平民女性にはそのようにしていたようです」

「そのマイクは、家令だか執事の息子でした」

「実は、マイクを鑑定したら、女性は6人被害者がいて、男性も5人は暴行されていました」

「なかには、冒険者の方もいて、それは報告した方がいいのか」

「なんてことだろう」

「ごめんなさいよ。アンさん。私が止めなかったばかりに」

「いえ、そんなことはありません。お貴族様相手ですので仕方ありません」

「冒険者にも被害者はいるのか。どうしたものか。一応ギルマスには報告はしておく」

「但し、被害者の名前は聞かないでおく」

「被害届も出ていないし、本人も知られたくないかも知れないしな」

「はい、私もそう思います」

「しかしなぁ。冒険者もなめられたもんだな」

「まあ、貴族なんてどうせ冒険者のことを使い勝手のいい駒ぐらいにしか思っていないだろうからな」

「それで、こんな時間に来たんだ。他にも何かあるのかい」

「ええ、しばらくの間は用心して、冒険者の活動は控えようかと思っています」

「子爵家の使いの人が居ないだろうと、この時間に来ました」

「そうだね。アンさんを探すかも知れないね」

「アンさんは、Dランクだから半年は活動していなくても大丈夫だよ」

「はい、ありがとうございます」

「出来ましたら、誰か尋ねて来られても知らないと返事していただけると助かります」

「ああ、任せておくれ」

「では、よろしくお願いします」

「こんな時間に一人で大丈夫かい。なんならサブマスに送ってもらいな」

「大丈夫です。護衛を連れてきましたから」

「そうかい。それなら安心だ。気をつけるんだよ」

「はい、ありがとうございます」


「ジョン、お待たせ。話しはついたよ」

人形ジョン『それは良かったです。今日はもう帰ったら休みましょう』

「そうだね」

「ねえ、ジョン。今日は添い寝してくれる」

人形ジョン『はい、お任せください』


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