第66話 商業ギルド④
今日は、スヴァロード領のキルィ町にある商業ギルドに行く。
相談と新商品の登録だ。
厄介ごとが続くから、嫌がるかもなあ。
そこは、諦めてもらおう。
この町のギルドが悪いのだから。
「おはよう、ジョン」
人形ジョン『おはよう、アン』
「前回ギルドに着いたのが、11時30分ごろだったけれど、今日はもう少し早く行く?」
「あの時間からだとお昼に掛かっちゃうでしょ」
「なんか、それだと悪いかなと思って」
人形ジョン『そうですね。では、10時ごろから様子を見て、サブマスが受付にきたら出ましょうか』
「うん、そうしよう」
私は、クリーム色のワンピースにジャケット、フード付きコートにした。
録画できるアクセサリーも身に着けた。
ジョンは、いつもの従者服。
もちろん、アクセサリーも身に着けている。
リビングで商業ギルドの様子をテレビ画面で見ている。
10時過ぎたら、サブマスが受付にやってきた。
「すぐに行くのも監視しているみたいだから、少しだけ待つ?」
人形ジョン『そうですね。10時30分に行きましょうか』
「そうしよう。別に時間をきっちりと決めなくてもいいけれどね」
予定通り、10時30分にサブマスが受付にいることを確認してから、近くの路地に出る。
商業ギルドに入り、受付にいるサブマスのところに行く。
サブマスは、『えっ』ていう顔をしていた。
また、来たのかと思ったのかもしれない。
「こんにちは、グリーンさん」
「こんにちは、いらっしゃいませ、スペンサー様、タンディ様」
「今日は、ご相談がございまして、お伺いいたしました」
「さようでございますか。それでは、個室にご案内させていただきます」
「どうぞ、こちらに」
「はい、ありがとうございます」
前回と同じ4人掛けのテーブルとイスに作業台のある部屋だ。
「どうぞ、こちらにおかけください」
「はい、ありがとうございます」
「本日は、どのようなご用事でしょうか」
「はい、新商品の登録とご相談です」
結界魔道具、ミルミキサー魔道具、鮭の木彫り熊、抗菌薬をテーブルに置く。
「これは、またすごい数ですね」
「はい、ご相談に乗って頂けるように頑張りました」
「それは、なんとも、私共でお役に立ちますか」
「はい、では商品の説明をさせていただきます」
「こちらは、結界魔道具になります。結界の範囲が10mでドーム型に張られます」
「馬と荷台一台分を想定しています」
「付与魔法も付けてありますので、それも後でご相談させていただきます」
「次に、これは、ミルミキサーとなります」
「アタッチメントが3種類ありまして、果物や野菜などを入れて自動でカットされます」
「こちらの、小さなアタッチメントは、乾燥した野菜や薬草を入れると、自動で粉まで粉砕されます」
「薬づくりにも役に立ちます」
「これが、新規の鮭を咥えた木彫りの熊になり、こちらが登録済の熊で、ティディベアと名付けています、新規は大人向け商品で、顔を勇ましくして鮭を咥えさせています」
「こちらは、登録済の扱いになるのか、新規商品の扱いになるのか、お聞きしたかったのです」
「最後にこれが、今日の本命です」
「抗菌薬となります。抗菌作用で治る薬です」
「目的は、梅毒という病気治療の為です」
「他の病気でも、風邪やウイルス感染にも使用できます」
「梅毒という病名をご存じですか」
「いえ、恥ずかしながら存じません」
「たぶん、症状をお聞きになられたら思い当たる病気があると思います」
「症状としまして、初期は塊ができたり、リンパが貼れたりします。第二段階では赤い斑点が出て膿んだり、発熱、関節痛がおきたりします。その後、身体全身におできのようなものが出ます」
「最終的には、骨、筋肉、内臓に腫瘍ができ、顔にはこぶのようなものができ、死に至ります」
「症状が一番出やすいのが、娼館だと思われます」
「断定はできていませんが、ダーニュ町でも梅毒と似た症状の患者が出ているそうです」
「こちらの町では、どうでしょうか」
「先ほど聞いた症状であれば、該当する人はいると思われます」
「この薬は、鑑定では治癒率が97%となりましたが、治験をしていませんので、その協力をお願いしたいのです」
「薬師ギルドまたは、薬師の方の協力と治験に協力していただける患者様が必要になると思います」
「いかがでしょうか」
「これは、ギルマスと相談ののちに、ご返事をさせていただきとうございます」
「ミルミキサーと熊の木彫りにつきましては、登録済を確認しましたら、新規登録とさせていただきます」
「結界魔道具につきましては、ギルマス同席の元、お受けいたします」
「ギルマスを呼んでまいりますので、少々お待ちください」
「やっぱり、薬は難しいかな」
人形ジョン『そうですね。商業ギルドが協力しても、薬師ギルドが動いてくれるかわかりませんね』
「頭硬いのかなあ」
人形ジョン『皆、自分の権力を誇示するのが大変なのでしょう』
「お待たせ致しました。ギルマスを連れてまいりました」
「ようこそ、いらっしゃいました。スペンサー様、タンディ様」
「本日もなにやら難しい案件と伺いましたが」
「はい、お手数をお掛け致しますが、ご協力頂きたいと思い伺ったしだいです」
「まずは、すぐに解決できそうな、結界魔道具の話しをしましょう」
「はい、こちらが、結界の範囲が10mでドーム型に張れる魔道具です」
「馬と荷台一台分を想定しております」
「こちらの付与魔法は、魔法攻撃防止倍返し、物理攻撃防止倍返し、盗難防止、犯罪者使用不可、悪人使用不可、使用者登録、自動帰還です」
「悪人使用の定義が難しいと思いまして、ご相談させていただこうかと」
「たとえば、被害者や被害者の関係者が加害者に復讐しようとした場合、どちらが悪人になるのか」
「立場により悪人が変わってしまうからです」
「まあ、付与しなければいいだけの話しにもなりますが」
「犯罪に使われてしまうと、厄介なことになると思うのです」
「あとは、販売するときに、規定を厳しくすればいいのか悩むところなのです」
「いかがでしょうか」
「そうでございますね。正しく使われる分には問題ございませんが、犯罪にもされる使用される可能性があるわけですね」
「やはり、販売するときの規定を難しくすれば、多少は問題ないかと思われます」
「犯罪の有無を気にしていては、商品にできない物ばかりとなってしまいます」
「これは、よく検討してから販売すれば、大丈夫でございます」
「あと、問題なのは、薬のほうでございますね」
「はい、そうでございます」
「鑑定では、治癒率が97%となりますが、治験をしておりませんので、その協力をお願いしたいのです」
「エルフマンさんは、ご説明いたしました症状に心当たりはございますか」
「そうでございますね。一部の人たちからは聞いたことがございます」
「そちらは治癒方法がありますか」
「いいえ、完治しない病気と聞いております」
「そうですか」
「その方たちが治る可能性がある薬です」
「どうにか、認めていただける方法はございますか」
「やはり、薬師ギルドまたは、薬師とは連携できないのでしょうか」
「付き合いが悪いわけでも、仲たがいしているわけでもありません」
「こちらの案件は、一時預かりとさせて頂けないでしょうか」
「そうでございますね。すぐに解決はできないでしょう」
「それでは、後日ご連絡いただけますようお願いいたします」
「どちらにご連絡すれば、宜しいでしょうか。お宿のほうですか」
「宿は決めているわけではございませんので、ダーニュ町の冒険者ギルドに「アン」当てでお願いいたします」
「承知いたしました。アン様宛にご連絡させていただきます」
「では、私はこの案を検討しますので、これで失礼いたします」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「では、残りの申請手続きを」
「木彫りとミルミキサーはすぐにいたします」
「結界魔道具は、それほど時間はかからず申請手続きが完了すると思います」
「少々お待ちください」
「はい、お願いします」
木彫りとミルミキサーは申請が通り、結界は後日となった。
薬の方もすぐには、解決しないので、一旦町に帰ることにした。
「帰ってきたけれど、どのくらいで解決するかなぁ」
人形ジョン『まあ、薬師ギルドや薬師しだいですし、治験してくれる方もいるかどうか、分かりませんからね』
「簡単に話しは進まないか」
「そうなると、面倒になっちゃうよね」
人形ジョン『そうなりますね』
『まあ、しばらく待ちましょう』




