第64話 雑用の日⑤
今日は、外出をやめておこうかな。
奇妙な病気が流行っているなんて聞いたら、怖くて出られないよね。
そうなると家にいて、何をしようか。
販売する商品を追加制作しておくか、新商品を考えるか。
「おはよう、ジョン」
人形ジョン『おはよう、アン』
「昨日、あんな病気の話しを聞いたから、出かけるのをやめようかと思うけれど、どうかな」
人形ジョン『そうですね。心配でしたら家で過ごせばいいのではないですか』
「折角、商業ギルドの件が片付きそうなのにねぇ」
人形ジョン『本部の人が来ているようですから、出ない方がいいかも知れません』
「まあ、冒険者スタイルならば、すれ違っても気がつかれないんじゃない」
「本部の人は、私の顔知らないしね」
人形ジョン『どちらにしても、外出は控えたほうがいいでしょう』
「じゃあ、何しようか」
「在庫の補填と新作づくりが良いかな」
人形ジョン『そうですねぇ。急に追加依頼がきますから、準備しておくのもいいでしょう』
「本の新作は、まだ早いよね」
人形ジョン『そうですね。一か月か二か月おきが良いと思います』
『まあ、神様がどのような要求をされるかまでは分かりませんが』
「そうだねぇ。男性と子供向けは決めてあるから、女性向けだけ考えておくよ」
「あとは、小物だね」
「熊の木彫りで大人向けがあるから、それも用意しておく」
「あとは、ジョンなにかあるかな」
人形ジョン『折角シェルターにいるのですから、ゆっくり過ごされてもいいのですよ』
「でも、この前休んだばかりじゃない」
人形ジョン『それでは、訓練でもしますか』
「訓練かぁ。別にいやじゃないよ。じゃあ、午後から訓練しようか」
「ジョンの都合は大丈夫なの」
人形ジョン『はい、問題ありません』
「午前中は、制作しているね」
人形ジョン『分かりました』
恋愛小説かぁ。がっつりした恋愛物は読んだことがないからなあ。
女性の恋愛は、何歳までのことか。
地球だったら、20代~40代までか。
いや、50代60代でもするか。
でも、異世界では学校を卒業したら、即結婚となるといつ恋愛するんだ。
フィクションだから、そこまで考えなくてもいいのかな。
それに、地球の恋愛物は女性が働いている内容が多いから、この世界とは合わないし。
でも小説の中で女性が働いている様子が描かれれば、価値観も変わって来るかもしれない。
女性は家にいて、男性の言うことを聞いて社交だけするような世界が変われるかも。
それならば、現代の女性進出の恋愛でもいけちゃうかな。
賛否はあるかもなあ。
しかし、表立つことは出来ず、子育ては乳母、社交だけをしなくてはいけないなんて楽しいかな。
社交は戦場だっていうからね。それも怖すぎる。
実は、奥様の方が裏ボスだったりして。
勝手に貴族は子育てをしないっていう先入観はあるかも。
社交や自宅でのパーティに忙しくて、子育てに時間が取れない感じ。
あれ、これって現代社会でも同じかも。
父親も母親も仕事で忙しく、帰宅するもの夜遅くて、子供は一人で夕飯を食べるみたいな。
近未来の話しだと思ってもらえればいいか。
あとは、学生の恋愛かな。
これならば、この世界でも通じるかも。
婚約者がいない人もいるだろうし。
学校生活で結婚相手を見つけるのかもしれないし。
うん、ちょうどいいね。
次は、絵本に出てくるうさぎを毛皮のぬいぐるみにしよう。
サンプルとして、地球産と異世界産の毛皮で試してみる。
地球産だと、ミンク、フォックス、セーブル、ラビットあたりかな。
この世界は分からないから、自動で選んでもらおう。
まずは、見本を買わないと。
あれ、こんな顔だったかなぁ。
しかも、色んな顔がある。
とりあえず、二種類買っておこう。
服も着せるから布も買って。
準備が整ったので制作しますか。
大人の恋愛小説から。
小説は、人気ランキングから上位の作品を選んだ。
自分で一から探すのは大変だからね。
「この世界に合わせた内容に変更して、表紙も挿絵も美しく」
「クリエイト」
大人向けの落ち着いた雰囲気の表紙に仕上がったな。
次は、学生恋愛。
「この世界に合わせた内容に変えて、過激な表現は控えめにして、表紙も美しく挿絵は多めで」
「クリエイト」
若い人向けらしく、表紙の人物も若くてお似合いのカップルだ。
本の内容はあとで確認する。
最後は毛皮のぬいぐるみね。
「地球産と異世界の毛皮で見本通りに作成」
「洋服も作成」
「クリエイト」
毛並みがどうなるか気になったけれど、大丈夫そうだね。
どちらの世界のもいい感じに仕上がった。
あーそうだ。地球のネット通販で綺麗だと思った、刺繍リボンも忘れずに買おう。
これも、色々な刺繍柄があり、ぬいぐるみに着けてもかわいいだろう。
さて、そろそろお昼休憩をしようかな。
念話『ジョン、終わったよ』
人形ジョン『わかりました。今行きます』
「新しい商品が出来上がったよ」
「恋愛小説は、大人向けと若い人向けにしたの」
「こっちはね、絵本にでてくる、うさぎのぬいぐるみ」
「毛皮は地球産と異世界産の両方で作ってみたの」
人形ジョン『この本も綺麗です』
『ぬいぐるみも前回のとは違いますが、可愛いです』
『絵本と同時に発売すれば、人気がでますね』
「そうでしょう。良い考えだと思う」
人形ジョン『ええ、そうですね』
「お昼休憩するけれど、ジョンはどうする」
人形ジョン『私は、紅茶だけいただきます』
「そう、じゃあ私だけ食べるね」
人形ジョン『お昼休憩したら、お昼寝をしませんか』
「え、でも訓練するんでしょ」
人形ジョン『ええ、ですので一時間だけお昼寝しましょう』
えぇー、決定なの。
「ジョン、お昼寝が気に入ったの」
人形ジョン『はい、アンとお揃いのパジャマを着て一緒に寝るのは楽しいです』
「へぇ~、そうなんだ・・・」
人形ジョン『はい、これが人肌ってことなのでしょう』
「ジョンは、どこかで変な物をみているんじゃない」
人形ジョン『そうでしょうか。でもアンと一緒に寝ると温かいですよ』
「そりゃあ、生きているからね」
「まあ、ジョンがそれでいいなら構わないよ」
「また、私の部屋でいいの」
人形ジョン『はい、それがいいです』
「この前は可愛いパジャマだったから、今日はクール系ね」
二人で衣装チェンジして、パジャマ姿となりお昼寝タイムである。
なんだろうなあ。なんか間違っているような気がするが。
また、ジョンの腕枕で寝るのであった。
きっちり、一時間でジョンに起こされる。
訓練の始まりだ。
ジョンは切り替えが早いな。
人形ジョン『今日は、剣術と体術の訓練としましょう』
「はい、わかりました」
訓練の時のジョンは、教育係に変身するのだ。
いつものような甘さは無い。
少しぐらいあってもいいのだぞ。
始めの頃のような手加減はないのだ。
バリアを張っていても、打たれれば多少は痛いし、油断すると飛ばされてしまう。
やっぱり、男の力は強い。
身体強化してもいいのだが、それでは訓練にならないからしない。
なるべく長い時間打ち合えるようにする。
次は体術訓練。
相手の方が実力があると、なかなか隙を見つけられない。
防戦ばかりとなり、攻撃できない。
手わざ、足わざなども使いながら戦う。
映画で見たような、リズミカルな動きが出来たらすごいだろうな。
頭で考えるよりも先に、身体が動くようになりたいものだ。
人形ジョン『今日は、ここまでにしましょう』
「はい、ありがとうございました」
人形ジョン『久しぶりに、本格的な訓練をして身体を動かしたから疲れたでしょう』
『後で、マッサージをしますよ』
「いいの。ジョンも疲れていない」
人形ジョン『私は、大丈夫です』
『きちんと、筋肉の疲れを取りましょう』
「うん、お願いね」
この日は、ジョンのマッサージを受けながら、心地よい眠りにつくのであった。
あっ、木彫りの新作を作るの忘れた。




